文化祭が終り、競歩大会も終わると3年生は実質上引退する。2年生団員がいない現状から、これからは現1年生の天下である。
競歩大会が終わった翌日、重要な発表があると屋上に集合がかかった。
優斗は、競歩大会後少し風邪気味だったため部活をサボって帰りたかったのだが、重要な話となれば帰るわけにはいかなかった。
優斗が屋上に出ると、既に1年生全員と団長以下3年生が数名集まっていた。
優斗の姿を見るや早速原田団長が口を開いた。
「全員そろったな。これから、今後の新体制を発表する。これは顧問の伊原先生と3年で相談して決めたことだ。仮に不満があったとしても決定事項だから従うように!」
やっぱり、このことかと一年全員が想像したとおりであった。
「それじゃあ、発表するぞ」団長がかしこまると、皆、緊張した面持ちになる。
「まず、新団長は峰山。お前だ」
優斗は横目で峰山の表情を窺った。峰山は、まんざらでもない顔で破顔しないように我慢しているのがわかった。
この結果は、皆が予想していたので若干ざわつきはしたがやっぱりなという反応であった。
「次に、副団長。副は斎木だ。統制部長も兼ねる」
これには、優斗が一番驚いた。他の団員にも動揺が走ったのがわかった。
「いや、私には・・」優斗が口を開こうとすると「つべこべ言うんじゃない。これは決まったことだ」団長の剣幕に圧倒されて優斗はすぐに口を結んだ。
「斎木は特に二学期から積極的にやってきていたのを誰もが認めている。お前が適任だ」
東が露骨に不満な顔をしている。団長は、かまわず続ける。
「旗手は、田村。しっかりやれよ。以上だ」
さすがに団長も東の露骨な不満顔に気づいた。
「太鼓は東がやればいい」付け加えるように団長が言うと、東はそれにも何か言いたそうな顔をする。
小沢、丸田、関田はどの役にも指名されなかったので「平団員」となるが、不満はなさそうだった。むしろ、「斎木、すげえな」と優斗を持ち上げて喜んだ。太鼓は正式な役員名ではないので東も実質「平団員」である。
「私に東野高校音頭をやらせてください」黙っていた小沢が唐突に立候補してきた。
東野高校音頭は、留萌先輩が得意とする演技で文化祭でも人気を博していたのを1年の誰もが体感していた。
「それは、かまわんが、ならば留萌が卒業するまでにきちんとマスターしておけ」
小沢は嬉しそうに「押忍!」と応える。
峰山は笑い、他のメンバーは些かシラケた顔だ。優斗の不安げな表情は変わらない。実際、この体勢でやっていけるのだろうか、果たして新部員の獲得はできるのだろうか、不安でしかない。ましてや、副団長としてこの峰山をサポートしながら部の統率が自分にできるのだろうか。確かに、これまで活動は積極的かつ一生懸命にやってきたつもりであるが、副団長なんかにしてもらわなくてもいい、平でいいんだ。優斗は、一気に憂鬱な気分に陥ってしまった。
「今日から、お前らで自主的に運営して行け。先輩らが培ってきた我が応援団の良き伝統を引き継いで行ってほしい。以上だ」
3年生が解散すると、新体制の下、初めての練習が始まったが、優斗は体調不良を理由に早退した。
優斗が帰った後、残った一年だけでなされた話合いを優斗は知る由もなかった。
さて、本日取り上げるアルバムは、庄野真代の『ルフラン』(1978年)である。
このアルバム、デヴュー・アルバムと思いきや4作目にあたるもののようだ。「飛んでイスタンブール」が大ヒットしたが、これがデヴュー・シングルとばかり思い込んでいたのである。
シンガー・ソング・ライターとして、作詞、作曲もするが、この曲はちあき哲也さんと筒美京平さんのコンビによる作である。
本人作の曲も数曲収められている。どこか、エキゾチックな風貌と都会的なセンスのある楽曲がいい。
宇徳敬子と近藤房之助が歌う「Good-by morning」が大好きであるが、庄野真代の作詞だとは知らなかった。
