6月にもなると体育の授業は「水泳」の時間になる。優斗の高校には25メートルプールがあった。特に、一年生は夏休みに入ると臨海学校が予定されているので、体育教師の指導にも熱が入るらしい。
初めての水泳の日、学校指定の海パンを取りに部室に入ったときのことである。同じクラスのあの大人しい田村徹が突然大きな声をあげた。
「あ、濡れてる。なんで?」
「ええ? どうした?」
「誰かに履かれたみたい。まだ一度も使ってないのに・・・」
「そういえば、宮元先輩も今日水泳があるって言ってたみたいよ。」
「じゃ、犯人は宮元先輩か? ったく、気持ち悪いな。冷たいし、勘弁してくれよ。」
さぞかし、気持ち悪いだろうなと優斗と小沢も同情はしたものの笑うしかなかった。今更どうにもならず、田村は先輩が履いたと思われる濡れた海パンをそのまま履いて授業に出たのだった。その後、田村に悲劇が訪れようとはそのときは誰も想像していなかった。
体育の授業は、隣のクラスと合同で男子と女子に別れてそれぞれ行うが水泳も同様であった。プールを半分に区切り、男子と女子に別れて行う。男子生徒は誰しもこの時間を楽しみにしていた。女子の水着姿が見られるからだ。
「おらおら、女子の方ばっかり見てんじゃねえぞお!」
体育教師の南原が自分もにやにやしながら男子に注意を促す。
まずは、バタ足の練習からで、ビート板を使って足をバタつかせてプールの横を往復する。クロールの基本になるとのことで、水泳の苦手な優斗は、真剣に練習した。
「バタ足なんか、つまんねえなあ」
野球部の橋口がつぶやく。
「橋口は泳げるの」
優斗が訊く。
「まあな。」
「いいなあ、俺泳げねえんだよ。」
「へえ、泳げないんだ? 他にも結構下手な奴多いから大丈夫だよ。」
「はい、休憩」
南原が号令をかけると、男子生徒はプールサイドに集まり、一斉に女子の方に目をやる。優斗も何気に大林や北村を探した。
すると、そこへ突然、目の前の水の中から、まるで水族館のトドショーのようにざぶ~んと姿を現した女子がいた。優斗と同じクラスの湯原こずえだった。普段、制服の上からでも胸が大きいと感じていたが、勢いよく水から上がったせいで、胸の谷間がより一層強調され、水着から滴り落ちる水滴も妙に艶めかしかった。
「おお、すげえ!」
「ひゅー、ひゅー」
男子は大騒ぎである。
「失礼しました。」と恥ずかしそうに急ぎ足で女子の方へ走って行ったが、張りのある尻にも男子の目が集中していた。
間違えたふりをしていたが、自分のボディを誇示するため故意に男子が固まっていたところから上がってきたのは間違いない。確信犯だな。強かな女であると優斗は思ったが、ナイスなボディを拝ませてくれたのだからありがたいとも感じたのだった。
一方、その後、田村は先輩からうつったと思われる「いんきんたむし(股部白癬)」に悩まされるのであった。
曲は、JOANNE SHAW TAYLORの「Jump That Train」で、アルバムは『Diamonds in the Dirt』(2010年)である。
彼女はイギリス生まれのシンガーでありギタリスト、取り上げるのは2回目。
今回は彼女のセカンド・アルバムでまだ25歳の頃の作品である。
全曲、彼女のオリジナルのブルース・ロックでギターワークもボーカルもかっこいい。