応援団の朝は早い。
毎朝、8時前に集合して校門周辺を掃除するのが応援団の日課であった。模範生的な応援団である。入団前の持っていたイメージとはかなり違う。そもそも、清掃が終わった時間に登校していたのだから、応援団の行動は知らなかった。
入団してからそれまでより早く家を出ていく優斗を心配そうに母親は見送る。
「どう? 体調は大丈夫? 辛くない?」
「大丈夫だよ。」としか、優斗は応えない。
その日も朝の清掃のため、早く家を出た。最寄りの駅まで自転車で15分、電車に乗って40分、さらに駅から徒歩で15分の距離である。学校に着くと数人の一年と団長の姿があった。
「遅いよ」と一年
「悪い、悪い」
団長は既に黙々と箒を動かしていた。優斗は、団長にあいさつをすると急いで箒を手にした。
「斎木、お前、数学29点だったんだって?」
団長は、優斗のあいさつには返さず、いきなりそう言いながら顔をあげた。
「ああ、はい。」
(ち、小沢のやつ、ちくったな・・)優斗は、頭をかきながら答える。
「わが応援団員は、皆、成績が優秀なんだからな。赤点なんか取ったら笑われるぞ。っていうか、進級できなくなるぞ。しっかりやれよ。」
優斗は、「はい。」と答えるしかなかった。他の一年は、くすくすと笑っている。小沢のやつ、余計なこと言いやがってと思ったが、小沢には文句を言う気にもならなかった。自分が頑張るしかないのだ。
校門周辺の清掃が終ると着替える間もなく屋上に上がって発声練習だ。雨の日を除き、毎朝である。暑くなってくると、屋上を一周する度に汗が吹き出てワイシャツがびっしょりになってしまうのが嫌だった。
応援団が校門周辺を掃除している姿は教員も他の生徒も目にしているので、応援団は教師からも生徒からも一目を置かれている。服装も他の生徒と同様にきちんとしているし、成績も皆上位にいるので校内ではある意味特殊な存在にもなっていた。
一方、応援団というだけで怖がったり嫌がったりする生徒たちもいる。かつての優斗もそうであったように、もろ顔に出す者もいる。団員は、部室に入る時だけではなく、廊下で先輩を見かけたときには必ず「ちわっす!」と大きな声であいさつをしなければならない。そのため、そのような行為をすれば誰でも応援団員であることがわかる。優斗が応援団員であることも既に校内に知れ渡っていた。他のクラスの名も知らぬ生徒であっても、優斗が廊下を歩いてくるのを見ると、さっと両脇に避けるのがわかった。優斗は避けられると余計に寄って行きたい衝動に駆られるのだった。
中間テストが終わったので久しぶりにフォークソング同好会仲間の山本力の顔が見たくなって4組の教室に行ったときもそうだった。
「山本いる?」
入口近くで談笑していた数人の男子生徒に声をかけると一瞬驚いた表情を見せ、さっと散らばった。最も近くにいた生徒が逃げ遅れたように「あ、さっきまでいたんですけど・・」とあたりを見渡す素振りを見せた。
(同級生にそんな敬語を使う必要ないのにな)
「あ、そう。じゃあ、また来るわ。」
そう言って、優斗は教室を出て行ったのである。あまり、気分は良くないが、そういうイメージを持たれているのだから仕方ない。もっと自分からフランクにフレンドリーに接して、応援団の悪いイメージを払拭しなければならないなと優斗は考えるようになった。
曲は、RORY GALLAGHERの「Used To Be」
アルバムは、『DEUCE』(1971年)である。
ロリーのソロ・セカンドアルバムになる。
ソロと言ったのは、もちろんテイストを1970年に解散してソロになってからということである。
テイスト解散の翌年には、ソロ・デヴュー・アルバムをリリースし、同じ年にこのセカンド・アルバムもリリース。
正に勢いのあった時期である。
テイスト時代と同様のまだスリー・ピース・バンドだった頃のエネルギッシュな演奏を楽しみたい。