優斗の通う県立高校は、県内公立校の中では上位の偏差値であった。概ね同程度の学力の生徒が集まっているかと思えば、余力を持って受験する者もいれば、チャレンジ精神で受験する者もいて、在校生の学力には意外に差が生じている。
優斗は、後者の方で、どうやらギリギリで合格したようであった。中学校では上位の学力であったが、高校ではいままで感じたことのなかった劣等感というものを味わうことになるのだった。
初めて行われた中間テストの結果は散々だった。特に数学の結果が酷かった。小学生の頃は、むしろ算数は得意な方で成績もよかったが、中学2年の頃から降下してきた。子どもがよく使う言い訳であるが、担当の先生が嫌いで教科そのものまで嫌いになるというパターンであった。数学は、それぞれの繋がりがあって、一度つまずくと次のステップが理解できなくなる。そのため、授業を受けていてもなかなか理解できないでいたのだ。それこそ、「虎の巻」を買って復習でもしない限り、授業にもついて行けなくなってしまった。そうなると、益々苦手意識に拍車がかかり教科も教師もみんな嫌いになっていったのである。
「はい、この前の中間(テスト)の結果を返すぞ。」
数学教師の田沼が答案用紙を無造作に教卓に置いた。
「このクラスに100点が二人いた。まずは、小沢だな。はい、拍手~」
(え?あの問題で満点採れるやつがいるのか?)優斗は愕然とした。
(しかも、小沢のやつか、あいつそんなに頭がよかったのか?)
小沢は、出ていくときは照れ顔であったが、戻ってくるときにはドヤ顔になっていた。
「もう一人は、北村。はい、拍手~」
(ああ、彼女も頭いいんだなあ・・)
一人ひとり名前を呼ぶと生徒が教壇までもらいに行く。その都度、田沼が生徒に声をかける。よくできた生徒は称賛し、悪かった生徒は励まされる。ぼうっとしていると、優斗の名が呼ばれた。
「もう少し頑張った方がいいな」
その言葉で、点数が悪いのが想像できた。と、いうよりも元々手ごたえはなかったので期待はしていなかったが、点数を見て改めて愕然とした。
「29点」
何の数字だ?
これまで、自分の答案用紙にこんな赤字の数字は見たことがなかった。高校になると、やっぱり難しいんだなあと優斗は変に感心したが、一方では100点取る者もいる。この差は何なんだと首をかしげるほかはなかった。
「どうだった?」
休み時間になると、早速、小沢が優斗の傍にやってきた。優斗は、黙ってさっきの答案用紙を見せた。
「は? 29点? どうしたんだよ!」
「でけえ声出すなよ。」
優斗は矢沢から答案用紙をひったくった。
「どうもこうもねえよ。」
「あはは、ひでえ点だなあ」
優斗は、むっとして立ち上がるとそのままトイレに向かった。
中学校まで優等生でいた優斗は、いきなり劣等生のレッテルを張られた感がした。どこか違和感があるのだが、これが現実だ。中学校時代の優等生だった優斗をクラスに知るものはいない。きっと、みんなの目には頭の悪い子と映っているんだろうな。それならそれでもいい。むしろ、優等生ゆえの勝手な思い込みで自ら作っていた「縛り」から解放されて、気楽な気分になったのである。自分はもう「真面目」でいる必要はない。アホでいい。自分で自分自身をイメチェンするのだ。そう心に決めた優斗であった。
曲は、CHRIS REAの「The Road to Hell Part 2」で、アルバムも『THE ROAD TO HELL』(1989年)である。
クリスのアルバムを取り上げるのは4回目かな。クリスの10作目にあたり、本国イギリスで初めて1位になったアルバムとのことである。
これまでの作品にはなかったテーマ的なまとまりがあり、疎外、暴力、贖罪などを取り上げた曲が多いとのことでもある。
何故これがヒットしたのかがわからないが、とにかく、楽曲はいいので・・・
相変わらずの渋い声がいい。
哀愁漂うメロディラインにタイトなビート
その合間を切り裂くギター・プレイも魅力的である。
全体的なアレンジもかっこいい。