半ば強引に入部させられた応援団であったが、優斗自身の意識も少しずつ変わってきて、まんざらでもなくなった。先輩団員である3年生たちにもかわいがられるようになった。

2年生は、何人か入団したものの、全員辞めてしまったとのことであるが、その原因は同じ一年生は知らない。かといって、3年生に訊くのには勇気が要ったので優斗はとりあえず訊かないことにしていた。

 

 最初は怖かった団長の原田権蔵は、慣れてくると面白い人であった。練習中はさすがに厳しいが、普段はやさしく人望も厚い。

 

 副団長の藤木敏也は、校内でも恐れられている存在である。細身ながら引き締まった体つきをしている。ニヒルな顔つきでまだ笑った所を見ていない。稀に冗談を言うこともあるが笑っていいのか途惑う。新撰組で言うと土方歳三的なイメージである。 

 

平団員の伊藤隆は、成績優秀で校内でも上位にいるという。黒縁の眼鏡をかけていて生真面目な印象だが、一年生に対しては面倒見がいい。

 

宮元清は、得体が知れない。演歌が好きでよく口ずさんでいるが、何を考えているかわからない。一年に対する接し方もどこか他人行儀な感じである。

 

留萌楓(るもいかえで)は、長身でイケメン。女子にも人気があるが練習にはほとんど出てこない。それでいいのかと優斗は思うのである。

 

奥近友和(おくちかともかず)、これが問題であった。リーダーになると、やたらと屋上一周を命じるのである。リーダー以外の時にも一年いじめをするので嫌われている。それを承知の上でか、練習中に後ろからいきなり背中を突いたり、膝カックンをしてきて、よろけたりすると「気合が入ってない」だとか「集中してない」だとか難癖をつけてくるのである。時には、いきなり腹を殴ってきては、「腹筋の鍛え方がなってない」だとか言いながらなじるのである。ほんとに始末に負えない底意地の悪さである。他の先輩たちも放任していて、そのことが優斗たちには不満であった。奥近が練習に出てくると、一年は必ず憂鬱になっていた。

 

3年の団員は7名と聞いていたが、もう一人が誰かわからない。一年はまだ誰も顔を見ていないという。練習にも部室にも顔を出さないから幽霊部員かと思われているのであった。

 

 同級生も優斗を含めて7名であった。優斗を応援団に誘った同じクラスの小沢翔平はお調子者で女好きだ。頭はいいらしい。

 

 もう一人、同じクラスの田村徹は大人しい。優斗は、自分を棚にあげながら、こんなに大人しい性格で応援団が務まるのかと余計な心配をしている。

 

 峰山豊は、眼鏡をかけていて優斗よりも背が高い。まだ性格が読めていない。

 

 丸田一郎は、生真面目な印象で冗談が通じない。時折、いじられているがいつもムキになって怒っている。脚が速い。

 

 東陸(あずまりく)は、要領がよく世渡り上手なやつである。先輩たちにも歯の浮いたことを平気で言える人間であった。

 

 関田和俊は、タフで弱音を吐いたことがない。練習も熱心であるが不器用なところがあって、上達も遅い。

 

 2年がいないので3年が引退した後はすぐに自分たちの天下だと同期の一年生は密かに喜んではいるが、現在の3年生が居なくなって、この連中、そして何よりも自分自身がやっていけるのか不安な優斗であった。

 

 

 

 

 

曲は、阿川泰子の「It’s All Right With Me」で、アルバムは『ALL RIGHT WITH ME』(1985年)

 



彼女の10作目のアルバムである。ある日、中古レコード店で見つけた一枚。

 

どおくまんプロの描く漫画「嗚呼!!花の応援団」が映画にもなって一時人気を博したことがあった。記事のテーマに沿って取り上げようと思ったが、これまでのアーティストの流れとは著しく変わるのでやめた(笑)。

 

さて、阿川泰子さん、取り上げるのは初めてである。

元女優でなかなかの美人。ハスキーボイスがたまらない。

 

このアルバムは、トミーフラナガン・トリオをバックにスタンダードを歌っている。

バックの演奏も光っていて楽しめるし、それに乗って軽やかに歌う泰子さんも素敵。