「やっぱ、無理だわ。入るの止めるから団長に言っておいて」
優斗は、小沢に応援団の誘いの断りを伝えた。
「え~? 仕方ねえな。一応、言っておくけどさ・・・」
しばらくして帰ってきた小沢が言うには、それぐらい自分で言いに来いと団長が言っていたとのことであった。
正式に入団したわけじゃないんだからいいじゃないかと優斗は思ったが、このまましらばっくれてしまおうか迷った。というのも、優斗の教室は、応援団の部室の前を通らないと行き来できない場所にあったのだ。ばったり、顔を合わせたらばつが悪いし、この先一年生の間は毎日部室の前を通らざるを得ない。この際、きっぱり断りをいれておけばスッキリするかと思った。
その日の放課後、優斗が部室に行くとにこやかな顔をした団長が待っていた。にこやかな顔が逆に怖いなと思いながらも、優斗はすぐさま入団しない意思を伝えた。
「あの、すみませんが、入団は辞めます。」
「はあ?なんで?」
いつになく、軽い感じの団長であった。
「ちょっと、自分には向いてなさそうだし・・」
(何いいわけしてんだ。ただ、入らないって言えばいいじゃないか。)
「そんなことはないよ。素質あるよ。これから、一生懸命練習すれば立派な団員になれるよ。」
(何が素質だよ。別にりっぱな団員になんかならなくていいし・・)
「でも、やっぱり辞めます。」というと、急に団長の顔色が変わった。
「でもじゃ、ねえんだよ。一度、入部した奴は簡単に辞めさせるわけにはいかねえんだよ。」
「あ、でも、仮入部なんだし・・・」
「は? 仮入部なんて誰が言った? そんな制度なんかねえんだよ。」
「・・・」
(くそ、小沢のやつに騙されたか)
「わかったら、来週から練習出てこいよ。来なければただじゃ済まねえからな。」
(げ・・やくざかよ)
優斗は、最後まで逆らうことができず、しぶしぶ部室を出て行ったのである。小沢に抗議しようと教室に戻ると、既に小沢の姿はなかった。
(くそ、小沢のやつめ)
憤懣やるかたないが、とりあえずその日は帰宅するしかなかった。
曲は、ドン・ニクスの「Sit Down On Your Love」で、アルバムは『PASSING THROUGH』(2008年)である。
ドン・ニクスを取り上げるのは2回目だろうか。
実は、昨年末に亡くなっていたと誰かのブログで知った。
スタックス・レコードのセッション・ミュージシャン時代を経て、デラニー&ボニー、アルバート・キングやフレディ・キングなど数々のアルバムをプロデュースし、自らもソロ・アルバムを残してきた。
晩年は、視力を失っていたらしく、寂しい限りである。
このアルバムは、彼の9作目にして最後のアルバムとなった。
デヴュー当時は、スワンピーなアルバムが続いたせいか、そんなイメージを持っているが、このアルバムはスワンピーな雰囲気は抑え気味で、むしろ自由にやりたい音楽をやっている感じでそれはそれで好感が持てるアルバムである。
緊張感の漂う曲もあるが、全体的にリラックスしている感じだ。