ぼんやりとした灯りが暗い天井に反射している。数年前、小樽で買ったステンドグラスのテーブルランプの灯りだ。結婚してからは、妻が真っ暗な部屋では眠れないからとテーブルランプを使うようになったが、今では優斗もその環境に慣れてしまって、同じように真っ暗な部屋では眠ることができなくなっていた。
ここはどこだ?と思ったのは一瞬で、すぐにいつもの寝室であることが認識できた。隣では、妻の静かな寝息が聞こえている。
夢だったのか?
久しぶりに覚めない夢だった。大方の夢は、夢を見ながら途中でそれが夢であることを意識できたし、夢から逃げて目を覚まそうとすればそれができるようになっていたのだ。今日は、それがなかった。
そういえば、夜中に地震があったような気がしたが、夢の中の出来事だったのか実際に揺れていたのかはっきり思い出せない。それほど、深い眠りに陥っていたのだろうか。
久しぶりに見た夢は覚えていた。
ただ、田辺美華という女性の記憶がない。目覚めた瞬間、不思議と名前だけは憶えていたが一体誰なのかが思い出せない。
唐突な夢だったな。
優斗は、枕元のスマホを手にした。暗がりにスマホの画面が眩しい。思わず目を細めて見ると、午前4時だ。まだ起きるには早い。寝返りを打ちながら、布団を頭までかぶってもう少し寝ようと思ったが、突然、何かに突き動かされるように優斗は再度スマホを手に取った。
まさか・・・。
そんなことあるわけないよなと思いながらライブラリを見た瞬間、鳥肌が立つのを覚えた。そこには優斗の学生の頃の写真があった。背景には大学の1号館が映っている。
そして、優斗の隣には優斗に肩を抱かれた見知らぬ女子大生がいた。
美華だ。
正しく夢に出てきた田辺美華だ。
優斗の心臓はバクバクと脈打ち、全身に熱い血を送り出していくのを感じていた。
曲は、ジェイムス・カーの「Soul Survivor」で、アルバムは『Soul Survivor』(1993年)である。
しばらくぶりに復活した後の2作目にあたるアルバムらしい。
往年の素晴らしい歌いっぷりに貫録も感じる。
