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 増田さんの本は、ホントに分かりやすい。現在の日本の政治的・経済的状況が、アメリカの基本戦略とどのように関わっているのかを、明確に説明してくれる。
 この本は、今年の2月9日が初版であるけれど、既に国会議員は読んでいるであろう。日本中の読者が読まねばならぬ本である。少なくとも現実的に日本をどうしたいのかを考えている若者達にとっては必読書ある。


【2007年5月に解禁される予定の「三角合併」】
 1999年の商法改正にともない、企業が自社株と買収先の株式を交換することにより完全子会社化できる株式交換方式での買収が可能になった。 (p.56)
 2006年5月1日に施行された会社法ではさらに、M&Aに必要な対価を自社の普通株式以外の資産、すなわち社債や新株予約権、厳禁、親会社の株式などで賄うこと(合併等対価の柔軟化)が認められた。
 これにより、外国企業が日本に100%出資の子会社を設立し、その子会社を通じて自社の株式(子会社にとっては親会社の株式)を買収対象企業の株式と交換することにより、日本の企業を吸収合併できる道が開かれた。
 小泉前首相は事の重要さをわかっていたのだろうか。また、この法改正を小泉前首相の原案通り通してしまった国会議員の無知さ加減には、驚き呆れるばかりである。  (p.57)

 ここまでなら、日本企業とアメリカ企業が相互に「三角合併」すれば互角ではないかと思う。しかし、これが違っている。
 円換算でダウ工業株30種は、日経平均株価の90倍である。(p.58)
 優秀な日本企業がアメリカ企業の90分の1であるなどとは、にわかには信じがたい数値である。国民にとって投機が普通の行為であるアメリカと、単なる貯蓄が普通の日本という違いがこのようなありえない格差を生んでいるのであろう。
 1対90では、いかに日本とはいえ勝負にならない。敗北は目に見えている。これが、小泉改革の落とし穴である。小泉前首相によって造反組として排除された議員達は、著者のレポートを読んでこのことを知っていた人々なのだという。現在の阿部首相はこのことを知っている。マスコミが造反組を復党させた安倍首相の不人気を煽れば、日本企業は敗北することになろう。


【アメリカの21世紀型植民地主義】
 なお、断っておきたいのだが、これは単なる推測ではない。私が実際にアメリカの某シンクタンクで聞いた話である。彼らの次なる狙いは農業と医療、加えて教育分野へのアメリカ企業の参入であり、それを実現させるための使い勝手のよい 「ツール」 が、ほかならぬ小泉前首相が残した構造改革特区なのである。「日本人の主食、健康、精神を支配する」 こと。アメリカの21世紀型植民地主義である。 (p.117)



【アメリカの対中国戦略】
 「日本を利用し、中国経済を押さえる」、これがアメリカの経済面からの対中戦略である。そして政治面での米軍再編成による対中国軍事包囲網強化と台湾の「独立宣言」のタイミングとアメリカ主導による中国経済崩壊のタイミングを合わせる。これで、もはや大中国市場はアメリカのものになったも同然である。「さすが戦略国家アメリカ!」である。 (p.175)



【上海協力機構】
 2001年6月、中国、ロシア、ウズベキスタン、キルギス、カザアフスタン、キルギスタンの6カ国が設立した上海協力機構(SCO)は、メディアでは「安全保障、エネルギー資源開発、経済、文化分野で地域協力の推進を目的とする」と伝えられるが、この機構の狙いは、中国とロシアによる米ドル基軸通貨制度の弱体化である。 (p.189)

 アメリカのシルクロード戦略法に対するカウンター組織がこの上海協力機構ということになる。

   《参照》  『あと5年で中国が世界を制覇する』 副島隆彦 ビジネス社 《前編》

             【 アメリカ vs BRICs諸国 】



【ドル売りは、中国にとって自殺行為】
 中国が保有するドルを多量に売却すれば、ドルは暴落するであろうが、転じて中国製品の暴騰になるわけで、中国自体も自分で自分の首を絞める自殺行為ということになる。ましてや、外資依存型の中国経済である。その傷は浅くすむわけはない。
 それに対して、ドルが暴落しても、もともと自国通貨であるがゆえにアメリカ国内は中国のような致命傷は受けない。むしろ、アメリカ企業の海外輸出を活性化させ、アメリカ国内は輸出依存型好況になる。(p.190)



【昭恵夫人】
 シンプルさは相手にとって必ずしも失礼に当たるものではないし、ある意味では「尊敬」に値するものであると私は信じる。
 自らに自信を持っている人、明確な信念をもっている人はそれほど服装に神経を使わないものである。その意味で、昭恵夫人の服装と控えめな態度は、とくに儒教精神の国・中国では高く評価されたはずである。これが私の首相夫人に対する感想であった。 (p.216)



【アメリカの国家戦略】
 今世紀のアメリカの繁栄と存続は、中国市場の自由化による中国ドル市場化なしにはありえないというのが私の持論である。だから今日のアメリカの国家戦略はことごとくこの一点に集中している。 (p.226)

 経済と軍事という区分でいえば、企業合併による対日本経済戦略、そして、米軍再編による対中国軍事戦略の2つであるが、いうまでもない、この2つは不可分である。
 日本の経済力なくしてアメリカの軍事再編はありえない。朝鮮の南北統一後であれ、中国の経済崩壊後であれ、その時に必要な資金供給をどの国が行うのか。日本なくして、アメリカのいかなるプレゼンスもないのである。しかし、アジアを混乱させ、なお日本を恣に利用しようとするのであれば、アメリカの戦略を日本の国民が歓迎するわけはない。


【最善のシナリオ】
 中国に、基軸通貨国家・アメリカと覇権を争う意思がある限り、世界が穏やかな平和と繁栄を享受することはできない。現在の中国は、自由主義経済的手法を取り入れていると入っても、共産主義国家=覇権主義国家である限り、このまま軍事力増強に走るのであるから、当分の間は、世界から不安定要因は取り除かれない。
 アメリカは、「共産主義国家・中国を自由化する」という基本前提で、国家戦略を定めている。
 中国がアメリカとの戦争や自国内経済破綻を経ることなく、共産主義を廃して、5つないし7つの連邦制自由主義国家に移行できるならば、それが、中国にとって最も長期的な繁栄が約束される最善のシナリオである。
 しかし、中国は中南米付近でアメリカを威嚇する軍事包囲網を既に築いているという。中国にとって最善のシナリオは、正に中国自らの手によって破棄されようとしている。


【「基軸通貨“円”」は夢物語か?】
 アメリカにとって世界中に自由化する国がなくなったとき、ドルが崩壊してアメリカは経済破綻する。ではそのとき日本経済はどうなっているのだろうか。結論からいうと、その場合あとに残るものは、世界最大の債権国である日本だけということになる。 (p.243)
 日本という世界最大の債権国一カ国対残りの世界の債務国という枠組みが自然に出来上がる。・・・マーケットはドル安、円高が事前に察知されるから、世界中の国家や投資家が手持ちのドル資産を円に切り替えてくる。
 そして、そこまで円の力が強くなってくると、今度は、債権者日本とは円以外の通貨ではファイナンスしなくなる。・・・そしていよいよ、米ドルが世界市場から退場するに至るや、世界蔵相会議の席で、円が世界の基軸通貨として承認されるのは当然である。
 戦後、アメリカが世界最大の債権国家であり、最大の貿易黒字国家であったからドルが国際基軸通貨となった。ドル崩壊後は世界経済が「円基軸通貨制度」の下で動き出す。日本の世紀がやってくるのである。それは決して夢物語ではない。 (p.244)

 アメリカと中国、いずれも国旗に星を描く国である。夜の国であり、闇に乗じて暗躍する国である。太陽を国旗に描く日本は、昼の国であり、白昼堂々と至誠を尊ぶ神の国である。日本が世界の中心に立つ時が、真に世界に平和が訪れる時である。

 

<了>