「抑圧されたままでいるなよ ぼくたちは三十一文字で鳥になるのだ」
「破滅するその時にさえ美はあるぞ たとえば太陽が沈むその前」
「家にいるだけではだめだ ぼくたちは芭蕉のように旅人になれ」
「プラトンは偉大で ぼくは平凡だ プラトンの書を読みつつ思う」
「きみのため用意されたる滑走路きみは翼を手にすればいい」
「草をかき分けてゆくごと文章を書いてゆくのだ 乗り越えるため」
「もう少し待ってみようか曇天が過ぎ去ってゆく時を信じて」
「空だって泣きたいときもあるだろう葡萄のような大粒の雨」
「思いつくたびに紙片に書きつける言葉よ羽化の直前であれ」
「プロ野球選手になれず月の夜に歌人になりたいと思う窓辺に」
「ひとの数だけ歌がある不思議かな たった三十一文字なのに」
「これというものみつからず苦しみし十七歳は歌に出逢いき」
「遠くからみてもあなたとわかるのはあなたがあなたしかいないから」
「なんらかに日々影響を受けながらゆくよ 例えばボードレールに」
「歌作とはこころの森に棲む鳥の声音に耳を澄ますことなり」
「箱詰めの社会の底で潰された蜜柑のごとき若者がいる」
「サンタクロースあなたにぼくは逢いたくて逢えず大人になってしまった」
「東京大空襲走って生きた祖父がいてぼくのいのちがここにあるのだ」
「癒えることなきその傷が癒えるまで癒えるその日を信じて生きよ」
「研修中」だったあなたが「店員」になって真剣なまなざしがいい
「牛丼屋頑張っているきみがいてきみの頑張り時給以上だ」
「靴ひもを結び直しているときに春の匂いが横を過ぎゆく」
「何か必死に探す事 格好悪いことじゃないんだ。暁の方へ」
「まだ蒼い僕の言葉が完熟のトマトみたいになればいいのに」
「深海にある折畳傘を取り出すために手を鞄の底へ」
「折畳傘取り出して「ほら翼広げてごらん」って花になる」
「空を飛ぶための翼になるはずさ ぼくの愛する三十一文字が」
「いきいきと躍動するこのこころ伝えるための口語短歌だ」
「
「われを待つひとが未来にいることを願ってともすひとりの部屋を」
「悲しみ」とただ一語にて表現のできぬ感情抱いているのだ」
「理解者はひとりかふたり でも理解者がいたことはしあわせだった」
「生きているというより生き抜いている こころに雨の記憶を抱いて」
「日常のふとしたことを起点としほくは考える葦となるのだ」
「まだ知らぬ僕に会うためノックしてこころの扉開けてゆくのだ」
「こころのなかにある跳び箱を少年の日のように助走して超えてゆけ」
「生きているからこそうたうのだとおもう 地球という大きな舞台の上で」
「ヴェルレーヌの詩句に救われたるこころ 部屋にひとりでいる真夜中に」
「ポケットに手を入れながら待っている フランス行きの空飛ぶバスを」
2017年に32歳という若さで
人生の幕を閉じた萩原慎一郎さん
京都で生まれ
東京で4歳まで暮らし
父親の転勤で香港へ
その後小平市に住み
中高一貫校へ
この頃から
イジメにあい
イジメは長く続いたよう
短歌に出会うことで
生きる希望を見出した彼
急逝するまでの
短歌集
「滑走路」からの
抜粋でした
お読みいただき
ありがとうございました。
さてさて
「カフェおきもと」を後にして
宮地さんと私は
神代植物園へと向かいました
その話はまた。








