靖国神社で伊東忠太原作の狛犬を見た後、境内にあるそのほかの狛犬も改めて確認してみました。

 

一番手前の狛犬(下の写真)は、神社のサイトによると:

彫刻家の後藤良(ごとうなおし)が大東亜戦争中に造り始め、戦後、同氏亡き後、直弟子の八柳恭二(やつやなぎきょうじ)が昭和41年に完成させました。

とあります。

 

後藤良ってどんな人物?と検索すると、”馬体製作担当者として著名な彫刻家・後藤貞行の次男”とのこと。

父の後藤貞行を調べると、二重橋そばの楠木正成像の「馬」の作者だと判明。

しかも、高村光雲作といわれる西郷隆盛像の犬も、後藤貞行の作でした。

 

 

↓後藤良氏作の狛犬。左右両方載せたいところだけど、日も暮れてもう片側は暗くてうまく撮影できず。

 

 

後藤貞行という人物はどうやら動物の名手だったようです。

経歴を見てなるほどと思いました:

 

・幕府の騎兵所に学び、明治の廃藩置県後は東京などで兵馬術を学ぶ。

・デシャルムに西洋画を教わる。

・軍馬局に勤める。石版画、写真術などを学んだのち、高村光雲と知り合って木彫を学ぶ。

 

 

馬術に、西洋画に、石板画に、写真に、木彫!

なんとも多才なこと。

それにしても西郷像は完全に光雲作として覚えていました。

 

 

 

実際銅像の由来を見ても、巨匠高村光雲の作である、と明記。

後藤貞行氏の名前が出てこないのはちょっぴり不平等のような・・

 

 

 

毛並みが丁寧に刻まれています。

こうしてみると、犬と西郷の作風は異なっていますね。

隆盛の愛犬「ツン」の表情をよく見ると、どことなくアンニュイ?

愁いを帯びた瞳です。

 

 

 

そして楠木正成像。

 

以前聞いた話によると、こちらは東京美術学校の関係者などが総力を結集して制作したもののはず。

なので誰がどの部分を担当したのかはよくわかっていないのだろうと思っていました。

 

が、つい最近、泉屋博古館の展示で光雲作・楠木正成銅像頭部木型なるものを目にしたので、頭部は間違いなく光雲です。

そしてどうやら馬は貞行氏だったわけですね。

甲冑など他のパーツも手分けして作られたのでしょう。

この像についてはまだ少し深堀りしたいのでまた別途。

 

 

 

 

この馬を見ていて、今年、トーハクの午年特集展示で見た馬のなかに、貞行氏の作品があってもおかしくないな~、などとふと思いました。

写真を改めて見てみたら、ありました:

なんだ、あの存在感のある馬の作者だったか。

突っ張っている前足には力が入って筋肉が盛り上がっています。

 

 

 

明治時代当時の皇太子、後の大正天皇が買い上げたものでした。

なんとも名誉なことで。

 

 

 

たてがみ、しっぽの躍動感たるや!

木彫だけどしなやか~。

 

この展示場所は工芸の部屋の特等席のようなスポットです。

高村光雲の木彫の老猿がよく置かれています。

師弟関係といってもいいような関係だった光雲と貞行がひとつの展示スペースを奪い合っているかのようです。


 

 

最後にオマケ。

靖国神社のなかでは、この狛犬が一番お茶目!