モア「クックちゃ~ん!
来てくれて嬉しいわ!ず~っと待ってたのよ!」
 
クックちゃん「やあ、モアちゃん!
君の山の雪が解けたから、僕もやっとここに来られたんだよ!
ああ、良かった。とっても元気そうで!」
モア「ええ、お陰様で、すっごく元気よ。今年の冬は、本当に快適だったわ」
 
クックちゃん「僕、君が手すりを付けてくれた道を通って来たよ」
 
モア「クックちゃんの村の方からも、手すりをつけてくれたんでしょ?」
 
クックちゃん「そう。最後の杭を打って、ロープで、モアちゃんの作った杭と繋いできたとこ。
これで完全に、モアちゃんの家と僕の村が、ひとつに繋がったよ」
モア「嬉しいわ!
これで、みんな、私たちの家に遊びに来られるわね」
 
クックちゃん「う…ん。残念だけど、それは難しそうだよ。
僕、誘ったんだけど『あの道、高すぎて、恐ろしくてとても通れないよ、下見ただけで失神しそうだ』『幾らロープが張ってあっても、あの道を通れるのは、クックちゃんとラークさんくらいだよ』って、みんなに言われちゃった」
モア「あらっ…マレットちゃんもダメ?」
 
クックちゃん「マレットちゃんは、僕の取った写真を見て『モアさんの家にはすっごく行きたいですけど、この道は…』って絶句してた。ロビンなんてもう、見ただけで真っ青。
シスキン君は大工の孫だから、高い場所は平気らしいんだけど、それでも『ロビンとマレットちゃんが行かねえんなら、俺もやめとくんだぜ。クックとモアちゃんと俺の三人しかいねえんじゃ、俺一人、だんぜん浮くもんな』だってさ」
モア「そう…それは本当に残念だけど、いいわ。私が、クックちゃんの村に行けるんだから。
マレットちゃんやロビンちゃんやシスキン君には、その時に会って遊びたいわ」
 
クックちゃん「うん、みんな、楽しみに待ってるよ。
ロビンは、モアちゃんたちが来たら、スイーツパーティするんだって張り切ってるし、マレットちゃんは、モアちゃんと一緒におそろいのバッグを持って、街に買い物に行ってみたいって言ってるし。
シスキン君も、五月になったら秘密基地を開けるから、その時にはモアちゃんも一緒に遊ぼうって」
 
モア「まあ、素敵!今からワクワクするわ。
…ポムちゃんやトチーちゃんや、おばあちゃんはどう?」
 
クックちゃん「おばあちゃんは杖をついているから、山道はとても無理だし、トチーちゃんも、あんな高い所を通るのは怖いって。ポムちゃんも『ううん…』って笑ってた。
…クックちゃんもモアちゃんも、お母さんもレイヴン君も、こんな道を通って行き来してるの?!って、みんなビックリしてたよ。
『火を遠ざけた妖精族』には、高所恐怖症なんて無縁なんだろうなあ、って…」
モア「あら、そんなことないわ。レイヴンは、高い所は苦手よ。
去年の秋に、クックちゃんたちの村に来た時は、ヒト族の男の人たちが、レイヴンを背負ってってくれたのよ。帰り道もそうだったわ」
 
クックちゃん「ええっ、そうなの?」
モア「そうよ。勿論、レイヴンだって、谷を滑り降りたりしなくてはならないから、竦んで動けなくなっちゃうほどの苦手ではないけれどね。
でも、崖を歩くのも高い木に登るのも、岩塩を採るのも、レイヴンは、私ほど得意ではないわ。
私たちの一族の全員が全員、高い場所が平気ってわけでは、決してないのよ」
 
クックちゃん「そうだったんだ…」
モア「その代わり、レイヴンには、私にはない勇気があるの。
雪が解けてから、私たち、またあの古城に行ってみたわ」
 
クックちゃん「え…あっ、あの不気味な古城に、また行ったの?!」
モア「そうなのよ。
レイヴンは、怖気づく私たちなんかものともせずに、あの城の中に真っ先に、独りでポーンと飛び込んでってね。
中を見回して『お姉ちゃ〜ん!母さ~ん!…ここ、何だか分かる?
僕、すぐに分かった!ここは製鉄所だよ。鉄を作って鍛えるところだっ!』
って、大声で叫びながら、戻って来たわ」
 
クックちゃん「…製鉄所だって!?あのお城が?」
モア「そうなの。私や母さんも、すぐに中に入って確認して、本当に驚いたわ。
お城の一部が、鉄の鋳造所と鍛錬所になっていたのよ。
クックちゃんに貰った、鉄についての本で、私もレイヴンも、ヒト族の鉄の歴史を勉強してたでしょ?
あの本を私たち、冬の間中、読み込んでて…」
 
クックちゃん「そっか、だから、鉄に関係のある場所だって、すぐに解ったんだね」
モア「クックちゃんから聞いた、あの『火焔王』の話だけど、
母さんは…火焔王は、あの城できっと、民を支配する為の鉄製の武器を、秘密で作ってたんだろう、って言ってたわ」
 
クックちゃん「ああ……」
 
モア「でも、火焔王の長男の王子が、あの城に監禁されていた時には、もう、製鉄所としては、使われてなかったんだと思うの。火焔王の嫡男は、火を捨ててしまったのだから。
…あの武器を作る工場で暮らしてみて、王子は、父親の業の深さを感じて、火がしみじみと嫌になってしまって、それで火の文明を捨てたのかもしれないね…
って、母さんは話してた」
クックちゃん「確かに、そう考えてみると、伝説との辻褄がぴったり合うものね」
モア「ただ、レイヴンはいつか、この製鉄所を良い意味で役立てたいそうよ。
そして言ったの。『お姉ちゃんが、火の力も、このお城も要らないって言うんだったら、僕がお姉ちゃんの火の力と、このお城が欲しい。鉄は、僕らの生活に絶対に必要だよ』って。
今のところは、あの伝説の通りなら、きっと、あの城の継承権は私にあるのよ」
クックちゃん「そっか。モアちゃんは、あのお城の未来の女王様ってことになるんだね」
 

モア「でも、私には、火の力をうまく制御出来ないわ。

だから、運の悪い時にあの力が働いて、ヒグマを焼き滅ぼしてしまった。

もう、あの力にはうんざりよ。あの古城も、私には用がないわ。

…でも、レイヴンなら、鉄の道具を私たちが作り出すのに、あの製鉄所と、火を自由に司る力が、もしかしたら役立つかもしれない」

 
 
クックちゃん「確かにそうだね。
そうしたら、何もかもが良い方向に進みそうだものね」

 

モア「レイヴンは、その話を聞いた時に『僕、15歳になるまで待ってみるよ』って言ってたわ。

あのお城を、ヒト族の子が見ることが出来る年齢が、15歳までだそうね。

ということは、15歳になった時に、きっと何かが変わるのよ。

その時、私がお城を継承する気を完全に放棄してしまっていたら、レイヴンにお城の継承権が…その火の力が移るかもしれない」

クックちゃん「うん、僕もそうなったらいいと思う。

そうしたら、その火の力は、生活に必要な鉄の精錬や鍛冶に生かせるよね」

 

モア「母さんは『まだレイヴンのことは心配だ、本当に15歳になるまで様子見だね』って言ってたわ。

あの子、とっても良い子なんだけど、ちょっと軽はずみなところがあるし、時々火焔王の血筋らしい、野心的なことを言い出すから、母さんは不安なのよね。

でも私は、レイヴンは15歳になるまでには、その性格は収まるような気がするわ」

 

クックちゃん「うん、僕もそう思う」

モア「私たち、今、お茶に入れる菫を毎日摘んで、乾燥させているわ。
出来上がったら、母さんと私で、クックちゃんの村に持ってゆくわね。
レイヴンも、高い所を通るのは苦手だけど、その時は私たちと一緒に村まで花を運ぶよって言ってる」
 
クックちゃん「あ…エディブルフラワーを作ってくれてるんだね」
モア「ええ、そうよ。
私たちも初めて、ハーブティーに入れてみたけど、お湯の中でふんわり浮かんで、可愛いのね」
 
クックちゃん「良かった!
ポムちゃんが、モアちゃんたちのエディブルフラワー、毎年作ってくれるようになれば、相当高く売れるはずだから、今年も作ってくれてるといいんだけど…って言ってたんだ」
モア「ええ!クックちゃんが、この花を鉄の道具や種に替えてきてくれたおかげで、私たち、畑仕事が出来るようになったんですもの。
今年は沢山売って、秋には小麦の苗を買って、植えて育てるわ。
あと、春に植え付ける種苗と…
それまでに食べ繋ぐ小麦粉や、パンを膨らませる粉も、沢山買っておこうって話になったの。」
 
クックちゃん「酵母のことね。
そっか、モアちゃんたち、遂にパンも作り始めたんだ。凄いなぁ!」
※籠までは私が作ったミニチュア。周りの景色や菫はAI。
 
モア「この冬はそのお陰で、お腹を空かすことなく過ごせたわ。
私たちがどんな『クリスマス』を過ごしたか、冬の間、どんな料理を作って過ごしたか、クックちゃんと、色々な話をしたかったの!」

 

・・・・・

 

これまでのお話

 

登場人物&設定

・・・・・

 

「ドリゴのセレナーデ」R・ドリゴ

月光が、海を黄金に照らし

影の中、一艘の小舟が現れる。

海は震えるような微風と共に

私の小舟を優しく愛撫する。

夜はその神秘の内に静かに呼びかけ

こういうのだ

「愛している」と…

 

来たれ!暗きラグーンを離れて

来たれ!月の輝きの中へ。

来たれ!愛の呼び声に導かれ、

そして再び、愛を待つ為に。

 

来たれ!私に(愛という)宝物を与えに

来たれ!私の愛の叫びのもとへ。

来たれ!私の願いが

あなたを連れてゆきたがっている

遥か遠くへと。

 

・・・・

リッカルド・ドリゴはバレエ作曲家。

実はこれは「百万長者の道化師(明治~大正には「何でも屋の魔法使い」という可愛い邦題で紹介された)」というバレエの中で歌われる歌。


内容は、アルレッキーナという男がコロンビーヌという恋人の窓辺で熱烈な恋を歌いあげる、タイトル通りセレナードです。

てか、オペラじゃなくバレエ内で歌を歌う、という自体、Yuniには驚愕だったんですが、昔は珍しくなかったそうな。

 

しかしこのセレナードは、世界的に大ヒット。

本場イタリアでも、内容を離れた、より一般的な詩を付けられて歌われるようになった。

このマリオ・レンツァが歌っているのはこれ。



1、淡き光に 浪路(なみじ)は霞みて

月の水際(みぎわ)に さざ波ささやく

夜の静けさに ただ君を思えば

われと浮かび来る

この世ならぬ 現(うつつ)心地 さ我れ


ああ 我が君来ませや

月は冴え渡りぬ

いざ 遙けき夢の国へと

君よ 往(ゆ)かん


2、かかる一時(ひととき) 恋する心に

君が瞳の 光ぞたゆたえ

愛に充(み)てる歌 秘めやかに歌えば

声は谺(こだま)しつ

君が胸に 響きゆくか げにも


ああ 我が君来ませや

月は冴え渡りぬ

いざ 遙けき夢の国へと

君よ 往かん


月の今宵を ああ ―― 


(堀内敬三訳)


・・・・・

 

茨城県稲敷郡阿見町のアクアカフェCafe De Mareさんへ。

席に着くと、目の前に巨大な青い水槽。

海の動物たちを眺めながら、カフェを楽しめます。

落ち着いていていいですね。あいにくYuniたちの据わった側、お魚さん少なかったんですが、ナマコやエビガニやちっちゃい魚たちだけでも可愛かった。
一生懸命砂掘って、隠れ家を作ってそこにじっとしてる子とかもいて、個性あって可愛い。通い詰めてるうちに「推し」出来そう。