最強の認知症母が
変な行動をしないよう
私は
救急治療室の ベッドサイドにいた
先ほどの女医が
今度は 若い男性研修医を連れて
やってきて
今から ホッチキスで
頭の縫合をしますね
と言いながら
母の頭の ガーゼを外した
初めて見る 傷口は
富士山のように 盛り上がった
たんこぶの上に あり
そこからは
少しづつ 血が滲み出ていた
まだ 出血してる
大丈夫かなあ?
傷口を見ながら
不安そうな声を出す 研修医
手には
縫合用ホッチキスが 握られていた
女医は
大丈夫よ
私が 皮膚を寄せてるから
と研修医を 励ます
盛り上がってるから
やりにくいな
皮膚に 直角に
ホチキスを当てれば 大丈夫
そうそう
しっかり 力入れて
ほら
思い切って やるのよ
二人の会話からは
その関係性 性格の違いが
ハッキリ 見て取れて
つい 聞き耳を立てていたら
突然
バチンッ
と小さな音がして
同時に
母が 呻き声を上げた
ゔっ
その声に
私は 一瞬 動揺した
あ 娘さん
頭 動かないように
抑えててくださ~い
女医の言葉に
慌てて
母の頭を固定する 私
バチンッ
ゔっ
あっ どうしよう
ちょっとズレた
慌てない!
針を抜いて やり直す!
スパルタな 女医
はい すみません
謝りながら
失敗した針を抜こうとして
うまくいかない 研修医
その間
呻きまくる 母
ちょっとぉ
先ずは 謝る相手は 誰やねん
と心の中でツッコむ 私
そして その後も
バチンッ
ゔっ
バチンッ
ゔっ
と 続き
結局
5針+失敗1針+抜去1針
計7回
母は 呻いた
(しっかり数えていた)
その後
傷口に ガーゼを当て
その上から
筒状のネット包帯を
頭に被った 母は
まるで
栗のようだった
では 検査結果が出るまで
このままでお待ち下さい
そう言いながら
二人は行ってしまった

