<人はなんで20kmも歩くのか?>
そのこたえを求めて先日9月2日(クツ)<美しい日本の歩きたくなるみち500選>の「第22回くつの日記念ウオーク」に参加してみました。
秋雨前線の影響で前日の天気予報も雨でしたし当日も朝から雨模様。ただ台風でなかっただけやや安心。
ポンチョをかぶってカサをさして歩けば20kmぐらい3、4時間のウオーキングだが、コース上に点在する見どころいっぱいの景観が雨粒で観れなかったし、写真を撮れなかったのが残念。
途中で眼にした美しいものはひろく披露したい。が、それはまた来年以降にとっておこう。
雨のなか「巫女さんの作法入門」という本で有名な神田明神を出発して昌平黌の湯島聖堂~聖橋~おがわまち~駿河台下~神保町~九段下~靖国神社の脇を通って途中左折、今度は一路南下する。
間断なく降り続く秋霖のなか、夏草の小路を一行のあとに続いて歩いていると、ひときわシャレた金ピカの洋風建物に出くわした。ここはなんだか空気が違う。
門柱に英国大使館の表札が出ていた。
イギリスの衛兵というとあのバッキンガム宮殿でお馴染みの赤と黒の近衛兵を思い出した。
メリハリのきいたコース設定でマンネリ感を打破した思い。まことに粋なはからいである。
やがて半蔵門を右折して麹町から四谷へと西進する。
団体ウオーキングだからゼッケンをつけた者のあとをついて歩けばまず迷子になることはない。
といっても実はTOKYOウオークで迷子になった事があった。食事したりふらっとコースを外れると迷子になる可能性も出てくるので、ヤマカンに頼るのでもやはりマップやコンパス(方位計)などナビは必携だ。
さてどこまで行ったかな、津之守坂を少し先に行くと四谷三丁目で、ここを左折し、ずーと南下する。
信濃町、そして権田原~青山一丁目、この辺に来ると雨が上がっていたのでポンチョを脱いで胴に巻いていた。
気が付いたら音もなくそのポンチョをどこかに落としたようなので探しにUターンしていると、それを拾って持ってきてくれてる親切な女性に会い感謝の言葉を交わす。
こういう何気ない親切はその人の普段の善行とか人柄がフっと顕れる。ウォーキングで健康的になるから健全な精神も培われるのか。さわやかな邂逅であった。
やがて軍神乃木将軍の乃木坂~六本木トンネル。この六本木六丁目~鳥居坂下がこのコースで最も迷いやすい難所。
私の前をゼッケンを付けて歩いていた黄色い服の方もこれでいいのか迷ったようで自信なさそうに逡巡し後戻りし出した。
それでもマップとコンパス片手にGoing my way.で前に進んでいると、前方にゼッケンを付けた集団が見えてきた。ふぅ~、やれやれ。やっぱりこれで良かったんだ。
そうかと思ったら今度は雲行きが怪しくなってきた。急に涼しくなり雨脚が強くなって一寸先の視界が見えにくい。
叩きつけるような、いやこういう時はバケツをひっくり返したようなと言った表現が適切だろう。
傘も役には立たない。こりゃたまらんとばかりウォーカー連中も急きょビルなどの軒下へ避難。
これは驟雨かと、しばし雨の降り方をながめていた一同だが、そのうちだんだん不安になってくる。
「雨がやむまでどこかで食事でもして行こう」と散っていく者。
「こりゃどのくらい降り続けるんだろう」
「ゴール受付時間までに間に合うだろうか」
そのうち一人が、スマホを取り出しレーダーの雨雲移動情報を調べて計算した。
「吾々はここまで平均時速6kmでコースの半分近くに来てる。この様子だと雨雲も移動してるからもう少しここで雨宿りしていてもゴール受付終了まで充分間に合う」
大気の情報収集、計器読み取りも一般人がここまでできる時代になった。が、大気までは操作できないし、正確な情報収集と伝達にも限度がある。
こういう千人規模以上の大会は直前までにあらゆる気象情報、前線、台風、落雷、竜巻など事前に把握しているはずだし、ある程度幅があるにしても最悪の状態でなければこれまでの例からもほぼ予定通り実施されている。
ただ最近は予測が難しい雨雲の停滞や、連続する線状降水帯で河川の氾濫や冠水、洪水であったりとか、3.11クラスの直下型大地震で想定外の事案が勃発したらどうするか。
参加ウオーカーもただ楽しく歩くだけでなく、万が一のことがあったとしてもどこか頭の片隅に、連繋手順をシミュレートしておいた方が、狼狽しなくてより安全でスマートな行動が執れるのではなかろうか。
まず最初は当日の大会ホームページと気象情報を見て異常がなければ会場に行き、受付で参加者に手渡されるマップに目を通す。
そして万が一、著しい天変地異に遭遇したとか、個人で状況判断不能な状態に遭遇した時は、マップに記載されている電話番号に緊急時のみかける方法もあるが、多分混線錯綜は免れないであろうから、しばらく待つか携帯で家族知人の安否確認と大会の今後の状況などもPCから入手してもらい、安全が確認されたら続行するのか、或いは救援救助協力にまわるのか、連絡が着くまで待機なのか、TPOにそった臨機応変態勢が求められるでしょう。
大会本部にしたらゴール未着の参加者安否は気がかりだし、全員に迅速な連絡ができるかどうかがカギだろう。また一つには東京オリパラ2020を無事に成功するための訓練や経験ともとれよう。
ただ、こういう時たまたま独りで歩いていて周りに人影はないし、まして猫の子一匹いない。
しかも携帯端末は持ってきてない。近辺にコンビニも見当たらない。腹は減る、気力は衰える。
……さて、どうしたらいいのか。
いやいやご心配召されるな。それが、今回はあったのである。実は強~い味方が全参加者を擁護、援護しているのであった。
……然しそれは今はナイショ。あとで。
さてそうこうするうちに雨上る。
スコール(大雨)で一刻中断したが時間内にゴールすべく麻布十番からウオーキング続行。そして赤羽橋を一路北上。芝公園~増上寺。
見上げる333mの東京タワーがでかい。
愛宕神社といえば桜田門外の変で水戸、薩摩脱藩の刺客たちが集結し1キロ一寸先の桜田門外に待ち伏せて井伊大老を襲撃したという歴史事実を思うと20分で行ける距離だ。
西新橋~西幸門前~日比谷公園~日比谷へと続く途上、日比谷公園の一画、裸電球の下で賑やかに披露宴をやっているグループなのか華やいだ嬌声が聞こえて来てた。
この辺は丸の内なのか。気をつけて目を凝らして歩いていないと帝劇だか日生劇場だかおんなじように思えてしまう。そして大手町を右折。そこから1km弱を日本橋まで東進。
この往還、おしゃべりに夢中になって景色など観たのかどうかも定かでないまま、室町三丁目~神田橋北口~須田町~昌平橋へと至るのだがその途中だったように思う。
足を並べながら「奥さんは剣道、私はウオーキング」という若いご主人が、「ここを右へ行けばアキバ(秋葉原)」とその指差す方向と言葉には、なにやら華やかなAKBとか甘美な夢のニュアンスが込められていたのを私は見逃さなかった。
またジョギングやマラソンを長年やっていた方の集団で、足の故障から今回ウオーキングに参加された方のお一人に歩きながらお話をうかがってみると
「何のためにウオーキングするかって?」
「そりゃーあんた呑むために歩くに決まってるでしょう」と豪快なコメントでした。
えっ、昼間から呑むんですか?と聞いたら
「実はゴールしたらもう宴会する店は見つけてある」と仰言ってたが、どうやらこちらの方々にとってはウオーキングはオカズのようです。メインは呑むことのようです。
ま、なんにせよ心身の新陳代謝でどの目的もいずれは「健康」に結び付き、それを生甲斐にするツール(手段)としての健康法があっていいと私は思う。
それは私たちのDNAに江戸時代以前も吾々の先祖は歩いていたという蓄積遺伝子を呼び覚ます原初療法による健康法でもあるからだ。
さて、見知らぬ方々と歩きながらウォーキングという共通の話題で愉しく話しているうちに湯島聖堂の裏手に差し掛かった。
目の前には突然、大きな結界である大鳥居が見えてきた。ゼッケンをつけたウオーカーらが続々そこへ吸い込まれていく。
ここからは神域である伝統の神田明神。と同時に大会完歩を確定するゴールでもある。
ゼッケンのバーコードを読み取ってもらい、本殿参拝の後、神社ならではの電動獅子舞おみくじをひいたら中吉。
20kmアッという間、でもなかったがいろいろ知らない人々との交流、歓談もあってウオーキングならではのアンダンテ(歩く速度)だから話せる出会いを愉しめた。
しかも、この軽速歩(10分で1km/h)が人間の健康にはいいという。
そしてタニタの歩数計を取り出してみると、28,000歩を越えている。
また14,000歩以上が健康にいいという学説もあるが、それは個人差があってもいいのではないだろうか。
歩いて汗をかいて新陳代謝をする。リフレッシュされることにかわりはない。
いずれにせよ10kmで14,000歩、時間にすると2時間弱も歩けば充分ではなかろうか。
途中雨、そしてスコールでどうなるかとハラハラどきどきでしたが、どうやらスタート時に戴いたこれのおかげで、無事ゴールでき、20km完歩できました。
その前述の心強いお守りとはこれでした。マップと共に袋に入っていた「歩者国寶」。
「歩者国寶」の意味は「歩く者これ国の宝である」という。
たかが4.5cmのバイオ樹脂製だが、いわゆる「ワラにもすがる思い」とか「イワシの頭も信心から」とかいわれるように信心するコア(核)となる五感で信じられるモノがあったのでこの20kmも楽に歩けたのだと思う。
これは神田明神さんで戴いたこのお守りが道中の無事を見守ってくれていたから、途中スコールにあっても着々と歩を進められた。とも、また明神様が戯れに少し雨でも降らしてどうするか試してやれと見物していたのかも知れません。
そして道中、親切な人、愉しい人、夢多い人などと会話でき楽しいウオーキングにディレクションしていただいたのは、神田明神さんのおかげですが、9月2日、くつの日で靴の買い替えを勧めるために雨を降らせたとしたら、これは商売繁盛の神様ということになる。
いや、いや、体験実話ながらここまでお読みいただきありがとうございました。
表題の「人はなんで20kmも歩くのか?」
・・・・・・それはここまで読んでくださったみなさんのお気持ちと同じではないでしょうか。修行とか自己鍛錬の意味もあるでしょうし、また達成感もあります。
メンタルと足腰のトレーニングは自身の「甘えの構造」から脱却する大人のためのストイックな美学であり、生活習慣病の予防になりはしませんか? 20km完歩した、そして、ここまで読んだ自信と体力が……。
はい、みなさんお疲れ様でした。



