私たちは本当に好き同士になった。

どの恋人同士もそう思うものかも

しれないが、

自分たちほど好き同士なカップルは

いないと本気でそう信じていた。

 

 

 

だが、いざ付き合い始めると、

Iは人が変わったようにヤキモチ妬きに

なり、私を束縛した。

 

「あかん」

「やめろ」

「行くな」

 

私が友人たちと何かしようとすると

必ずIはそう言い、

そして私たちはその度に喧嘩になった。

実際、あまりにもIがしつこく怒るので、

私は友人たちとの旅行をドタキャンした

こともある。

 

アルバイト先に電話をかけてきて

上の人に失礼なことを言ったり、

ズケズケと乗り込んでくることもあった。

そこで私が楽しそうに笑顔で話していたり

すると、待ち伏せしていてものすごく

怒った。

 

 

 

大学4年生になる前の春休み、

私は友人とイギリスに行くことにした。

1カ月と2週間の旅。

ちょうどゼミの先生が学会でロンドンに

行くことになり、

それにいっしょに付いて行くことにしたのだ。

当然Iは怒りまくった。

 

「アホな学校のくせに、

 何が学会や」と侮辱した。

 

(今思い出しても腹が立つが、

 Iは事ある度に私のことを

 アホやなぁとバカにした)

 

 

とは言え、 

私はこれだけは譲らなかった。

イギリスの田舎町への旅は

とても魅力的に思えた。

実際立ち寄った小さな街では、

当時は私たちが初めての日本人だった。

行く先々でレモネードを飲み、

フィッシュアンドチップスを食べる。

夜にはその小さなホテルのラウンジで

ビリヤードをする日々。

そんなとても地味な旅だったが、

一生心に残る思い出深い旅だった。

 

 

旅の終わりに、パリ、ローマ、ミラノと

立ち寄り、

私は当時ブランドに興味を持ち出していた

Iのために、ローマでジャンニヴェルサーチの

ニットをお土産に買った。

私にはとても高い買い物だった。

(今ならとても買えない)

 

 

帰国後、さぞ喜んでくれるだろうと思って

渡すと、

「これで浮気がチャラになると思っとんか」と

言ったのでさすがにその時は怒った。

浮気などしていないし、するわけない。

 

「いらないなら返して」と言うと、

「ごめんごめん」と受け取ったI。

(こういうところ、だ)

 

 

当然のことながら

私の旅の話を興味深げに聞くこともなく、

何かと言えば、

Iはケチをつけるようなことばかりを

言った。

 

 

このままIと別れてもいいと思った

ぐらいだった。

 

思えば当時のIは全くの一匹狼。

大学にも行かず本ばかり読み、

授業が終わった私とデート。

人間関係において成長など

とてもできない環境に自らの身を

置いていた。

 

Iの嫉妬心と束縛は 、

 

自分を取り巻く環境やら人間関係に対して

無駄に斜に構え、

大抵の人が謳歌しているキャンパスライフに

入って行けないことでの

(当の本人は入って行きたくもないと

 思っていただろうが)

まさにコンプレックスの裏返しだったと

言える。

 

 

とは言え当時の私は、

それも嬉しいことだと自分に言い聞かせる

ようなところがあった。

これほど自分のことを好きでいてくれる人は

後にも先にももう現れないとまで思い、

(この時に戻って私は自分のほっぺを

 ひっぱたたきたいが)

結局は別れる決断などできなかったのだ。

 

 

 

Iがいれば安心。

それは私だけでなく、

私の両親にしても、

(Iのことはそれほど気に入っては

なかったが)とりあえず安心と思っていた

ようだ。

 

 

そんなこんなで、

「もう限界や」というIの要望で、

私は大学4年生の時に早々とIと

婚約したのだった。

 

 

これが落とし穴だった。

 

・・・・・・・・