慢性倦怠のおばあちゃん(後半)
慢性倦怠のおばあちゃん(前半)の続き。
入院4日目頃
エビリファイ 3mg
ウブレチド 10mg
チラージンS 50μ
ドグマチール 50mg
メイラックス 1mg
ディオバン 80mg
ツムラ7 7.5(八味地黄丸)
他、ビタミンB12を点滴
こんな風に変更を進めたが、そこまで大きな改善はなかった。しかし、8日目頃には少し落ち着かぬ感じは減ってきたという。その頃から胴回りがキリキリと痛むというような謎の症状も出てきているので、エビリファイを1.5mgと減量しテシプールを追加している。この症状だが、元々この患者さんには意味不明の疼痛がみられていた。しかしこの胴回りの疼痛は具体的だし、薬物離脱性色彩が強いように思える。それでもドグマチールは中止する。これを中止しないと話が進まない。エビリファイは心因痛に有効なことがあるが、この人はそうではないんだね、と思った。
入院10日目
エビリファイ 1.5mg
ウブレチド 5mg
チラージンS 50μ
メイラックス 1mg
ディオバン 80mg
メチコバール 1500μ
ツムラ7 7.5
テシプール 1mg
その後も疼痛が改善しない上、表情も暗く焦燥感も続いていた。テシプールはあまり副作用もなく、2mgまで増量している。エビリファイはこの人には悪いように思われたので中止。こんな風だと、エビリファイのようなタイプの薬物は中止してみないとワケがわからんでしょ。
入院2週間目頃、彼女はしきりに変な夢を見ると訴えていた。お寺の夢らしい。夢の中で目が覚めると、そこはお寺なのだという。お寺の夢を何度か見ているうちに次第に胴回りの疼痛が減少してきた。また、めまい、吐き気などのはっきりしない自律神経症状も少しずつ減ってきた。(とはいえ、すごく減少したわけではない)
16日目
テシプール 2mg
ウブレチド 5mg
チラージンS 50μ
メイラックス 1mg
ディオバン 80mg
メチコバール 1500μ
ツムラ7 7.5
動作がスムーズになってきており、抗精神病薬を中止した甲斐があると言えた。また不思議なことに、入院当初は全然効果がなかったバッチフラワーにいくらか効果がみられるようになった。彼女によれば、レスキューレメディを飲むと、動悸が減少し気分が落ち着くという。彼女は入院当初は全く効果がなかったのである。僕は同様な現象を他の患者さんでも経験している。
ところが、彼女は夜になるととにかく落ち着かなくなるのである。夜はレスキューレメディが効かなくなる。夜にとりわけ悪いのは、まるでせん妄のように見えるが、これが何であるかは僕はあまり問題にしていない。こういう人は普通のうつ病でも多くいる。僕は副作用が増えると思ったが、夜にテトラミド20mgを追加してみた。便通がどうしても良くないので、この機会にツムラ7からツムラ60(桂枝加芍薬湯)に変更。ツムラ60は下痢にも便秘にも効果があり、彼女のように便秘なのに下痢もしやすい人には合っている。また、漢方はできれば1剤、やむを得ない時は2剤まで使うが、これは本人が何種類もあると飲みにくいことに加え、一部の薬草がかぶることやレセプト対策もある。
23日目
テシプール 2mg
テトラミド 20mg
ウブレチド 5mg
チラージンS 50μ
メイラックス 1mg
ディオバン 80mg
ツムラ60 7.5(桂枝加芍薬湯)
アモバン 7.5mg
夜になると本人の苦痛は大変なもので、右を下にして眠れないという。また食欲がなく排尿も悪い。疼痛に対してはノイロトロピンを追加してみた。僕は彼女の場合、テシプールはそこまでフィットしていないと感じ始めていて、テトラミド30mgを主体にした。基本的にテトラミド30mgなんてゴミみたいなものだ。この量のテトラミドは信用できない。自分で使っていて良く言うよ、という感じだが。
このテトラミドは、いずれは中止するような量なのである。ゴミくらいなのに副作用はしっかり出るのが辛い所だが、こういう試行錯誤はやはりこのような人の治療には必要なのだと思う。この人はもう15年以上も苦しんでいるのである。言っていることが何が何やらわからない人も多いと思うが、ずっとこのブログを読んでいる人には僕の思いがわかる人もいるだろう。夜間の不眠に対しツムラ54(抑肝散)を追加する。食欲不振にはペリアクチンシロップを15ml追加することにした。
入院1ヶ月で本人の苦痛は軽減してきたが、たいして変わっていないといえばそうとも言えた。以前よりよく眠れるようになり、食欲は少し改善していた。食欲はペリアクチンシロップを入れると入れないではずいぶん違いがあった(参考)。しかし薬物的にはいったい何が合うのかまだわからなかった。とりあえず、メジャートランキライザーを中止し、一息ついたところである。僕はこの頃から、彼女は何も合わないような気がし始めていた。普通、1ヶ月経ってもわからないなんてちょっと変でしょ。
30日目
テトラミド 30mg
ノイロトロピン 12単位
ウブレチド 5mg
チラージンS 50μ
メイラックス 1mg
ディオバン 80mg
ツムラ60 7.5(桂枝加芍薬湯)
ツムラ54 7.5(抑肝散)
アモバン 7.5mg
他、ペリアクチンシロップ15ml
「こういう人はリーマスが良いかもしれない」と当時のカルテに書いている。常識的にはこういう年齢の人には相当に処方し辛い。腎機能が加齢により低下しているからである。こういう病態に使ってみたいのはデプロメールであった。老人で抑うつ、心因痛があるからである。しかし、吐き気が出やすく食事があまり摂れない状況ではこれもやはり処方し辛い。
だいたい、ペリアクチンシロップは食欲不振のために処方しているわけで、デプロメールを処方する以上、セロトニンを抑制するペリアクチンシロップを残すのは変なのである。もしペリアクチンを削除してデプロメールを処方するなら、食欲不振の面では最悪の対応とは言えた。
どうもはっきりしない疼痛が続き、それもあちこち変わっていく感じで埒があかない。そこでデプロメールを思い切って処方することにした。この人は胃が弱いのがわかっているので最初からガスモチン、ガスターを併用したが、これは僕にしては珍しい。このように長期にわたる慢性倦怠の人はかつてはともかく、今は虚証になっているのである(参考)。こういう人にはデプロメールは強烈である。追加の際にテトラミド、ペリアクチンシロップ、ノイロトロピンは中止。彼女のようなケースでは加味逍遙散も一考だが、この人には無理だと思った。
デプロメール 50mg
ガスモチン 10mg
ウブレチド 5mg
チラージンS 50μ
メイラックス 1mg
ディオバン 80mg
ツムラ60 7.5
ツムラ54 7.5
アモバン 7.5mg
ガスター 20mg
ところが、デプロメールは吐き気を始め大変な副作用だったのである。まあ予想通りの結果とはいえた。デプロメールを処方するちょっと前くらいから、表情などを見る限りはけっこう良さそうなのだが、本人は随分悪いという。本人の実感が良くないのであろう。家族が面会に来た時、「おかあさん良くなったね」と言われるが、自分は全然良くなっていないと言い張る。
入院40日頃、どうも全体がまとまらないので、リーマス200mgを突然追加することにした。痛みは全般には減少していたが、むかつきが相当に酷い。またデプロメールによる煽りみたいなソワソワ感がみられ増量できそうになかった。
50日目頃
デプロメール 50mg
リーマス 400mg
ガスモチン 10mg
チラージンS 50μ
メイラックス 1mg
ディオバン 80mg
ツムラ60 7.5
ツムラ54 7.5
アモバン 7.5mg
ガスター 20mg
その後リーマスを400mgまで増量している。上部消化管のはっきりしない愁訴がとれないので、タケプロンOD錠を追加している。こういうタイプの高齢の女性患者さんは、タケプロンあるいはオメプラゾンを追加するパターンになりやすい(参考)。僕はデプロメールに見切りをつけつつあった。身体的愁訴は改善しそうになかったし、増量もできないなら思うように治療が進まない。デプロメールは52日目に中止している。ついでにツムラ54も中止。
デプロメール中止後の処方は、抗うつ剤が使われておらず、リーマスが主剤の治療と言えた。彼女はデプロメールを中止して以降、かなり自覚症状が改善したという。58日目頃、僕は彼女の背が以前より丸くなっていると感じたので、リーマスをすべて中止している。こういう処方変更はレビー小体病治療の感覚だと思う。(参考)
60日目
チラージンS 50μ
メイラックス 1mg
ディオバン 80mg
ツムラ60 7.5
アモバン 7.5mg
タケプロンOD 15mg
この日、カルテには「リボトリールが良いかもしれない」と書いている。いい加減、入院2ヶ月目でこれだと、自分が自分に呆れるような感じであった。未だにあれこれ試行錯誤しているだけだ。
67日目頃
チラージンS 50μ
リボトリール 0.5mg
メイラックス 1mg
ディオバン 80mg
ツムラ60 7.5
アモバン 7.5mg
タケプロンOD 15mg
リボトリールを追加後、明らかに病状が好転し始めた。急に視界が開けて来たのである。上の処方は量は少ないが、リボトリールによる治療に他ならない。この処方のまましばらく診ていると、彼女は体がかなり楽になり、食事も全量摂れるようになった。表情も苦しい印象はまるでなくなっていた。いつもニコニコしているような感じになり、本当にリラックスしているように見える。
このような経過をみると、入院当時の精神症状は抗精神病薬による遷延性のジスキネジア、悪性症候群モドキの部分が相当に大きかったように思える。リボトリールはそのような症状に有効というのももちろんあるが、抗精神病薬はとっくに中止しているわけで、局面変化のきっかけ待ちみたいな病態だったのかもしれない。そのピリオドを打つなんらかの方法が必要だったのだろう。彼女の経過は、いったんずいぶん悪くなってから急回復しているように見えるが、これは僕の患者さんの良くなる人の典型的なパターンである。(参考:悪化と寛解・治癒の謎)
あの悪化はひょっとしたら、ある種の好転反応なのかもしれない。(瞑眩現象)
この改善の後、不思議なことが起こった。時々ヒステリー球が出現するようになったのである。これは女性に多いが、男性でも出ないわけではない。いわゆる喉に球のようなものがつまった感覚である。これは以前、スターオブベツレヘムを使った患者さんでも全く同じような経過だったので、たぶん、このような人たちの治癒への道すじに、この「ヒステリー球」というアイテムが置いてあるのであろう。
この所見こそ、全般がクラスダウンしたことを暗示していた。彼女は精神病状態から神経症レベルまで降りてきたのである。
このヒステリー球に対しレスキューレメディーを使うと、まさに凄い切れであった。この機会にチラージンSは中止している。僕は患者さんは、よくわからない理由でこのようにクラスダウンの経過になることがある。以下の患者さんもそうである。(3人目の女性患者、スターオブベツレヘムの人)
約3ヶ月目のカルテから
レスキューレメディーを飲むと喉のつまりが良くなります。1日に1~2回くらい使います。今は具合がずっと良い。体のきつさは今は全くない。痛みもすっかり良いです。今は昼間も眠さはないです。目は以前よりぱっちりと開いているように見える。血圧も正常化しディオバンを中止する。
降圧剤が必要なくなったのは、体の緊張感がなくなったためと思われる。これは東洋医学的な考え方だが、ヒトの体は副交感神経優位になると、いろいろな病気が良くなるのである。血圧が下がってきたことこそ、それを示していると思う。
入院4ヶ月目
リボトリール 0.5mg
メイラックス 1mg
ツムラ60 7.5
アモバン 7.5mg
タケプロンOD 15mg
(他レスキューレメディー)
まだ入院中であるが、今は外泊などを実施し退院に向けて準備中である。病状的にはもういつ退院しても大丈夫な感じだ。本人はあと2ヶ月ほどおいてほしいという。スターオブベツレヘムの人は約1年くらい入院していたのだが、この人は4ヶ月でほぼ寛解なので、今回はあわただしかったけど、よりうまくいったのだと思う。
結局、今回も良くわからない経過を辿り、ほぼ治癒に近い結果になったのであった。
(おわり)
入院4日目頃
エビリファイ 3mg
ウブレチド 10mg
チラージンS 50μ
ドグマチール 50mg
メイラックス 1mg
ディオバン 80mg
ツムラ7 7.5(八味地黄丸)
他、ビタミンB12を点滴
こんな風に変更を進めたが、そこまで大きな改善はなかった。しかし、8日目頃には少し落ち着かぬ感じは減ってきたという。その頃から胴回りがキリキリと痛むというような謎の症状も出てきているので、エビリファイを1.5mgと減量しテシプールを追加している。この症状だが、元々この患者さんには意味不明の疼痛がみられていた。しかしこの胴回りの疼痛は具体的だし、薬物離脱性色彩が強いように思える。それでもドグマチールは中止する。これを中止しないと話が進まない。エビリファイは心因痛に有効なことがあるが、この人はそうではないんだね、と思った。
入院10日目
エビリファイ 1.5mg
ウブレチド 5mg
チラージンS 50μ
メイラックス 1mg
ディオバン 80mg
メチコバール 1500μ
ツムラ7 7.5
テシプール 1mg
その後も疼痛が改善しない上、表情も暗く焦燥感も続いていた。テシプールはあまり副作用もなく、2mgまで増量している。エビリファイはこの人には悪いように思われたので中止。こんな風だと、エビリファイのようなタイプの薬物は中止してみないとワケがわからんでしょ。
入院2週間目頃、彼女はしきりに変な夢を見ると訴えていた。お寺の夢らしい。夢の中で目が覚めると、そこはお寺なのだという。お寺の夢を何度か見ているうちに次第に胴回りの疼痛が減少してきた。また、めまい、吐き気などのはっきりしない自律神経症状も少しずつ減ってきた。(とはいえ、すごく減少したわけではない)
16日目
テシプール 2mg
ウブレチド 5mg
チラージンS 50μ
メイラックス 1mg
ディオバン 80mg
メチコバール 1500μ
ツムラ7 7.5
動作がスムーズになってきており、抗精神病薬を中止した甲斐があると言えた。また不思議なことに、入院当初は全然効果がなかったバッチフラワーにいくらか効果がみられるようになった。彼女によれば、レスキューレメディを飲むと、動悸が減少し気分が落ち着くという。彼女は入院当初は全く効果がなかったのである。僕は同様な現象を他の患者さんでも経験している。
ところが、彼女は夜になるととにかく落ち着かなくなるのである。夜はレスキューレメディが効かなくなる。夜にとりわけ悪いのは、まるでせん妄のように見えるが、これが何であるかは僕はあまり問題にしていない。こういう人は普通のうつ病でも多くいる。僕は副作用が増えると思ったが、夜にテトラミド20mgを追加してみた。便通がどうしても良くないので、この機会にツムラ7からツムラ60(桂枝加芍薬湯)に変更。ツムラ60は下痢にも便秘にも効果があり、彼女のように便秘なのに下痢もしやすい人には合っている。また、漢方はできれば1剤、やむを得ない時は2剤まで使うが、これは本人が何種類もあると飲みにくいことに加え、一部の薬草がかぶることやレセプト対策もある。
23日目
テシプール 2mg
テトラミド 20mg
ウブレチド 5mg
チラージンS 50μ
メイラックス 1mg
ディオバン 80mg
ツムラ60 7.5(桂枝加芍薬湯)
アモバン 7.5mg
夜になると本人の苦痛は大変なもので、右を下にして眠れないという。また食欲がなく排尿も悪い。疼痛に対してはノイロトロピンを追加してみた。僕は彼女の場合、テシプールはそこまでフィットしていないと感じ始めていて、テトラミド30mgを主体にした。基本的にテトラミド30mgなんてゴミみたいなものだ。この量のテトラミドは信用できない。自分で使っていて良く言うよ、という感じだが。
このテトラミドは、いずれは中止するような量なのである。ゴミくらいなのに副作用はしっかり出るのが辛い所だが、こういう試行錯誤はやはりこのような人の治療には必要なのだと思う。この人はもう15年以上も苦しんでいるのである。言っていることが何が何やらわからない人も多いと思うが、ずっとこのブログを読んでいる人には僕の思いがわかる人もいるだろう。夜間の不眠に対しツムラ54(抑肝散)を追加する。食欲不振にはペリアクチンシロップを15ml追加することにした。
入院1ヶ月で本人の苦痛は軽減してきたが、たいして変わっていないといえばそうとも言えた。以前よりよく眠れるようになり、食欲は少し改善していた。食欲はペリアクチンシロップを入れると入れないではずいぶん違いがあった(参考)。しかし薬物的にはいったい何が合うのかまだわからなかった。とりあえず、メジャートランキライザーを中止し、一息ついたところである。僕はこの頃から、彼女は何も合わないような気がし始めていた。普通、1ヶ月経ってもわからないなんてちょっと変でしょ。
30日目
テトラミド 30mg
ノイロトロピン 12単位
ウブレチド 5mg
チラージンS 50μ
メイラックス 1mg
ディオバン 80mg
ツムラ60 7.5(桂枝加芍薬湯)
ツムラ54 7.5(抑肝散)
アモバン 7.5mg
他、ペリアクチンシロップ15ml
「こういう人はリーマスが良いかもしれない」と当時のカルテに書いている。常識的にはこういう年齢の人には相当に処方し辛い。腎機能が加齢により低下しているからである。こういう病態に使ってみたいのはデプロメールであった。老人で抑うつ、心因痛があるからである。しかし、吐き気が出やすく食事があまり摂れない状況ではこれもやはり処方し辛い。
だいたい、ペリアクチンシロップは食欲不振のために処方しているわけで、デプロメールを処方する以上、セロトニンを抑制するペリアクチンシロップを残すのは変なのである。もしペリアクチンを削除してデプロメールを処方するなら、食欲不振の面では最悪の対応とは言えた。
どうもはっきりしない疼痛が続き、それもあちこち変わっていく感じで埒があかない。そこでデプロメールを思い切って処方することにした。この人は胃が弱いのがわかっているので最初からガスモチン、ガスターを併用したが、これは僕にしては珍しい。このように長期にわたる慢性倦怠の人はかつてはともかく、今は虚証になっているのである(参考)。こういう人にはデプロメールは強烈である。追加の際にテトラミド、ペリアクチンシロップ、ノイロトロピンは中止。彼女のようなケースでは加味逍遙散も一考だが、この人には無理だと思った。
デプロメール 50mg
ガスモチン 10mg
ウブレチド 5mg
チラージンS 50μ
メイラックス 1mg
ディオバン 80mg
ツムラ60 7.5
ツムラ54 7.5
アモバン 7.5mg
ガスター 20mg
ところが、デプロメールは吐き気を始め大変な副作用だったのである。まあ予想通りの結果とはいえた。デプロメールを処方するちょっと前くらいから、表情などを見る限りはけっこう良さそうなのだが、本人は随分悪いという。本人の実感が良くないのであろう。家族が面会に来た時、「おかあさん良くなったね」と言われるが、自分は全然良くなっていないと言い張る。
入院40日頃、どうも全体がまとまらないので、リーマス200mgを突然追加することにした。痛みは全般には減少していたが、むかつきが相当に酷い。またデプロメールによる煽りみたいなソワソワ感がみられ増量できそうになかった。
50日目頃
デプロメール 50mg
リーマス 400mg
ガスモチン 10mg
チラージンS 50μ
メイラックス 1mg
ディオバン 80mg
ツムラ60 7.5
ツムラ54 7.5
アモバン 7.5mg
ガスター 20mg
その後リーマスを400mgまで増量している。上部消化管のはっきりしない愁訴がとれないので、タケプロンOD錠を追加している。こういうタイプの高齢の女性患者さんは、タケプロンあるいはオメプラゾンを追加するパターンになりやすい(参考)。僕はデプロメールに見切りをつけつつあった。身体的愁訴は改善しそうになかったし、増量もできないなら思うように治療が進まない。デプロメールは52日目に中止している。ついでにツムラ54も中止。
デプロメール中止後の処方は、抗うつ剤が使われておらず、リーマスが主剤の治療と言えた。彼女はデプロメールを中止して以降、かなり自覚症状が改善したという。58日目頃、僕は彼女の背が以前より丸くなっていると感じたので、リーマスをすべて中止している。こういう処方変更はレビー小体病治療の感覚だと思う。(参考)
60日目
チラージンS 50μ
メイラックス 1mg
ディオバン 80mg
ツムラ60 7.5
アモバン 7.5mg
タケプロンOD 15mg
この日、カルテには「リボトリールが良いかもしれない」と書いている。いい加減、入院2ヶ月目でこれだと、自分が自分に呆れるような感じであった。未だにあれこれ試行錯誤しているだけだ。
67日目頃
チラージンS 50μ
リボトリール 0.5mg
メイラックス 1mg
ディオバン 80mg
ツムラ60 7.5
アモバン 7.5mg
タケプロンOD 15mg
リボトリールを追加後、明らかに病状が好転し始めた。急に視界が開けて来たのである。上の処方は量は少ないが、リボトリールによる治療に他ならない。この処方のまましばらく診ていると、彼女は体がかなり楽になり、食事も全量摂れるようになった。表情も苦しい印象はまるでなくなっていた。いつもニコニコしているような感じになり、本当にリラックスしているように見える。
このような経過をみると、入院当時の精神症状は抗精神病薬による遷延性のジスキネジア、悪性症候群モドキの部分が相当に大きかったように思える。リボトリールはそのような症状に有効というのももちろんあるが、抗精神病薬はとっくに中止しているわけで、局面変化のきっかけ待ちみたいな病態だったのかもしれない。そのピリオドを打つなんらかの方法が必要だったのだろう。彼女の経過は、いったんずいぶん悪くなってから急回復しているように見えるが、これは僕の患者さんの良くなる人の典型的なパターンである。(参考:悪化と寛解・治癒の謎)
あの悪化はひょっとしたら、ある種の好転反応なのかもしれない。(瞑眩現象)
この改善の後、不思議なことが起こった。時々ヒステリー球が出現するようになったのである。これは女性に多いが、男性でも出ないわけではない。いわゆる喉に球のようなものがつまった感覚である。これは以前、スターオブベツレヘムを使った患者さんでも全く同じような経過だったので、たぶん、このような人たちの治癒への道すじに、この「ヒステリー球」というアイテムが置いてあるのであろう。
この所見こそ、全般がクラスダウンしたことを暗示していた。彼女は精神病状態から神経症レベルまで降りてきたのである。
このヒステリー球に対しレスキューレメディーを使うと、まさに凄い切れであった。この機会にチラージンSは中止している。僕は患者さんは、よくわからない理由でこのようにクラスダウンの経過になることがある。以下の患者さんもそうである。(3人目の女性患者、スターオブベツレヘムの人)
約3ヶ月目のカルテから
レスキューレメディーを飲むと喉のつまりが良くなります。1日に1~2回くらい使います。今は具合がずっと良い。体のきつさは今は全くない。痛みもすっかり良いです。今は昼間も眠さはないです。目は以前よりぱっちりと開いているように見える。血圧も正常化しディオバンを中止する。
降圧剤が必要なくなったのは、体の緊張感がなくなったためと思われる。これは東洋医学的な考え方だが、ヒトの体は副交感神経優位になると、いろいろな病気が良くなるのである。血圧が下がってきたことこそ、それを示していると思う。
入院4ヶ月目
リボトリール 0.5mg
メイラックス 1mg
ツムラ60 7.5
アモバン 7.5mg
タケプロンOD 15mg
(他レスキューレメディー)
まだ入院中であるが、今は外泊などを実施し退院に向けて準備中である。病状的にはもういつ退院しても大丈夫な感じだ。本人はあと2ヶ月ほどおいてほしいという。スターオブベツレヘムの人は約1年くらい入院していたのだが、この人は4ヶ月でほぼ寛解なので、今回はあわただしかったけど、よりうまくいったのだと思う。
結局、今回も良くわからない経過を辿り、ほぼ治癒に近い結果になったのであった。
(おわり)