少し前に母から借りて読み
この日に紹介しようと思っていた本。
昨年ノーベル文学賞を受賞した
ベラルーシの作家、スベトラーナ・アレクシエービッチによる
ドキュメンタリー。
チェルノブイリの原発事故のことは
当時テレビで見た記憶はあり
「通販生活」で時々特集組んでいるのも知ってる。
重大な事故というのはわかっているけど、
すーっと流れていってしまうというか。
そんな感じだったので、ノーベル賞のニュースの時も
ニュースを見た程度で過ぎてしまっていたけれど、
今年に入り、母に強力に薦められて手に取ったら
想像をはるかに超えていた。
この本は、聞き手である作者の考えなどは一切出てこず
原発事故に遭遇してしまった人の声で全編がつづられている。
汚染された地域にとどまりつづける年老いた女性、
放射線にいいからと、ウオッカをあおりながら事故処理作業に従事する人、
民族紛争の混乱の中で故郷を追われ、チェルノブイリにたどりついた若者、
残されたペットや野生動物を殺すことを命じられた猟師、
障害を持って生まれてきた子どもたち、
原発の事故を、最初は何もわからず「きれいだね」と眺めていた人-
語り言葉で書かれていて、
文章としてこなれていないものもある。
だから余計に、彼ら彼女らが何を感じていたか、
思いが―悲しみが、慟哭が、諦念が、
静かにずん、と伝わってくる。
なかでも圧巻なのは、冒頭に登場する、
事故現場にすぐ駆けつけて消火にあたったため被爆し亡くなった
消防士の妻の話。
結婚したばかりで、急な仕事に出かけて行った愛する夫が
惨たらしく変わり果てて、「高濃度に汚染された放射性物体」になってしまった。
でも、ひととおり話した妻は
これはわたしたちの愛の物語、という。
…言葉も出ない。
これだけの言葉を引き出せた、
彼ら彼女らの思いを受け止めた、
時には罵倒されたこともあっただろう―
筆者の力を思い知る。
歴史の表には出てこない、普通の人たちの営み、思い、
でもこれこそが歴史をつくっているのだと感じさせられる。
まとめも答えも、もちろんない。
読んだ後は、読者にゆだねられている。
「難しいし、よくわからない」と引いちゃうのではなく
「終わっていない」ということを知ること、
自分にもできることを考え続けること。
なんでもかんでもできるわけじゃなくても
できることは、何かはあるはず。
そして、自分が自分を精いっぱい生ききることもそうだと思う。
翻訳のわりに文体は読みやすいのだけど
内容はかなり重いので、調子悪い時は読めないかも。
わたしも休み休み、結構時間かかりました。
一読の価値あると思います。
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