2010年、私は東京で働いていて、
いつもの日常にあたらしい風がほしくて、
いつも何かを探していた。

そんな時見つけた、美術館でのボランティアスタッフのおしごと。

2010年の秋、私は引き寄せられるままに
「ひとはなぜ絵を描くのか?」 by 日比野克彦@アーツ千代田3331
のボランティアスタッフになっていた。

そして、日比野さんが社主を務める明後日新聞社が発行している
「明後日新聞」に寄稿したいくつかの記事。

せっかくなので、ブログにまとめることにした。
加筆修正なしの2010年のわたしが書いた記事。

記事を読むと、あの時に戻る。
空間、音、声、一緒にいた人、出会った人。
目に焼き付いたこと。

たいせつなたからもの。
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【毛糸で紡ぐ朝顔の種。「ハイフン」】

朝顔の種は社主日比野にとって、とても大切なモチーフの一つである。
アーツ千代田3331で開催中の個展でも、それをモチーフにした作品はいくつかあるが、今回は「ハイフン」という作品を紹介したい。

この「ハイフン」という作品は、社主日比野により2003年からスタートした明後日朝顔ArtProjectの一環で、「朝顔をモチーフに作品を作ろう」というコンセプトのもと行われている、鑑賞者を巻き込んだワークショップである。

二人が半透明の板を挟んで座り、板に空いている穴に毛糸を通し、朝顔の種を紡いでいく。向こうに相手が居るのは分かっていても、板が半透明な故、感じられるのはその気配のみ。相手の様子を窺いながら毛糸が通されるのを待ち、そしてまた種を紡いでいく・・・。その繰り返しにより、この作品は彩り鮮やかな種へと変貌していく。

その様子について、社主日比野は言う。

相手のアクションを待っている状態。ここに毛糸が通されるだろうと思って、1点に視線を集中させ、待っている状態。つまり、見えない相手を信じて待っている状態。これは、朝顔の種が発芽し、成長するのを、今か今かと待っていることに似ている、と。

その思いを聞いた後、実際に「ハイフン」を紡いでいくと作品に対する愛おしさは倍増する。一見すると単純作業の繰り返しのように見えるが、実は絡まないように、ゆるまないように毛糸を紡ぐためには、お互いがフォローしながら、声をかけあいながら、つまりコミュニケーションを密に取り合いながら行う必要がある。そうして手間と思いを乗せて種を紡いでいくと、本当に生き物を育てているような感覚に陥る。手間をかけ、信じて、その成長を待つ。正しく私たちは私たちの朝顔の種を育てているのだ。

何はともあれ、いつの時代も「百聞は一見に如かず」である。実際に体験し、その感動や楽しさ、成長を待つ感覚を味わってもらうのがこの作品の醍醐味であることには変わりない。ぜひ、お試しあれ。

(記者 岩村)

※ 社主日比野の言葉は、筆者なりに理解したものを、表現し直したものです。

当時の展覧会の様子はこちらからどうぞ