っかまま唄い転びつの坂

       うたいまろびつ はるのさか

 

にぐりまんま やぎめす だまっこ おにんこ おぬぐり

おにぎり だんご にんにこ むすび おむすび 

にぎぃめし ぢっかまま にじりーめー

北海道から沖縄まで 列島おにぎり前線

唄って転んで南下中

 

も早ぅから 

浪子叔母さんの唄声が響く

ぢっかまま ぢっかまま おっとんと

火傷しそうに熱い 炊き立てご飯を

 素手にパッパと塩を振り

心意気直球ど真ん中 ぢっかぢっかと握る

ぢっかとは 「」の意

気合入るのよ 

春一番の結いっこだもの

<結いっこ(イイッコ)=繁忙期に共同で助け合う仕組み>

 

 

塩辛峠の段々茶畑に 春の敷き藁養生仕事

鷹婆を頭に 梅女菊女竹女に蘭子 気心知れた働き者 

鷹に四君子や 縁起よろしねぇ

 

<結いっこのお昼>

拳ほどの毬形ぢっかまま二つ

梅干し入りと高菜の古漬け包み

あぶり目刺し二匹に 沢庵二切れ

お茶はお代わり自由

お皿はヤツデの葉一枚 箸は自前の五本箸

愛想なしの簡素献立と見ゆるが

繁忙期の農事互助第一 なれば 返礼の多寡などの

余計な気苦労と気遣いを省く

絶妙の知恵

 

やし

なぁ くれろくれろ

先ほどから 桃太の奴 ブゥンブンと五月蠅

熱いからね 待てや と言うに

早ぅくれろ

朝から大忙しの浪子叔母さん 流石に臍の緒が切れたの

分からんちんの いやし五郎=いやしん坊

ほれ手出せや

あまりの熱さに コロリンコ

桃太の手のひら プックリコ

赤いお豆が プックリコ

 

ひだる

籠を背負って 山路を登る浪子叔母さん

少し遅れて しょんぼり桃太が続く はぁプックリコ

塩辛峠の「岐され地蔵」まで来ると 浪子叔母さん

籠から 小さなぢっかまま 二つを取り出して

 

 

なぁ桃太よ

峠越えの途中で 

餓えて倒れなさった 旅のおひとの魂が

今もこのあたり 彷徨うて居って

通るひとに 執り憑いて

食べ物くれろと 強請りやる

それが 「ひだる神」や

まぁ言うなれば 「いやし五郎」桃太の 兄さんやろね

気の毒な話や けどがねぇ

道筋にぢっかままを供えれば 悪さはなさらん

🤣😜😂

あ うぅ兄さん!

ひだる神=旅人に執り憑いて空腹感をもたらす行逢神 街道の小さな穴に潜む妖怪

ダラシ・ダル・ダリとも 日本昔話の「おむすびころりん」は

この「ひだる神」の説話が根っこにあると 思うのれす

 

 

蜂蜜ムチ

谷川の木橋渡れば もうすぐ茶畑 やがて四君子の

唄も笑い声も 聞こえようもの

先を急ぐ桃太の背中に 浪子叔母さんの剛速球

手 見せてみぃや

プックリ恥ずかし気な赤いお豆さんに

浪子叔母さん ぶっとい指を ベロリねぶると

とろぅりたっぷり 唾を塗ってやった

蜂蜜の匂いがしたの

れす

奥山の寺子屋の女師匠は 

蜂蜜とムチ 絶妙の使い手 油断ならない

のら

えぇか これが「いやし五郎」や

谷川の沿いの木を指して またもや からかうの

あんたの木やで

 

標準名は花筏(ハナイカダ) 

いやし五郎 嫁の涙とも 水辺自生の落葉灌木で若葉はてんぷらに…

 

葉っぱの手のひら 真ん中に 

嘘のよな 白い花 ひとつ咲いて 

プックリコ 青い実になりよる

秋になると 実は赤黒ぅなって 黄葉はらり

川を下って 旅に出るのや

筏流しの船頭さんよ

都へ 無事に着いたら 風流を気取って 

花筏(ハナイカダ)と 名乗りよる

ゆらりゆらりの田舎者 いやし五郎のくせしてさ

ひとたび出れば 二度と帰って来よらん

ひとも相似たりや

 

花筏には ヨメノナミダという別名もあるらし

浪子叔母さんは 知らなかったんか

麓の役場近くから 電気もない奥山に嫁に来て

旦さんは 鉄砲担いで 因果海峡を渡り 帰らず

浪子叔母さんは

春 黄砂が舞うと 悲しそうやった

 嫁の涙って名前

知っとって 黙っていた のかもしれない

ふいと 思うのれす

 

<風幡童子 只今蒟蒻筆 彩色奮闘中>

 

ひとたび 故郷を出でたれば

再び 帰るを得ず

桃花流水

何処の岸にか 芽吹かん

海に出でては

雨となり

霧となり

寂静

 

 

 
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