豆笑ふ面相筆の吐息かな

豆笑ふ=春の季語 独断専横笑止歳時記より

 

女橋 愛染橋 男橋 忍橋 出会い橋 思案橋 縁切橋

別れ橋 戻橋 送り橋 童橋 翁橋 地獄橋

チョイと一杯のつもりで ググったら

あるあるあるのね 人生橋だらけ物語

童から翁まで 男女は問わず 渡りゃんせ

思案投げ首 冥土の飛脚 地獄往来

こっちコンねぇ

橋というは げに 異界の境なり

やはり端には置けぬもの

 

ググるついでに ぐるぐる梯子酒

真ん中渡って 橋の袂の縄暖簾 イタダキマスの箸物語

腱鞘炎でも 作法は要らぬ チャンチキおけさ

足は千鳥で 跡は不知火

迷い箸 ねぶり箸 叩き箸 二人箸 振り箸

差し箸 掻き箸 寄せ箸 涙箸

箸使い無作法 咎められるは 是非もなし

敷居三尺 赤坂あたりのお座敷は イカネバの娘

シカトすれば それで済む済む

日も暮れる

が…

 

 

 腱鞘炎に面相筆の取り合わせ 

これは最悪大殺界

鑿で彫るのは こなせても 

筆さま命の 絵付けとなれば ほんに修羅場

なのれす

震え筆 迷い筆 遁走筆 転び筆 乱れ筆 ミミズ筆

たたら筆 案山子筆 暗闇筆 蒟蒻筆 

これで役者は揃うたのかぇ

困るんですのよ

描いて また消す 湖畔の便り

胸の痛みに耐えかねてぇ 二月の寒風に

如何とやせむ

わが運

うんうんと尽きたるか

ヒョイと出ましたぁ 愚痴はご法度 木屑の家の独り言

クックと何処かで 声がする

見れば 絵具箱の底に豆三つ 

さては 孫の桃太の鬼退治 節分の残党だな

なさけない爺鬼では あるがよ

豆の分際で 鬼を笑ふたぁ不届きな よっしゃ

乱れた筆跡もろともに

喰ぅやる

うぅ 微かに油絵具の味が

したのれす

 

<遥々来たよ震え筆…鉦叩き童子/像高330粍/材シナ/油彩着色>

 

 

履歴書

越後は頸城郡中ノ俣 峠の一つ家 

正一の唄う 雪錆びた追分節も聞こえる 昼下がり

とろぅりとろとろ燃える竈の前で

なぁよぉ

伊勢へ七旅 熊野へ三度…って唄にあるでな

おらだちも一生に一度は参るべや

焚き付けの豆ガラからこぼれ出た豆が

ころころ 口火を切る

おお それは良かろなぁと

藁しべ叔母さんと燃えクレ爺さんが ひょいと乗る

燃えクレ=燃え残りの小枝

お伊勢さままで幾萬千里 知らねば怖いものなし

豆と藁しべと燃えクレの三人旅

 

峠七曲り下り来て 儀明の谷川に差し掛かる

人なれば一跨ぎだが さてどうするねぇ

オラが橋になるすけ 渡ってくれろ

藁しべ叔母さん 嫋やかな腰を伸ばして 橋に化ける

燃えクレ爺さん ほうほと渡り初め

中ほどで 折からの川風に煽られて

とうに消えたはずの 燃えクレ爺さんの青春に 火が熾る

さぁ大変 藁しべ橋焼き切れて もろともにザンブと川の中

じぃぷぅじぃぷぅ 流れゆく

 

その様見て 豆は腹を抱えて 笑いに笑った

ひとの不幸は 蜜の味ですけな

笑い過ぎて 口裂けた

さぁさ今度は 自分の番ですけ

 

 

痛い痛いよぉと 泣いていたらば

天の助けか 悪魔の使者か

通りかかったは 越中富山の薬売り

ぶっとい木綿の黒糸で ザックザックと

縫うてやったの

今もお豆さんにある黒い縫い目は

その時の記念すべき傷跡

なのれす


どっとはらい

 

 

 

 

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