…生野の道はとおけれど
まだ踏みもみず天の橋立
百人一首でお馴染みの 小式部内侍さんの歌
このひと 和泉式部さんの娘で 歌詠みの才媛と 誉れ高きひと
まぁ文字どおり 血は争えぬものらし
ひと三人寄らば「いぢわる」は…世の常
「あれは母親の代作でおじゃる」なんて
眉なし公卿殿の 口さがない噂も立つや 鴨の川瀬の群れ千鳥
この小式部内侍さんへ「宮中歌合せ」に母の名代の招待状が届く
和泉式部さんは 旦さんのお仕事で 丹後の国に赴任中…
ここぞと眉なし公卿 …「母上のカンニングペーパーのご返事まぁだ?」
小式部さん 顔色ひとつ変えず「わてなぁ、タンゴは踊れんしぃ」
「行くのは遠いしぃ」 「文も見とらんしぃ」 それやけにぃ…
「天の橋立も 知らんのどすぇ」
かくして詠んだのが 前掲の「大江山…」の一首
丹後の地名「生野と行く」「踏みと文」巧みな掛け算で
まだ見ぬ「天の橋立」の絶景へとご案内…
京女のしたたかで やはらかな あしらひ…
お見事でございますねぇ
天の橋立は イザナギさんが「天と地の往来」のために架けた梯子
これが寝てる間に倒れてしもぅた 起こすも面倒やで そのまんま
白砂青松の長い 絶景となった
ここで名だたる「股覗き」…さぁて向こうに見えるのが「大江山」
やっとこさ…と
これが本稿のテーマ「大江山酒天童子」の物語であります
あんた、前置きが長いなぁ…
酒呑童子については 諸説錯乱
深入りは 泥沼に 蟻地獄だから サラリとな
大江山の山深く 鬼の一大集団が棲んでいて
人をさらうなど 悪行狼藉はなはだし
そこで朝廷は、困った…まさにこれは、みぞゆうの事態
源頼光と部下四天王を呼び寄せ 「酒呑童子一族鬼退治」の詔勅発す
神社に詣で「名刀と星兜」を戴き 山伏に変装
毒酒を手土産に いざ出陣!
鳥も通わぬ昼なお暗き 深山幽谷をぬけると
丹の色鮮やかに 楼門構えて
酒呑童子の根城は 一同の度肝をぬく超セレブ
悠然と現れた鬼一族の親玉は なんと眼光鋭くも
たおやかな面妖 オーラ満面の童子ではないか
山伏の来訪こそ嬉しと 心を許した酒呑童子
頼光一同の座興話につられて 持参の酒を「毒酒」とも疑がわず
大いに飲み 興じて謡い舞う
舞え舞えかたつむり 舞うほどに毒回る…ドオと倒れた童子の首を
頼光主従 すかさず兜の緒を締め 打ち刎ねた
五つ眼の異形の鬼と変じた 童子の首は一声 「鬼に二心なし」と叫ぶと
頼光の星兜にガッシと 喰らいついて息絶えた
さてはて 今に伝わるこの「酒呑童子物語」
単なるお伽草子では 済むまいなぁ
その場に居らぬ者の邪推 下司の甘栗(かんぐり)太郎の謗りを
覚悟して言えば
酒呑童子一族の正体とは 大陸・朝鮮半島から流れた
「製鉄技術集団」であった…
と言い切って しまふ
だって言うじゃない 「鉄を制する者 国を制す」なんてさ…
大和朝廷による 「鉄鉱精錬集団」の ノウハウを狙った
「国家的一大収奪事件」…
それが「大江山酒呑童子鬼退治」という
いわば「つくられた正史」の裏に潜む
もう一つの真実では なかろうか
なして 星兜に喰らい付いたか…それはね
童子の磁力が 強力だったからさ
「鬼に二心あらず」とは 言い換えれば
ひとに 二心あり…となん
おとろし
●童子鳴弦/材シナ/油彩着色/像高190粍
一羽の雁は射ず 番(つがい)なれば なおのこと
鏑矢にて 虚空を射ん

