また逢わむに溶け入る

またあわむ どろにとけいる ゆきうさぎ

 

12年に一度、誰でもが主役を張れる干支。

年男に年女…

なんとも不思議なシステムですよねぇ。

誰が考えたんだろう。

 

12年周期で、ひとのからだの細胞も、思考回路も、

暮らしの環境も変化してゆく…

非科学の科学みたいな摂理が働くのだろうか…

ひとまず、そいうことにしておこう。

今年は丑、牛、そうよ…

憂しことあれども、牛歩泰然とね…

猫族さんには、ちょいとお気の毒さま、なのだがねぇ、

昔からの決め事だから、こればかりは、

ヌァンともならない。

 

12歳は、幼年期に、さようなら…

春まだ浅きアスパラガスの憂鬱。

うつむいて喰うママの焼くパンケーキ。

ピースふたつ三つ見当たらないジクソーパズルの切なさよ。

爪をかむクセ、いまだ幼さ残る少年期。

 

24歳は、ツッパリ茶髪の名残り三筋残るに、

やれお覚悟めされ殿中でござる。

本意いづこにありや、

眼定まらずして、ロンドンとパリ。

青春時代の真ん中は胸に棘刺すことばかり…

どっちつかず、漂泊の心の旅路。


36歳は、惰性も実力のうちと居直って、

半分ヤケと折り合いつけて、

あの娘この娘と

二股道の谷間に迷う…時代遅れの赤いシビック。

なにはともあれ脛に傷、

ひとつふたつ三つ隠しつつ、

ふたりして切るウェディングケーキこそ、

嬉し恥ずかし。

 

そして、ついに、きたぞ、

48歳…

「なんとなくクリスタル」で、よろめきの季節。

越すに越されぬ田原坂、

喘ぎつつ登るつづら折りの五十路坂越えて、

海が見えます、日本海、佐渡はけぶりて波枕。 

結構、この坂道で躓くひとが多いんでございますのよ。

石川達三氏の小説にもあったなぁ。題して「四十八歳の抵抗」

 

 まぁ、この坂を越えたなら、幸せが待っている…

ほんとかいなぁ、「はるみ」ちゃん。

…「フツーのおばさん」になりたいの、

それもいいねと思うけど、「フツーって」、

それって何なのさ。

ま、なんのかんのとホッと一息。

 

振り返ってみれば感慨も一入ひとしお

あ、塩分多すぎまする。

人生は、無観客のお芝居なれば、

演目は言わずと知れた「レ・ミゼラブル」。

 

また、月日は、ながれ流れて、

また流れて…

 

あっという間に、

赤いベレーの「還暦」でございます。

よくお似合いですねぇ。

 

 

人間五十年 下天の内を比ぶれば

夢幻の如くなり…

信長さんみたいに謡ぅて、一指し舞ってみますかねぇ。

でもあのひとは50歳だったから、

「殿、そろそろ華麗臭」でござりまする。

 

この謡は、源平の戦で、16歳の生涯を終えた

無官大夫・ 平敦盛卿のお話であるから、

「切実感」と「あはれ」が、ちょいと違うんだが、

ま、いいか。

天人の九つの位階の最下位「下天」の寿命が千年。

それに比べれば、ひとは一瞬であるぞ。

千年なんて生きたくもない…見よ、かの老害こそあさまし…

 

 

まぁ、それは置いといて、

日残りて暮るるにまだ遠し…

やれ古希だ、喜の字だ、お米だ、卒寿だ、傘だ、

一本足らずの白寿だぞぅ…

「虚心坦懐」…水流れるが如くうまくいけば、

おめでたい。

 

 

還暦以降は付録

いつまでも白髪頭振り立てて、

生臭い界隈をうろつくのも、見苦し。

こどもに帰って、

少年雑誌のあの「分厚い付録」を開く感触と楽しみを

今一度、思い起こそうではないか。

 

愚考いたしまするに…

付録の人生こそに、

そのひとの真価が問われるのではなかろうか。

人生最後の最後の「ん」まで、

なにがおこるか

わからない、謎々なのだ。

「晩節を汚す」と

いう言葉もあるじゃぁないか。

 

曇り硝子を手でふいて、

あなた明日が見えますか…

嗚呼、見えねぇ。

山茶花ほろりと散るばかり

 

 

 

 

 

 

 

 

月下鞨鼓兎童子

2009年作・朴材・彩色油彩・像高150mm