再びTACOに陥ったトランプ、「裸の王様」状態で重要情報入らず、イランは強硬姿勢鮮明でこの先不透明に

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Wedge(ウェッジ)

(AP/アフロ)

 イラン戦争は開戦以来6カ月目に突入した。米国のトランプ大統領はイスラエルと進めていた「イラン総攻撃計画」を直前になって中止、イラン側はTACO(トランプはいつもビビッて逃げる)と嘲笑した。 【画像】再びTACOに陥ったトランプ、「裸の王様」状態で重要情報入らず、イランは強硬姿勢鮮明でこの先不透明に  イランはさらにペルシャ湾の要衝ホルムズ海峡の開放条件を提示するなど強硬姿勢を鮮明に。このため一時は楽観的だった開放の行方は全く不透明になった。

第2次世界大戦以来の最大攻撃

 イラン側が事実上封鎖していたペルシャ湾の要衝ホルムズ海峡は6月17日の米国との覚書合意で開放される予定だった。しかし、覚書の文言があいまいな上、イラン側が海峡通過を許可していない船舶に対する攻撃を続け、これに米軍が7月11日以来13日連続でイランを報復攻撃するなど緊張が高まった。  トランプ大統領は「嘘つきに激しい打撃を与える」などとしてイスラエルと共同でイランのエネルギー・インフラ施設への大規模攻撃の計画を進め、「第2次世界大戦以来、最大規模の攻撃」の準備に入った。イラン側は大統領が4月に繰り返した言動をまね「やるなら来い。中東地域全体を石器時代に戻してやる」(イラン高官)などと挑発した。  米メディアが攻撃切迫と報じる中、大統領は8月1日、突然自身のSNSへ「攻撃中止」と投稿。理由としてイランやサウジアラビアなどから中止を要請されたと主張した。この中止の決定がいかに場当たり的だったかは、イスラエル側が「大統領のSNSで中止を知った」(米紙)ことからも一目瞭然だ。  大統領が中止に踏み切ったのは親しい間柄のサウジのムハンマド皇太子から説得されたのに加え、米側のミサイルが枯渇しているという深刻な事情もあった。ロイター通信などによると、イラン戦争で精密攻撃が可能なエイタクムスなど2種類の地対地ミサイルの大半を使い切り、高高度防衛ミサイル(THAAD)や防空システムのパトリオットも大幅に消費した。

「裸の王様」が深刻化

 大統領はその後も「戦闘終結に向けたイランとの協議が進行中だ」としながらも「彼らは信じられないほどの2枚舌だ。攻撃中止で斬首に乗り出す前の最後の機会を与えた」などとイラン指導部を批判。弾薬不足についても「米国には莫大な量の弾薬がある」と強がりをまくしたてた。  弾薬不足については、大統領が7月末ヘグセス国防長官に激怒したと報じられたが、米紙によると、弾薬不足が解決済みと思っていたのに「なぜ誤解させられていたのかの理由を長官に問い詰めたもの」という。しかし、大統領に正確な情報が届いていないとの重大な疑問が生じた。弾薬不足はその一例だ。  以前から言われてきたことだが、絶対的な忠誠心と独裁的な手法を採る大統領には側近らが不都合な情報を伝えない。大統領には心地よい情報しか入らず、それでなくても「裸の王様」なのに、その度合いが深刻化しているのだ。  CNNはケイン統合参謀本部議長がイラン戦争からの「出口」を探っていると伝えたが、大統領には入っていないようだ。同議長は空爆だけでは政権の目標を達成できないとして、バンス副大統領らと協議しているという。

 

イラン「逆封鎖」や制裁解除を要求

 トランプ大統領は8月6日「戦争は近いうちに終わる」と述べたが、現在直接行われている協議はイランとオマーン間によるもので、米国はオマーンの後ろ盾として間接的に協議に参加しているにすぎない。協議は最終段階に入っており、ホルムズ海峡の航行方式の暫定合意がまとまる公算が強まっていた。  米メディアなどによると、暫定合意案は海峡を通過してペルシャ湾に入る船舶はイランの領海を航行し、海峡からアラビア海に出る際にはオマーンの領海を航行する仕組み。オマーンの領海を通過するには「イランと調整の上」という条件が付いており、事実上イランに「拒否権」が与えられているようだ。  暫定合意案の期間は「60日間」で、関係国は30日以内に海峡の中央航路から機雷を除去する作業を行う。期間は延長が可能。この間は通行料などの料金の徴収はない。しかし、イラン最高安全保障委員会のゾルガドル事務局長が8月8日、ホルムズ海峡開放の条件を要求したことから先行きは見えなくなった。  米国はアラビア海で、イランの港湾に出入りする船舶を阻止する「逆封鎖」を続けているが、開放の条件は「逆封鎖」の解除の他、制裁解除や凍結資産の解除、周辺地域からの米軍撤退、戦争被害の補償を要求。イランへの侵略やどう喝の停止、レバノンのヒズボラなどイランの同盟者への攻撃中止を求めている。  同事務局長は「米国が行動を改めなければ海峡が開放されることはない」と一歩も引かぬ構え。オマーンとの交渉がまとまっても、米国が要求に応じなければ海峡の封鎖は継続するという厳しいものだ。背景にはイラン国内の実力組織である革命防衛隊が強硬論を主張している事情がある。

 ペゼシュキアン大統領は同じ日「(米国と)合意する最良の時だ」と語っており、ゾルガドル事務局長の発言はイラン国内の主導権争いが強硬派に傾いていることを示唆するものだ。11月の中間選挙まで3カ月を切る中、焦りの色を深めるトランプ大統領が再び総攻撃に舵を切る懸念もある。

 

勢いづく「抵抗の枢軸」とゲームチェンジャー

 主導権を握るイランはじわじわと米国を追い詰める戦略だ。その柱は「抵抗の枢軸」と呼ばれる中東の連携武装組織を使って攻勢を掛ける作戦である。一時は米国とイスラエルの攻撃で弱体化した武装組織ヒズボラ、イエメンの反政府フーシ派、イラクのカタエブ・ヒズボラなどが息を吹き返しつつある。  特にフーシ派は紅海を通るサウジの船舶に「海上封鎖」を宣言、紅海の出入り口であるバベルマンデブ海峡を押さえた。紅海はサウジにとって、封鎖状態のホルムズ海峡に代わる重要なルート。フーシ派はこれまでに紅海でサウジの船舶8隻を攻撃したとしている。イラクのカタエブ・ヒズボラも7月、サウジの石油関連施設2カ所を攻撃し、サウジの報復を招いた。   こうした「抵抗の枢軸」が勢いを取り戻しているのはイラン支援が強化されつつあることの表れだろう。イランも中東全域への戦火拡大も辞さないとの構えを示しているが、ゲームチェンジャー(状況を変える出来事)になったのは7月17日のヨルダンの米軍基地への攻撃で、米兵3人を殺害したことだった。  これはイランの弾道ミサイルがまだ十分残っていることを示すと同時に、イランの情報収集力が想像以上に優れていること浮き彫りにした。米国はこのヨルダン攻撃でイランの報復が中東全域に及ぶリスクがあることを現実のものとして理解するようになり、攻撃に躊躇するようになったという。  イランの強硬派コメンテイターはこのほど、自身のXアカウントに「チキンタコス」の写真を投稿した。トランプ大統領のあだ名「TACO」(Trump AlwaysChickens Out)をもじった皮肉だ。最後までビビって逃げずに戦争を終わらせることができるかどうか、大統領の真価が問われている。