「パパぁ、ブランドってナニ?」

9歳の娘、モモカが唐突に聞いてきた。

なんでも、友達と交換予定のプロフィール用紙に「好きなブランドは?」と書いてあるらしい。

「あのね、ブランドっていうのは、会社名とも少し違うんだけど、商品についている名前のことだよ。高級なバックで『ルイ・ヴィトン 』とか聞いたことない?」

「うーん、知らないなあ」

「知らない? 服や靴にもいろいろなブランドがあるんだけど……」

「あ、モモカは『フィガロ 』が好き!」

「フィガロって……雑誌の? フィガロ自体はあまりブランドとはいわないなあ……。でも『フィガロ 』の雑誌にはブランドの服やアクセサリーがよく載ってると思うよ」

「パパ、何言ってるの? モモカ、雑誌のフィガロなんて知らないよ。パパも知ってるじゃん。駅ビルで消しゴムとか売っているところ!」

どうやら娘のいう「フィガロ」とは、近所の駅ビルに入っている文房具屋さんのことらしい。

「ああ、あの文房具屋さんかあ(笑)。でもあのお店は別にブランドじゃないなあ。ただの文房具屋さんの名前だよ(笑)」

「ふーん、違うんだ。あーあ、フィガロ好きなのになあ~」

納得がいかない様子だ。

「ほら、子供服なら『ミキハウス』とかあるじゃん。あとモモカの服に『ギャップ(GAP)』とかあるじゃん。ああいうのがブランドだよ。そうそう、モモカのランドセルは『メゾピアノ』じゃん。そういうのがブランドだよ!」

娘の目が輝いた!

「そっか! そういうのか! じゃあモモカは『サティ(SATY)』が好き! 好きなブランドに『サティ』って書こおーっと」

「まてーーい。待ちたまえ~~。あのさ『サティ』は違うんだなあ(笑)。あれはブランドとはいわないなあ、うん。まあ、サティでもブランドの商品は売ってるかもしれないけど……」

「ふーん、サティでも売ってるんだ、ブランド。まあ、いいや。だいたい分かった」

理解するのが面倒くさくなったのか、娘は自分の部屋に戻っていった。

数時間後。

リビングに行くと、テーブルに1枚の紙が置かれていた。

モモカが書き上げたプロフィール用紙だった。

<好きなブランドは?>

その項目に書かれていたのは――

ガ

・

リ

・

ガ

・

リ

・

君

ガリガリ君! ガリガリ君! ガリガリ君! ガリガリ君! ガリガリ君! ガリガリ君! ガリガリ君!……


ブランド ブランド ブランド ブランド ブランド ブランド ブランド……

ガリガリ君! ブランド ガリガリ君! ブランド ガリガリ君! ブランド ガリガリ君!……

でも……

……

……

……

待てよ……

……

……

……

立派なブランドではないか。

むしろ、グッドアンサー?