青森県
陸奥に老舗の大きな造り酒屋がありました。
この酒屋は、後を継いだばかりの若い主人が急死し、
19歳で後家になった嫁のユメが一人で取り仕切っていました。
ある秋の日、酒屋の前に小さな子猫が
冷たい雨に打たれながら震えて捨てられていました。
下男(使用人)の八助が優しく話しかけました。
「お前も捨てられたのか…。お前もおらも捨て子だな。」
拾われた子猫は「虎子」と名づけられました
ユメと八助で大切に飼われるようになりました。
この虎子は不思議な猫でした。
ほんの時たまですが人間の言葉を話す事がありました。
「八助、ユメの婿になれ、ユメの婿になれ。」
このうわさはすぐに広まりそして忘れられていきました。
しかしこのことを忘れなかったものもおりました。
番頭でした。
番頭はお稲荷に「なきものにしてほしい」と頼み込み、狐にお稲荷を沿え、
お祈りをした声をお稲荷は聞きます。
稲荷狐は、美しい美人の女に化け、騙そうとすますが、
すんでのところで虎に救われました。
後一歩おそければ真っ逆さまに淵の崖から転落するところでした。
ところが不慮の事故で、橋の足元がバリっと穴が空いてしまい
川へ転落してしまいました・・・・。
虎は好きだった男が死に悲しみました・・・
八助が死んで初七日頃から、番頭はわけのわからない事を口走るようになり、
突然行方知れずになりました。
それは恐ろして虎の復讐でした。
夜な夜な番頭のところに化けて出るようになり、仕返しをしていたのです。
ユメは八助の墓前で手を合わせながら、
虎子に自分の秘密を打ち明けました。
「虎子、私も拾われっ子だったのよ。拾われた子は運が薄いのねぇ」
虎は・・・
苦悩していました。
「拾われものはたしかに運が悪い・・・・だが!」
虎は、自分自身に疑問を投げかけるように、
襲いかかってくる野良犬たちに立向かい、そのまま息絶えて、
男のあとを追うように、淵に落ちてしんでしまったといいます。
しかしそのあと虎の亡骸を見たものもありませんでした。
人々はこの不思議な猫の事をいつまでも忘れませんでした。
救われない悲しいお話でした。