牛鬼淵 | ウルフオルフェノクが行く!

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春になりましたね。

三重県(和歌山県西牟婁郡(にしむろぐん)の説も)



昔、伊勢の山奥でのお話でした。

牛鬼淵と呼ばれるふかーい淵があり、そこには顔が牛、体が鬼という
恐ろしい物が住んでいるといわれておりました。

この山奥に二人のきこりが山がけして木を切り出していました。

ある夜のこと。
いつものように囲炉裏端で年寄りのきこりがのこぎりの手入れをしていました。
奇妙な男が、にったりと笑いながら、戸口のむしろを勝手にめくり家の中を覗き込んできました。

「なにしとるんじゃ?」と男はきこりに訪ねました

年寄りのきこりは「のこぎりの手入れをしているんじゃよ」といいました。
「ほらみてみい。のこぎりの歯じゃよ。これを手入れしとるんじゃ。
最後の32枚目の鬼刃(おにば)といって鬼が出てきたらこれで挽き殺すんじゃよ」
そういうと男はすうっと、何も言わずにったりと笑いながら消えて行きました。
二人のきこりたちは、呆然と見つめているだけで、背筋が寒くなるのを感じました。
年のきこりはぞっとしたようにはっとしました。
「牛鬼じゃあるめえな?」
わかい男は笑いました。
「あれはたしかに人間だった。牛鬼が人間に化けることはないだろう」
年のきこりは、考え込むだけでした。

牛鬼は、木を切っているきこりにそっと近づいて影を舐める化物だそうで、
影を舐められた人間は高熱を出して寝込んで、そのまま黒焦げになって死んでしまう恐ろしい化物だと言い伝えられていた。



そして翌晩もまたその男が訪ねてきて、同じことを訪ねて帰っていくのでした。
「なにしとるんじゃ。」
「のこぎりの手入れしとるんじゃよ。これが鬼を挽き殺すという鬼歯じゃよ。」
そういうとまた男はすうっと消えていくのでした。
きこりたちは、背筋に冷たいものを感じ、ぞっとしました。
いきたここちがしなかったそうです
翌朝、きこりたちがすがすがしい朝日を浴びながら、大木を切っておりました。
大木を切る音だけが山々にこだまします。

硬いところにあたったのか、鬼歯がバキーンと折れてしまったのです。
「あっ!しまった!鬼歯が・・・・切れた・・・・」
このことは、木こりの間では、
なにか不吉なことがおこる前ぶれとして知られていたので、二人は
しばし顔を見合わせるだけで、呆然と立ち尽くしておりました。


不吉な予感がした年のきこりは、
男に一緒に山を降りないかと、男にいうのですが、
わかいおとこはせせら笑い小屋に残ることになりました。
折れた刃を修理するために仕方なくふもとの村まで降りることにしました。

そしてわかいきこりに、
あの男が来てもけっして鬼歯のことは話すなと、伝えて修理に行くのでした。

若いきこりが酒を喰らいながら小屋の番もかねて小屋の中で待つことになりました。
わかい男は、口うるさい年のきこりがいないことをいいことに
気分もほろ酔いかげんでしたが、
またあの男がすっと小屋の中へ入ってきました。

またあの気味の悪い男がやってきました。
同じ質問をしてきました。

「なにしとるんじゃ」

「こんやはひとりじゃな。どうしたんじゃ。」

男は「その~、鬼刃の修理にいっておるんじゃよ。」

そういいつつ酒を食らうきこりでしたが、
男はずいっと部屋のなかにあがりこみ、


「今夜は鬼刃はないんじゃな?
鬼を殺すという鬼刃はないんじゃな?」


そういうと、火のあかりで浮かび上がったのは、
男の姿ではなく恐ろしい牛鬼の姿でした。

そして男に襲いかかってきました。

「うわああああああっ!」

男は恐怖のあまりに小屋から間一髪逃げ出しますが、




後から追いかけてきた牛鬼が後ろからおおいかぶさるように

池にそのまま引きずり込んで行きました。



そして、あたりはもとの静けさだけが残りました。


牛鬼は男を池の中に引きずり込んだということです。




次の日修理に出ていた男のきこりがそれを知り

「あれほど、鬼歯のことはけっして教えてはいけないといっておいたのに!」
とつぶやいたそうです。



顔が牛、体が鬼の牛鬼は確かにおった。

満月の夜には牛鬼淵から牛鬼の鳴き声が聞こえてくるそうです。




牛鬼(うしおに、ぎゅうき)