首ひねり | ウルフオルフェノクが行く!

ウルフオルフェノクが行く!

春になりましたね。

熊本県
 
 

勘違いは恐ろしい

 
 
昔、熊本県の菊池に「地獄」と呼ばれる所がありました。
 
たまたまこの近くを通りかかった行商の男が、
一晩の宿をもとめて一軒の民家に立ち寄りました。
 
 
民家の夫婦は見た目は大きな大男と大女で恐ろしかったが、男を快く迎え入れ、
 
宿屋にしては汚れた薄気味の悪い部屋に通してくれました。
 
 
 
 
夜も遅くなり・・・・
 
旅の疲れからいつのまにかぐっすり寝込んでいた男の耳に、
 
隣の部屋から夫婦の話し声がした。
 
おとこはその話声で目を覚ました。
 
その怪しげな影のまた恐ろしいこと。
 
 
 
 
「今晩は手打ちにしようか、半殺しにしようか…」
 
と、相談している声でした。
 
旅人はぎょっとした。
 
男は「きっとここは強盗の家だったんだ」と思い、
 
すきをみて逃げ出そうとしました。
 
 
しかし、夜になっても部屋の前には夫婦がいたため、
 
四方を壁に囲まれた部屋からは逃げられませんでした。
 
 
そうです
 
 
出口に行くにはあの夫婦のいる間を通らなければ外に出られないのでした。
 
男は生きた心地がせず、恐怖で身震いしながら、
 
 
 
 
なかなか逃げるチャンスがありませんでした。
 
しばらくすると、亭主が
 
「お前は地獄で待っていろ、俺が首をひねるから」
 
と嫁に言っている声が聞こえてきました。
 
ますますぎょっとした旅人は
 
男はあまりの恐ろしさに、民家から夫婦を振り切り一目散に逃げ出しました。
 
 
「助けてーーっ!」
 
 
男は一目散に夜の山を転がるように駆け下りていきました。
 
それをあっけにとられてびっくりして夫婦は見送っていました。
 
 
男は町の奉行所にかけ込み、これまでの事を話しました。
 
 
それを聞いた役人は、傑作とばかりに大笑い。
 
 
「あーーっはっはっは!」
 
と笑い転げる役人。
 
 
笑うとはひどいなあと旅人。ころされかけたんだぞ。
 
と怒る旅人に「すまんすまん。」と愉快そうに謝る役人は改めて話し出した。
 
 
 
とにっこりしていった
 
 
へっ?とした顔でびっくりする旅人。
 
 
「ほれ、お前さんが通った洗い場のところが地獄というんじゃよ。
 
手打ちとは手打ちうどんのこと。
 
半殺しというのはぼた餅の事だよ。
 
それに地獄というのは湧水があった場所の事で、
 
首をひねるというのはミノの襟をわらでよるという事だよ」
 
 
と笑いながら説明してくれました。
 
 
 
男は夫婦の元に戻り、自分の勘違いを丁寧に謝りました。
 
すると、にっこりして、奥さんが、
 
「ちょいと旅人さん。これをお土産にもっていきな。」
 
とわたしてくれたのは・・・・
 
 
 
 
「あれま!これは首ひねりだ!」と苦笑いしながら旅人は言う。
 
旅人と夫婦は思わず目を見合して、傑作とばかりに大笑いするのでした。
 
そして、男は礼をいうと、また旅をはじめたのでした。
 
 
それからの男は、まずその土地の言葉を
 
よく理解してから話すようにしたそうです。