凄いジジイが車椅子に乗って、私の勤める店に来た。
娘なのか嫁なのか介助の人かは知らんが、ジジイより若い女性が車椅子を押してやってきた。

女性は「この店の責任者を呼んで」と開口一番そう言った。
ジジイは10カ月前に買った商品がクタクタしてきたので「不良品」だとし、全額返金を求めてきた。
しかし先週からマネージャーはヘンパーティー(ヘンパーティーとは、結婚を控えた女性が独身最後を祝う為に親しい女友達や母親、姉妹、義母になる婚約者の母親などを呼んで羽目を外すパーティーの事。朝まで飲み明かしたり、最近は1-2週間カナリア諸島などのリゾート地で遊ぶスタイルも多い)で2週間ランサローテ島に行っているため不在と説明。

するとジジイは「私を誰だとお思いか?」と言った。
入社二年目のスタッフが対応したが泣きそうな顔で私に助けを求めてきた。

「私を誰だとお思いか?」と言うくらいだから、私が外国人であることを逆手に取り、プライドを傷付けたらジジイは更に逆上するだろう…とイメージを掴んでから対応した私。

10カ月、毎日のように使用した商品がクタクタしてきたから不良品…しかもレシートもない、さすがに全額返金は出来ないと説明。
ジジイは私を「移民」と呼んだ。
「私を誰だとお思いか?私はサーの称号を持っている者だ!」と言ったから、「あいにく、日本の歴史に名を残す程の優秀な方なら存じ上げておりますが、イギリスのサーの称号を持つ方は俳優からミュージシャンまで幅広く多人数に渡りすぎて知るよしもございません」と答えた。

女性は「話にならない」と言った。
私は「サーの称号と今回の全額返金は関係が?」と尋ねた。
ジジイは「来週に戻ってくる責任者はイギリス人か?それとも君のような学の無い移民か?」と聞いた。
私は「幸運にもスコットランド人です」と答えた。
ジジイはFワードを吐き「アイルランド人よりはマシか…」と高らかに笑い、女性に何やら耳打ちし、「来週に戻ってくる」と言った。

そのやり取りを見ていたスタッフ数人は吐き気をもよおしたり、かなり動揺したスタッフがいた。
ジジイは持っていた杖で床を一度強く叩き出ていった。

あれが「サー」てか…
ワシを知っとるケ?…て…知るか!!
対応したのが外国人の私で良かったと思う。
うちにはポルトガル人やアジア系、国境地ゆえにスコットランド人のスタッフも多い。
あの子達を酷い言葉で傷付けたら、接客業に自信を失うかもしれない。

入社二年目のスタッフが私に謝った。
「ごめんなさい、あなたに渡してごめんなさい」と泣いた。
私は気にしてないと答えた。
カーライルの図書館の前で「国に帰れ!」と言われた経験、「中国人」と言われ雪を投げられた経験、「貧しい国から来てイギリスの医療を無料で使う」と言われた経験…それらは私を強くした。
今さら「移民」と言われても、知らんジジイに怒りも覚えない。
ただ「サー」を持っていて、これか…と笑うだけである。

また来週来るらしい。
3800円の使い倒した商品を携えて…
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