私の職場にはマネージャー(私は店長と心の中で読んでいる)がおり、その上にはエリアマネージャーなるものがいる。
そのエリアマネージャーは、かなり広域な範囲で各店舗の売り上げ促進を図らねばならない。マイナスが出れば自分の責任、プラスが出れば給料にプラスが反映される。
うちのエリアマネージャーは男性であるが、かなりエエ暮らしをしていると見え、乗って来る車もポルシェであったり、見に付けているものもイタリアモンである。

そんな彼が会社からのプレッシャーに押され続け、遂に精神を病んでしまった。
半年間の療養では完治せず、正社員からパートに変更、給料は激減した。
これと同じ時期、彼の兄が末期癌である事が発覚、更に気持ちが落ち込み立ち上がれなくなった。

さらには妻との離婚の運びとなった。
今までマンチェスターの裕福層が暮らす家で優雅に暮らしてきたのである。
それなのに夫はパートになり、給料が激減。
家のローンも払えなくなり、妻が働くか家を売り小さな家に越すしか、明日から子供達を食べさせる術はなくなった。
しかし、妻はこれを受け入れられない。
今ある全ての物を諦めたくない妻は、夫を許せない。
妻である自分が働くなど考えられない。
夫のおかげで手に入った今の生活を夫のせいで奪われたくはない、ならばサヨナラとなったのである。

こうしてエリアマネージャーは安定剤と眠剤を飲みながらパートに切り替え、兄を見送り、今は離婚の調停中。
そんなエリアマネージャーとうちのマネージャー、数人のスタッフで先日、食事会があった。

私が初めてこの人に会った時、目がギラギラしていて、「俺、デキる男です」をガンガン前に押し出しているような人であったが、今はすっかりギラギラ感が抜け、爽やか中年になっていた。

元々は奥さんとの共働きから始まった夫婦生活。
しかし夫の出世に伴い、その必要性も無くなっていった。
ネイルサロンに通い、ヨガに通い、大きな家に越し、高級外車を数台所有し、友人らと年に何度かの旅行にも行く。
娘の乗馬クラスもある。
息子のテニス選手になる夢もある。そのためには良いコーチを付け続けねばならない。
今の友人らに「夫がパートになったから家を売り、こんな暮らしは出来なくなった」と絶対に言いたくない、言えないと妻は言ったという。

それを聞きながら、夫婦間の愛は妻に無かったのだろうか・・
共働きしていた頃に戻るだけという分けには行かないものなのだろうか・・
金の切れ目が縁の切れ目とは、長年の夫婦にあっても有効なのか・・そんな事を考えながら、ピザ屋で食事した。

今は実家に暮らし、パートで稼いだお金は養育費として可能な限り支払っているという。
それでも私達の食事代をはらってくれたエリアマネージャー。
こうなる事は想定してあった店長が、帰り際に「これ、飲み」と彼の好きなウイスキーを2本持たせた。
さすが店長、エエ女や・・
嫁は店長を見習えと言いたかった。

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