ここ数週間、職場で泣き続ける女がいる。
名前は「バル」35歳、16歳になる息子がいる、シングルマザーである。

18歳の時、この女はジャマイカに1人で遊びに行った。
酒とドラッグに浸り、酔った勢いでワケの分からんイレズミも入れた。
ギラギラ照り返す太陽と海、陽気なジャマイカ人と1週間のアバンチュールを楽しみ、帰国した後、妊娠している事が発覚。

「私と結婚し、イギリスに住んで欲しい」と彼に説得したが、ジャマイカ人は「イギリスになど、行く気はない」と断った。
結局、未婚のまま、18歳で出産。

女が深く考えなかったのは、ここがカーライルであること。
黒人など、見かけることのない、この鎖国的な田舎町で、肌の黒い子供を産むことのリスクを分かっていなかった。

私のような、アジア人でさえ、今だ差別的な目で見られるのに、今から16年前である。
子供が学校に入るや否や、イジメに合い始めた。
登校拒否になり、暴力的になっていった。

最近、この息子が15歳の少女と出会い、昼をごろごろ過ごすうち、妊娠してしまった。
少女は「産む」と言うし、少女の親も「産ませる」と言う。
息子も「何とか育てる」と言うが、バルは反対。

息子を説得するが「お母さんも俺を18歳で、未婚のまま産んだ。違うのは年齢だけで、他に何が違うと言うのか?」と反論。
確かにそうである。

バルが18歳の時に「産む」と言った時、親は同じ事を思ったに違いない。
どうやって育てていくのか、まだ早いではないか・・と。

結局、15歳の少女は、来年に母親になることを決意した。
この1件で、バルは毎日のように泣き、仕事にならない。

おかげで、私が服とは全く関係のない、この女の食器売り場も見る事になった。
冷たいようであるが、シングルマザーになると決めた時、今後起こる全ての出来事を、1人で受け止める覚悟したんちゃうんかい!!と、同情する気にもならない私は、冷たいのか・・

とそんな事を思いながら、今日も皿を売った。