書名「殺」は「ころし」と読むのだろうか?
Geminiに読書メモを渡してあらすじを書かせた。この話のモチーフ(主人と番頭の入れ替わり)は池波のテレビ化された作品で何度かみていた。秀作だ。
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ご提示いただきました読書メモをもとに、池波正太郎作品ならではの江戸情緒と緊張感を漂わせた時代劇風のあらすじに仕立てました。
【あらすじ】池波正太郎短編コレクション2『夢の茶屋』第一話「殺」
両国一帯の香具師(やし)の元締め・赤不動の嘉兵衛のもとへ、仕掛人として裏の仕事を引き受ける浪人・近藤市五郎が訪ねてきた。嘉兵衛が持ちかけてきた今度の裏仕事の標的(まと)は、後宮などに小間物を納める大店「井筒屋」の老主人・徳兵衛。頼み人は、芝・田町の岡場所で娼家「きねや」を営む六十過ぎの老爺・松造である。市五郎はこの殺しを百両の報酬で引き受けた。
その日の夕暮れ、采女が原(うねめがはら)の路上で、井筒屋徳兵衛は思いがけぬ人物と鉢合わせる。声をかけてきたのは、当の頼み人である「きねやの松造」であった。 実のところ、松造は目の前の井筒屋徳兵衛こそが、十三年間も消息を絶っていたかつての盗賊仲間「黒塚の駒吉」その人であるとは露ほども知らずに、嘉兵衛へ暗殺を頼み込んでいたのである。
料理屋「藤井」の座敷で向かい合う二人の老爺。ひとたび席を共にすれば、大店のあるじと娼家の親父という今の顔は消え、かつて大盗賊・桑飼(くわがい)の弥右衛門の「両腕」と謳われた名うての泥棒、黒塚の駒吉と水鶏(くいな)の松造へと戻っていく。 十五年前——。「貧しきからは奪わず、女は犯さず」の務め(おつとめ)の掟を破るようになった親分・弥右衛門を殺害し、隠し金八百五十両余を奪って逐電した二人であった。 徳兵衛(駒吉)は素性を隠したまま白々しくとぼけ、松造との旧交を温める振りをしてその場をやり過ごすのだった。
だが、徳兵衛の足元には、別の恐ろしい罠が仕掛けられていた。 徳兵衛の妻・おもんは、かつて「きねや」で客を取っていた過去があり、いまや井筒屋の若い番頭・宗次郎と密かに深い仲となっていたのである。徳兵衛の目を盗み、夫の殺害を赤不動の嘉兵衛に依頼した真の黒幕こそ、ほかでもない妻のおもんであった。
勘の冴える徳兵衛は、妻と番頭の不義密通、そして我が身に迫る殺気に感づいていた。 徳兵衛はおもんに対し、「宗次郎を伴って商いに出る」とわざと告げて出かける。案の定、おもんから報せを受けた嘉兵衛は、刺客・近藤市五郎を路上へ放った。
商いの帰り道、徳兵衛は宗次郎を鰻屋へ誘い込み、酒の席で「酔った座興だ」と持ちかける。 「どうだ宗次郎、帰りはわしが番頭の振りをし、お前が主人(あるじ)の振りをしてみようではないか」 二人の着物を入れ替えさせ、夜道を歩かせる徳兵衛。闇に潜んでいた刺客・近藤市五郎は、主人に扮した宗次郎を徳兵衛と思い込み、一刀のもとに斬り捨ててしまう。
やがて、殺したはずの夫・徳兵衛が無傷で店へ帰ってきた姿を見たおもんは、恐怖と狼狽のあまり狂乱し、数日後にみずから命を絶った。 刺客の市五郎のもとには嘉兵衛が駆け込み、手違いを詰問するが時すでに遅し。 「番頭の不審死に続き、あるじの女房まで自害しては、奉行所の吟味が及ぶのも時間の問題……」 過去の盗賊沙汰まで露見することを恐れた徳兵衛は、四百七十両あまりの金を懐に忍ばせ、夜陰に紛れて江戸の街から姿を消したのだった。
◇
——それから、十年の歳月が流れた。
江戸から遠く離れた地で、徳兵衛は小さな茶店を営み、静かに身を潜めて暮らしていた。 ある日、その店に一人の客がふらりと入ってくる。男の顔を見た瞬間、徳兵衛の顔色は悪鬼のごとく蒼白となった。 その男こそ、かつて桑飼一味に新興勢力として加わり、初代・弥右衛門の掟を破らせる元凶となった高根の万助(二代目・桑飼の弥右衛門)であったのだ。
「刺客が、ついに自分を殺しにやってきた——」 過去の業と恐怖に縛られた徳兵衛は、激しいショックのあまり「あわわ、わわ」と口走り、その場に崩れ落ちた。脳の血が吹き出し、死の淵へと倒れ伏す徳兵衛。
しかし、倒れ込む徳兵衛を見下ろしながら、二代目・弥右衛門は静かに呟くのだった。 「わしも盗人稼業から足を洗って十五年……。今さらお前さんの命を狙うような野暮な真似をするつもりなど、ありはしなかったのだよ。お前さんたちが先代を殺したのも、もとはといえば若き日のわしの身勝手な考えを先代に吹き込んだせいだったと、ようやくこの頃になって気づいたのだからな……」
宿命の糸に手繰り寄せられた男たちの、哀しくも虚しい裏の世の末路であった。
