ネタバレあり。まだ読んでいないブロガーさんはスルーしてほしい。
チャットベリタスに関わっている宮越は何かある男だと思っていたら、案の定だ。
幻影会に関わっていた。宮越の家系が代々真実の歴史を隠す役を負ってきた。
太字は章名。1段下がりは、私が読んで大事だと思ったところ。
沈黙の任務
「システム正常稼働中」(略)宮越は小さな異変を思い返していた。
今朝検知した微細な侵入の痕跡、(略)データの流れに生じた一瞬の乱れは、システムだけでなく宮越自信の内面にも亀裂を走らせていた。
宮越の指が無意識に画面の縁を叩いた。律動は不規則で、うちなる焦燥を示していた。(略)「くくり」をかいくぐろうとする意志。
自己修復プロトコルによって徐々に覆い隠されていく真実。
システムの鎧に生じた微かな裂け目ーーー誰かが意図的に残した隙間ーーーは、完全には塞がっていなかった。宮越の目が一瞬、鋭くなる。
秩序の乱れは、目に見えないところから始まっていた。
通された奥座敷で、宮越は自分の家系の真実を知らされたーーー宮越家が代々担ってきた「くくり」の守護者としての役割を。
その瞬間、宮越の世界の軸がずれた。真実を追う者から、真実を隠す者へ。
ある夜、宮越は気づいたーーー自らが『括り』システムを作ることでしか、いつかその仕組を解き放つ日は来ないのだと。内側から壊すには、まず内側に入らねばならないーーー。
藤井の言葉は氷のように冷たく(略)かつて見たことのない緊張が張り詰めていた。
だが、すべてを語ったわけではなかったーーーあの微かな裂け目のことだけは、口にしなかった。
「十条叶羽の動きに注意せよ」藤井は話題を切り替えた。「彼女が踏み込んでいるのは、〝言葉にしてはいけない過去〟だよ」
宮越は無言で頷いた。(略)心のなかでは何かが軋み始めていた。
十条叶羽の監視は継続中です。彼女の行動パターンは予測モデルの範囲内で推移しています」
「よろしい。那が、忘れるな。君の一族には、そういう役回りがある。(略)千数百年の歴史が、たった一人の女子大生によって覆されることは許されない」藤井は宮越の目をジロリと見つめた。「真実という刃は、扱いを誤れば、國を切り裂く。だからーーーくくるのだ」
宮越の脳裏に、かつて見た記録映像が浮かぶ。大正時代、徳島の山中で燃えさかる神社。そこから逃げ惑う白装束の巫女たち。あの古色を『帯びたフィルムを発掘したとき、宮越の内側で何かが揺らぎ始めた。
藤井が去ったあと、宮越は重い足取りで自分のマンションに戻った。』リビングの壁には、藤原氏の家紋を模した古い掛け軸が飾られている。宮越の祖先は藤原北家の流れを汲み、明治の動乱期、』表には記されないある役割に関わったと伝えられている。それ以來、宮越家は「歴史の守護者」としての『役目を背負ってきた。
「よく見れば、隠された言葉が浮かび上がるでしょう。新月の闇に⋯⋯」
叶羽は自分の鼓動を感じながら、家に残る木の感触を確かめるように指を握った。幻ではない。確かに何かと繋がった⋯⋯血が記憶する、遥か昔の真実と。
十条叶羽。
彼女の問いは、まだ終わっていない。
だが、自分の考えもーーー
まだ決まってはいなかった。
