私にとっては健康維持の命綱となっている毎日の散歩ですが、二人の老人と顔見知りになり、言葉を交わすようになりました。二人とも名前は知りません。

 Aさんは70代後半と思われる男性で、ご自宅は私の散歩コースの途中の道に面しています。コンクリートブロックの塀の上に、丹精した花の鉢を並べ、手入れをしていらっしゃるので、1年を通して、何かしら綺麗な花を堪能させていただいています。
 半年ほど前、散歩の帰路、ゆっくりと歩きながら花を眺めていると、Aさんが庭にいて、私に声をかけてくれました。
「毎日、よく歩くねぇ。」
「ええ、数年前に命を落としかけ、3.11の秋に自宅に戻ったのですが、身体が萎えてしまって動けなくなり、少しずつ歩く練習をして3年目になりますが、ようやく30分ほど歩けるようになったのです。雨でも歩いています。1年以上、一日も休んでいませんよ。」と答えると、
「俺も、歩きたいのだが、ごらんのとおり、片足が悪いから、無理かなぁ・・・・・・。」
と、こんな会話をしてから、散歩のときに顔を見ると、挨拶するようになりました。
 それが、3日前、Aさんが、ご自宅の前を腕時計を手にして時間を確認しながら、ゆっくりと歩いていたのです。
「お歩きになったのですか!よかったですね。」と声をかけると、
「うん、この前、そちらさんの話を聞いて、真似をしてみようかなと思って歩き始めたんだよ。」
「いやぁ、うれしいですね。歩くと健康になりますよねぇ。」
と、こんな挨拶をしました。
 そして、今日も散歩の途中、Aさんに会いました。ずいぶんご自宅から距離があります。
「こんにちは。ずいぶんと距離を延ばしましたね。」
「うん、歩くと体調がよいことがわかって、午前中20分、午後20分、歩いているんだよ。ゆっくりだけどね。20分が現界だね。」
「いやぁ、すばらしいですよ。すごいなぁ。お互い、散歩を長く続けましょう。」
と返事をすると、とても嬉しそうに笑顔を返してくれました。


 もうひとりのBさんは、おそらく90歳前後の老人です。1か月ほど前、私が公園に着いて煉瓦敷きの周遊路を歩いていると、公園中央のベンチに座ったBさんが声をかけてくれました。
「あんた、毎日毎日、よく歩いているねぇ。歩きっぷりがだんだん良くなっている。」
「ありがとうございます。このへんの方ですか。」
「俺は、そこの旅館の婿だよ。あんたが歩いているのが毎日見えるんだよ。」と、公園前の道路に面した鉄筋4階建てのビジネス旅館を指差しました。
「そうでしたか。それはどうも。」と返事をすると、話し好きのようで、
「まあ、となりに掛けなさいよ。」と言うので、私もベンチに腰掛けました。
「わしは、な、市内の三崎の出で、この旅館に婿に来たんだ。三崎というのは市内でも古い土地柄で、三崎の住人が鎌倉時代から飯沼観音の本尊を守もりしていたのだが、いつの間にか、寺が所有してしまったのだ。」
というような不思議な話を話し始め、続いて、
「わしは、な、関東では最も古くからカイロプラクティックを広めた団体の会長をしていてな、今でも頼まれれば家(旅館)に来てもらって、悪いところを直してやっているんだ。不感症は一発で治るぞ(笑)。」
「へぇ、すごいですね。実は私は20年ほど前、突然、右耳が聞こえなくなったのですよ。病院にも行きましたが、原因不明でした。自分ではストレスだと思っていますけど。」
と、言いますと、Bさんは
「どれどれ、右の耳をこちらの向けてみなさい。」
と言い、私の右耳を掴み、揉んだり、押したりすること1~2分・・・・・・。
 すると、突然、右耳が「ポーッ!!」と、蒸気機関車の汽笛のような大きな音がして(私にはそのように聞こえたのですが)、その後、「プシューッ・・・」と空気が抜けるような感じがしました。
 私が驚きながら、このことを離すと、Bさんは、にやりと笑いました。
 こんなことがあってから、今日まで3回、ベンチに座るBさんの姿を見かけると、言葉を交わすようになりました。


 以上、9月4日のブログに書いた「謎の老人」ではない、二人の老人の話でした。