昨日のブログでは『辞書と商業主義』と題して、商品としての辞書の本質的価値の表明よりも「売らんかな」式の宣伝が前面に出すぎていることへの軽い嫌悪感について書きました。
嫌悪感などといいましたが、帯広告を外して、実際に2冊を手に取ると、「実によい辞書」です。
小学生が使うことを前提にして製本された『例国』と『例漢』は、旧版よりもページ数が増えたにもかかわらず、軽く、薄くなりました。しかも紙面構成がよく工夫されていて、視認性に富んでいます。
2011年の暮れに、旧版の『例国』を購入したとき、「おどり字」(「人々」の「々」)が『例国』に立項されているにもかかわらず、「おどり字」という呼び名を知らない小学生が、立項されているページに辿り着けないことを、はがきに書いて辞書編集部に送ったところ、編集担当者から丁寧な返信をいただきました。
このやりとりについては、2014年10月10日のブログ(新しい小学生用「学習国語辞典」を予約注文しました。)に書いてありますので、興味のある方はお読みください。
残念ながら、小学生が自力で「おどり字」に辿り着くための工夫は、今回発売された『例国10版ワイド』からは発見できませんでした。 せめてコラムなどに載せて欲しかったと思います。
ちなみに『例漢』には、旧版・今回の八版にも、コラムに「おどり字」のことが掲載されていますので、『例漢』を持っている小学生ならば自力で「おどり字」に辿り着けるでしょう。
しかし、こまかなところで『例国10版』の記述内容は改善されています。
2014年10月17日のブログ(小学生用学習国語辞典こそ改訂作業を大切にしたい。)にも書きましたが、記述内容の改善例として「士農工商」を挙げます。
いずれも漢字の学習学年、振り仮名、品詞の表記は省略して引用します。
『例国』の第九版 第二刷(2011年2月5日発行)
--ここから
しのうこうしょう【士農工商】
江戸時代の、身分をあらわしたことば。武士・農民・職人・商人のこと。
--ここまで
『例国』の第10版ワイド版 第一刷(2014年11月24日発行)
--ここから
しのうこうしょう【士農工商】
「江戸時代の人々は武士・農民・職人・商人という身分に分けられていた」とする考え方。現在ではこれを否定する意見も多い。
--ここまで
どうでしょう。すばらしい改善点ではないですか。
付箋うんぬんよりも、こういう丁寧で真面目な編集姿勢こそ「商業主義」に乗せるべきではないでしょうか!
学習国語辞典選びの指標として
①「おどり字」に小学生が自力で辿り着ける工夫の有無
②「士農工商」に関する記述
の2点を挙げておきたいと思います。
「士農工商」の記述については、すでに対応している他社の辞書もあります。
しかし、「おどり字」に辿り着ける工夫は、私が知る限り、どこの出版社も対応していません。これが工夫改善されれば、自社の学習用辞典宣伝の強力な得点になると思いますよ。コラムや巻末資料に載せて、それを目次に表示するだけで十分だと思うのですが。
