昨日のブログの続きです。
 『国語語源辞典』を書き上げた山中襄太という人を知るために、続篇の「あとがき」を読みました。

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あとがき
 ─ お願いのご挨拶 ─
 日本最初の「国語語源辞典」として,アジア諸国にとどまらずインド・ヨーロッパ語族にまで射程を延ばして比較を試みた拙著が,8年を経過して多くの人びとに愛読せられ,版を重ねたことは,光栄の至りです。読者のご要望に応え,新たな項目を起こし,あるいは前回を補足する解説を加えて,ここに「続篇」をまとめました。
 「国語の語源」という大問題を解説するということは,じつに至難の業で,それに恐れをなしたものか,だれも手をつける人がないらしく,むろん私のごとき浅学の輩が企て及ぶところではありませんが,だれもやりそうにないので,あえて私が試みました。
 この未熟な私の解説について,なにかお気づきの読者は,たとえ一言半句でもご教示を賜わりたく,伏してお願い申し上げるしだいです。
   1985年3月20日
                        山中 襄太
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 正篇のあとがきによれば、山中襄太は1975年で満80歳でしたから、この続篇を上梓した1985年は90歳になっていたことがわかります。
 そして、90歳になっても、続篇のあとがきには、「なにかお気づきの読者は,たとえ一言半句でもご教示を賜わりたく」と書かれていますので、燃える向学心と、それを支える壮健な身体を備えた人だったと想像できます。私も、あやかりたいものです。

 正篇が出た1975(昭和50)年に私は大学に入学し、続篇が出た1985(昭和60)年、私は教職7年目を迎えていました。
 「祖父と孫」以上に年齢差はありますが、山中襄太と私は、たしかに同じ時代を生きていたと言えます。

 続篇本文の最終ページから「わらう」「わらし」「わる」の項を紹介します。

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わらう【笑う】 →正篇。(補足)南洋 Mota語 mwarae(笑う)も参考。なお安田徳太郎氏はいう ─ 花がワラウ,すなわち咲クことを,レプチャ語で bor という。それが bar, var, war, wara, warau と変ったのが「笑う」であると。咲の字をサクともワラウとも読んで,笑の字の別字であると。

わらし【童】 子供のこと。とくに東北地方でいう。アラビア語で walad というが,それとにている。英語で lad というのは,中世英語では ladde といったが,その起源はわからぬと E. Klein はいう。この英語は,アラビア語 walad の lad とにている。ワラシ,walad, lad は,あるいはたがいに関連あるか。

わる【割る,破る】 →正篇。(補足)インド・ヨーロッパ語根 *wel- (to break, tear, pluck)(Kleinの「英語語源大辞典」lasio- の項)も参考。
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 「わらう」と「わる」は、正篇に立項されている語
(「→正篇」と表記)ですが、続篇で補足説明されていることがわかります。

 『国語語源辞典』には、正篇・続編ともに、語釈のなかで、「大言海」の解説、「安田徳太郎」の説、「E. Klein」の英語語源大辞典を引用しています。
 「大言海」は手元にありますし、クレインの英語辞典のことも知っていますが、安田徳太郎という人は知りませんでした。

 あわててウィキペディアで「安田徳太郎」を調べました。
 安田徳太郎(1898-1983)は医師であり、歴史家でした。山中襄太が参考にしたと思われる安田の著書は次のものだったのではないかと推測します。
 ・人間の歴史 第1-6 光文社, 1951-57
 ・日本人の歴史 第1-2 光文社, 1955-56 (カッパ・ブックス)
 ・日本語の祖先 大陸書房, 1976

 「わらし」の語釈には惹かれました。先日、「遠野物語」を調べていたら「ざしきわらし」が登場しました。このように今でも使われる言葉「わらし」の語源が、外国語にも関係するかもしれないなどと考えるとワクワクしてきます。

 好奇心が止みません。