今から30数年前の学級担任時代の出来事を、昨夜、辞書を読んでいるときに思い出しました。
--ここから
休み時間、子どもたち数人が教卓の周りに集まって話しています。
「昨日、テレビのニュースで総理大臣がインタビューに答えている場面を見た。そのとき、記者が総理大臣のことを“しゅしょう”と呼んでいた。どうしてだろう。」
別の子どもが学級備え付けの学習国語辞典を持ってきた。
「ほら、“しゅしょう”は【首相】だよ。意味は“内閣総理大臣”のことだね。」
「そういえば、テレビで文部大臣のことを“ぶんしょう”って呼んでいるのを聞いた。“ぶんしょう”の“しょう”も【相】かねぇ?(黒板に書きながら)【文相】かな。」
〔むふふ、辞書引きが浸透してきたな〕と内心喜んでいた私に、突然の質問が来た。
「先生、どうして大臣のことを【相】っていうの?」
〔エッ!?どうしてだろう!?〕と、心で汗をかきながら顔は笑顔で
「国語辞典に載っていないかなぁ?」
と、咄嗟に言ってしまった。すると、子どもたちは
「【相】の読みは“そうだん”の“そう”だよね。」
「“しゅしょう”や“ぶんしょう”の“しょう”だろう?」
・・・と、ここまでで休み時間の終了とともに楽しい会話も終了してしまった。
--ここまで
30数年ぶりに【相】の秘密を調べてみることにしました。
最初は、30数年前の教え子に敬意を表して学習国語辞典で調べました。
〔例解学習国語辞典 第九版/小学館〕
※ふりがな、学年表記、漢字の筆順・部首説明等は省略。
--ここから
しょう【相】①ともに。[例]相伴。②大臣。[例]首相。[類語]宰相。
→そう(相)
(音読みの順番どおりに漢字項目として立項されている)
そう【相】[音]そう・しょう* *小学校で教わらない読み
[訓]あい
①すがた。形。ありさま。[例]人相。②ともに。たがいに。[例]相談。③うけつぐ。[例]相続。[類語]相愛・相違・相応・相関・相互・相思・相似・相対・相当/形相・血相・真相・皮相・貧相・様相。
--ここまで
例解学習国語辞典を読んで、「しょう」は小学校で教わらない読みであることがわかりました。だから【相】の[類語]に「しょう」と読む熟語がなかったのでしょう。学習国語辞典は教育漢字の制約を相当受けて作られていることが想像できます。
子どもたちが【相】の疑問を解決するために、初めに「そう」の項を引いたらどうだったでしょうか。おそらく、疑問の解決はできなかったでしょう。
【相】の「しょう」という読みで辞書を引くことを思いつかない限り、この辞書では疑問に辿り着けなかっただろうと思います。
手元にもう1冊の学習国語辞典があるので、そちらも確認してみました。
〔くもんの学習 小学国語辞典 改訂第四版/くもん出版〕
※ふりがな、学年表記、漢字の筆順・部首説明等は省略。
--ここから
「しょう」は立項されていなかった。
それならば「そう」はどうだろう。
そう【相】(例文)うらない師に見てもらったら、金運の相があると言われた。(意味)外にあらわれたようす。また、顔形などからわかるその人の様子。
→漢字表(漢字表1169ページ下)
「漢字表」を引いてみた。
【相】
[音]ソウ 相談・相似・真相
ショウ 相伴・首相・文相
[訓]あい 敵に相対する。
[特別な読み方]相撲(すもう)
--ここまで
くもんの辞書は用例重視という珍しい構成になっていて、私は好きです。
漢字表が実にうまくまとめてありました。しかし、辞書本文の「そう」の項には、今回の疑問を解消する内容には全く触れられていませんでした。
本文「そう」の説明の最後の[→漢字表(漢字表1169ページ下)]を実行しないと、この辞書の真価はわからないと思います。
[特別な読み方]相撲(すもう)というような説明が、学習国語辞典にふさわしいと思いました。こういうところが、この辞書のよいところです。
それにしても、たまたま手元にある2つの学習国語辞典を読み比べてみると、学習国語辞典といえども実に個性豊かで、いやはや面白かったです。
さて、大臣のことを「~相」と呼ぶことの意味は「宰相」から発生した略称であろうことが、例解学習国語辞典によってわかりました。
では、現在の各省の大臣は、すべて「~相」という略称が、国語辞典に立項されているのでしょうか。
小型辞書の代表として「集英国3版」、中型辞書の代表として「大辞林三版ウェブ版」で調べてみました。
(例)「そうむしょう」で「総務相」、「もんかしょう」で「文科相」があるかどうか。
辞書に略称が載っていた場合は「D」(大辞林)、「S」(集英国)、どちらの辞書にも載っていなかった場合は「×」と表記しました。
総務相 「×」
法務相 「D」法相として。 「S」同左
外務相 「D」外相として。 「S」同左
財務相 「×」
文部科学相 「D」文科相として。 「S」同左
厚生労働相 「D」労相として。 「S」同左
農林水産相 「D書籍未採用」農相として。 「S」同左
経済産業相 「×」
国土交通相 「×」
環境相 「×」
防衛相 「×」
ちなみに「集英国3版」の「相」の項⑥に次の語釈がありました。
--ここから
しょう【相】⑥(ショウと読む)君主をたすけて政治を行う人。たすける。「相国・宰相・首相・丞相・内相・農相・文相・法相・労相」
--ここまで
以上、30数年前の教え子に教えられなかったことを詫びながら調べた結果を書きました。
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休み時間、子どもたち数人が教卓の周りに集まって話しています。
「昨日、テレビのニュースで総理大臣がインタビューに答えている場面を見た。そのとき、記者が総理大臣のことを“しゅしょう”と呼んでいた。どうしてだろう。」
別の子どもが学級備え付けの学習国語辞典を持ってきた。
「ほら、“しゅしょう”は【首相】だよ。意味は“内閣総理大臣”のことだね。」
「そういえば、テレビで文部大臣のことを“ぶんしょう”って呼んでいるのを聞いた。“ぶんしょう”の“しょう”も【相】かねぇ?(黒板に書きながら)【文相】かな。」
〔むふふ、辞書引きが浸透してきたな〕と内心喜んでいた私に、突然の質問が来た。
「先生、どうして大臣のことを【相】っていうの?」
〔エッ!?どうしてだろう!?〕と、心で汗をかきながら顔は笑顔で
「国語辞典に載っていないかなぁ?」
と、咄嗟に言ってしまった。すると、子どもたちは
「【相】の読みは“そうだん”の“そう”だよね。」
「“しゅしょう”や“ぶんしょう”の“しょう”だろう?」
・・・と、ここまでで休み時間の終了とともに楽しい会話も終了してしまった。
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30数年ぶりに【相】の秘密を調べてみることにしました。
最初は、30数年前の教え子に敬意を表して学習国語辞典で調べました。
〔例解学習国語辞典 第九版/小学館〕
※ふりがな、学年表記、漢字の筆順・部首説明等は省略。
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しょう【相】①ともに。[例]相伴。②大臣。[例]首相。[類語]宰相。
→そう(相)
(音読みの順番どおりに漢字項目として立項されている)
そう【相】[音]そう・しょう* *小学校で教わらない読み
[訓]あい
①すがた。形。ありさま。[例]人相。②ともに。たがいに。[例]相談。③うけつぐ。[例]相続。[類語]相愛・相違・相応・相関・相互・相思・相似・相対・相当/形相・血相・真相・皮相・貧相・様相。
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例解学習国語辞典を読んで、「しょう」は小学校で教わらない読みであることがわかりました。だから【相】の[類語]に「しょう」と読む熟語がなかったのでしょう。学習国語辞典は教育漢字の制約を相当受けて作られていることが想像できます。
子どもたちが【相】の疑問を解決するために、初めに「そう」の項を引いたらどうだったでしょうか。おそらく、疑問の解決はできなかったでしょう。
【相】の「しょう」という読みで辞書を引くことを思いつかない限り、この辞書では疑問に辿り着けなかっただろうと思います。
手元にもう1冊の学習国語辞典があるので、そちらも確認してみました。
〔くもんの学習 小学国語辞典 改訂第四版/くもん出版〕
※ふりがな、学年表記、漢字の筆順・部首説明等は省略。
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「しょう」は立項されていなかった。
それならば「そう」はどうだろう。
そう【相】(例文)うらない師に見てもらったら、金運の相があると言われた。(意味)外にあらわれたようす。また、顔形などからわかるその人の様子。
→漢字表(漢字表1169ページ下)
「漢字表」を引いてみた。
【相】
[音]ソウ 相談・相似・真相
ショウ 相伴・首相・文相
[訓]あい 敵に相対する。
[特別な読み方]相撲(すもう)
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くもんの辞書は用例重視という珍しい構成になっていて、私は好きです。
漢字表が実にうまくまとめてありました。しかし、辞書本文の「そう」の項には、今回の疑問を解消する内容には全く触れられていませんでした。
本文「そう」の説明の最後の[→漢字表(漢字表1169ページ下)]を実行しないと、この辞書の真価はわからないと思います。
[特別な読み方]相撲(すもう)というような説明が、学習国語辞典にふさわしいと思いました。こういうところが、この辞書のよいところです。
それにしても、たまたま手元にある2つの学習国語辞典を読み比べてみると、学習国語辞典といえども実に個性豊かで、いやはや面白かったです。
さて、大臣のことを「~相」と呼ぶことの意味は「宰相」から発生した略称であろうことが、例解学習国語辞典によってわかりました。
では、現在の各省の大臣は、すべて「~相」という略称が、国語辞典に立項されているのでしょうか。
小型辞書の代表として「集英国3版」、中型辞書の代表として「大辞林三版ウェブ版」で調べてみました。
(例)「そうむしょう」で「総務相」、「もんかしょう」で「文科相」があるかどうか。
辞書に略称が載っていた場合は「D」(大辞林)、「S」(集英国)、どちらの辞書にも載っていなかった場合は「×」と表記しました。
総務相 「×」
法務相 「D」法相として。 「S」同左
外務相 「D」外相として。 「S」同左
財務相 「×」
文部科学相 「D」文科相として。 「S」同左
厚生労働相 「D」労相として。 「S」同左
農林水産相 「D書籍未採用」農相として。 「S」同左
経済産業相 「×」
国土交通相 「×」
環境相 「×」
防衛相 「×」
ちなみに「集英国3版」の「相」の項⑥に次の語釈がありました。
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しょう【相】⑥(ショウと読む)君主をたすけて政治を行う人。たすける。「相国・宰相・首相・丞相・内相・農相・文相・法相・労相」
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以上、30数年前の教え子に教えられなかったことを詫びながら調べた結果を書きました。