高校2年生に数学を教えているのです。美術方面に進学を希望し、高校の文系クラスで学ぶ生徒なので、どうしても勉強の力点は数学にはありません。それでも、この生徒は真面目で、受験科目にない数学もわかるようになりたいと言います。その気持ちに応えたいと、こちらも指導に熱が入るのです。
それにしても、この生徒に限らず、別の曜日に中学生4人を少人数指導しているときにも感じることがあります。
それは、「生徒たちは、原理・理論をわかった上で問題を解いているのだろうか?」という気持ちです。
練習によって、機械的に計算はできるようになりますが、その計算が意味することを理解していないような気がするのです。
こんな疑問から、数式を使わずに言葉だけで、学ぶ内容を説明できるか/数式を使わない言葉による説明だけで学ぶ内容を理解できるか・・・という疑問が湧いてきました。
そこで、集英国3版で、数学用語を読んでみました。
最初の一語は「複素数」。集英国の「複素数」の語釈を読み、その語釈の中にある数学用語をさらに調べるという、「芋蔓式辞書活用」を試みました。
集英国を読むと、なるほど、意味は理解できます。が、しかし、この語釈を読んで、中・高生が理解できるだろうか(おそらく、できないだろう)という疑問が湧きました。
そこで、集英国3版に、新明解七版、明鏡二版大を加えた3冊を読み比べてみました。
以下に、調べた結果を引用します。いずれも、品詞・発音記号などは省き、語釈と用例のみ記します。複数の語釈がある場合は、数学用語としての語釈と用例以外は省略しました。
--ここから
ふくそすう【複素数】
〔集英国〕
実数と虚数の和として、a+bi(a,bは実数、iは虚数)の形の式で表される数。△complex number
〔新明解〕
〔二つの単位によって構成される数の意〕実数〔=1の実数倍〕と虚数単位の実数倍との和で表される数。虚数単位の係数が零の場合として、実数を含む。造語成分としては「複素」を用いる。例、「複素平面」
〔明鏡〕
a、bを実数、iを虚数とするとき、a+biで表わされる数。
きょすう【虚数】
〔集英国〕
実数でない複素数。←→実数。△imaginary number
〔新明解〕
実数以外の複素数の称。〔狭義では、純虚数を指す〕←→実数。-たんい【-単位】マイナス1の平方根。〔実数の範囲には存在しないが、二字(以上の)方程式を統一的に扱うために導入された数学的存在〕〔記号i。電気関係ではj〕
〔明鏡〕
実数でない複素数。←→実数△√-1を虚数単位とし、記号iで表す。
じっすう【実数】
〔集英国〕
有理数と無理数の総称。←→虚数。△real number
〔新明解〕
有理数でいくらでも近似することの出来る数。〔有理数自体を含む。数直線上の点と一対一に対応することから、「実際に存在する数」という意味の名称がついた〕←→虚数
〔明鏡〕
有理数と無理数の総称。←→虚数
ゆうりすう【有理数】
〔集英国〕
整数または分数の形で表すことのできる数。←→無理数。△rational number
〔新明解〕
〔「整数のratio(=比)で書ける数」の意のrational numberを不適切に訳した語〕分母が自然数、分子が整数であるような分数として表せる数。〔分母が1の場合として、整数を含む〕「-の範囲で四則演算が可能である/有理小数か循環小数で表わせる数が-にほかならない」←→無理数
〔明鏡〕
実数のうち、整数または分数の形で表すことのできる数。←→無理数
むりすう【無理数】
〔集英国〕
分数の形で表せない実数。小数にすると循環しない無限小数になる。√2やπなど。←→有理数。△irrational number
〔新明解〕
〔「整数のratio(=比)で書けない数」の意のirrational numberを不適切に訳した語〕有理数以外の実数の称。例、√5〔=「ルート五」と読む〕、3√2〔=二の立方根〕、π(パイ)〔=円周率〕。「-を小数に直すと、どこまでいっても循環しない小数になる」←→有理数
〔明鏡〕
実数のうち、分数の形で表すことのできない数。√2やπ(円周率)など。←→有理数
ぶんすう【分数】
〔集英国〕
整数aを整数bで割った商を、a/bの形で表した数。bを分母、aを分子という。△fraction
〔新明解〕
横線の上と下に数を書き、上の数〔=分子〕を下の数〔=分母〕で割った数(割ること)を表わしたもの。例、2/3。〔狭義では、分子が自然数で分母が2以上の自然数であるものを指す。広義では、分子・分母自体が狭義の分数を含むもの〔=繁分数〕や、さらには、分母(と分子)が「式」であるもの〔=分数式〕をも指す〕「真-・仮-・帯(タイ)-・単位-〔=分子が1で分母が2以上の自然数である分数〕」
〔明鏡〕
整数aを0ではない整数bで割った商をa/bの形で表したもの。横線の下にある数を分母、横線の上にある数を分子という。
しょう【商】
〔集英国〕
ある数を他の数で割って得た数値。←→積。△quotient
〔新明解〕
ある数を他の数で割って得た値。←→積
〔明鏡〕
ある数や式を他の数や式で割って得た値。←→積
せき【積】
〔集英国〕
二つ以上の数・式をかけて得た数値。←→商。「-を求める」「-算」「相乗-」△product
〔新明解〕
二つ(以上)の数(式)を掛けて得られる数(式)の、元の二つ(以上)の数(式)に対する称。「二と三の-は六である/相乗-・連乗-」←→商
〔明鏡〕
二つ以上の数や式を掛け合わせて得た数値。←→商
--ここまで
集英国・新明解・明鏡は、私が愛用する小型辞書“3兄弟”なのですが、読み比べてみると、「新明解の語釈が圧倒的にわかりやすい」という印象を持ちました。
これは、新明解の編纂者が数学に強かったということだけではなく、辞書の編集方針の違いだと思われます。
やはり、新明解の語釈は「よい」のです。有名になった三版・四版時代の語釈だけが新明解の特色ではなく、現在の七版も、新明解の語釈へのこだわりは息づいています。しかも、奇をてらった語釈ではなく、「読者がわかる」語釈こそが新明解の真骨頂だという思いを強くしました。
さて、高校生に新明解の数学用語を読ませたらどうだろう!と次回の授業日を楽しみにしています。
「数学用語の辞書読み」に意を強くして、グループ指導をしている中学2年の生徒たちに、数式を使わず、言葉だけで連立方程式の理論が理解できるかどうか、試してみました。
こちらについては、次のブログに書く予定です。
それにしても、この生徒に限らず、別の曜日に中学生4人を少人数指導しているときにも感じることがあります。
それは、「生徒たちは、原理・理論をわかった上で問題を解いているのだろうか?」という気持ちです。
練習によって、機械的に計算はできるようになりますが、その計算が意味することを理解していないような気がするのです。
こんな疑問から、数式を使わずに言葉だけで、学ぶ内容を説明できるか/数式を使わない言葉による説明だけで学ぶ内容を理解できるか・・・という疑問が湧いてきました。
そこで、集英国3版で、数学用語を読んでみました。
最初の一語は「複素数」。集英国の「複素数」の語釈を読み、その語釈の中にある数学用語をさらに調べるという、「芋蔓式辞書活用」を試みました。
集英国を読むと、なるほど、意味は理解できます。が、しかし、この語釈を読んで、中・高生が理解できるだろうか(おそらく、できないだろう)という疑問が湧きました。
そこで、集英国3版に、新明解七版、明鏡二版大を加えた3冊を読み比べてみました。
以下に、調べた結果を引用します。いずれも、品詞・発音記号などは省き、語釈と用例のみ記します。複数の語釈がある場合は、数学用語としての語釈と用例以外は省略しました。
--ここから
ふくそすう【複素数】
〔集英国〕
実数と虚数の和として、a+bi(a,bは実数、iは虚数)の形の式で表される数。△complex number
〔新明解〕
〔二つの単位によって構成される数の意〕実数〔=1の実数倍〕と虚数単位の実数倍との和で表される数。虚数単位の係数が零の場合として、実数を含む。造語成分としては「複素」を用いる。例、「複素平面」
〔明鏡〕
a、bを実数、iを虚数とするとき、a+biで表わされる数。
きょすう【虚数】
〔集英国〕
実数でない複素数。←→実数。△imaginary number
〔新明解〕
実数以外の複素数の称。〔狭義では、純虚数を指す〕←→実数。-たんい【-単位】マイナス1の平方根。〔実数の範囲には存在しないが、二字(以上の)方程式を統一的に扱うために導入された数学的存在〕〔記号i。電気関係ではj〕
〔明鏡〕
実数でない複素数。←→実数△√-1を虚数単位とし、記号iで表す。
じっすう【実数】
〔集英国〕
有理数と無理数の総称。←→虚数。△real number
〔新明解〕
有理数でいくらでも近似することの出来る数。〔有理数自体を含む。数直線上の点と一対一に対応することから、「実際に存在する数」という意味の名称がついた〕←→虚数
〔明鏡〕
有理数と無理数の総称。←→虚数
ゆうりすう【有理数】
〔集英国〕
整数または分数の形で表すことのできる数。←→無理数。△rational number
〔新明解〕
〔「整数のratio(=比)で書ける数」の意のrational numberを不適切に訳した語〕分母が自然数、分子が整数であるような分数として表せる数。〔分母が1の場合として、整数を含む〕「-の範囲で四則演算が可能である/有理小数か循環小数で表わせる数が-にほかならない」←→無理数
〔明鏡〕
実数のうち、整数または分数の形で表すことのできる数。←→無理数
むりすう【無理数】
〔集英国〕
分数の形で表せない実数。小数にすると循環しない無限小数になる。√2やπなど。←→有理数。△irrational number
〔新明解〕
〔「整数のratio(=比)で書けない数」の意のirrational numberを不適切に訳した語〕有理数以外の実数の称。例、√5〔=「ルート五」と読む〕、3√2〔=二の立方根〕、π(パイ)〔=円周率〕。「-を小数に直すと、どこまでいっても循環しない小数になる」←→有理数
〔明鏡〕
実数のうち、分数の形で表すことのできない数。√2やπ(円周率)など。←→有理数
ぶんすう【分数】
〔集英国〕
整数aを整数bで割った商を、a/bの形で表した数。bを分母、aを分子という。△fraction
〔新明解〕
横線の上と下に数を書き、上の数〔=分子〕を下の数〔=分母〕で割った数(割ること)を表わしたもの。例、2/3。〔狭義では、分子が自然数で分母が2以上の自然数であるものを指す。広義では、分子・分母自体が狭義の分数を含むもの〔=繁分数〕や、さらには、分母(と分子)が「式」であるもの〔=分数式〕をも指す〕「真-・仮-・帯(タイ)-・単位-〔=分子が1で分母が2以上の自然数である分数〕」
〔明鏡〕
整数aを0ではない整数bで割った商をa/bの形で表したもの。横線の下にある数を分母、横線の上にある数を分子という。
しょう【商】
〔集英国〕
ある数を他の数で割って得た数値。←→積。△quotient
〔新明解〕
ある数を他の数で割って得た値。←→積
〔明鏡〕
ある数や式を他の数や式で割って得た値。←→積
せき【積】
〔集英国〕
二つ以上の数・式をかけて得た数値。←→商。「-を求める」「-算」「相乗-」△product
〔新明解〕
二つ(以上)の数(式)を掛けて得られる数(式)の、元の二つ(以上)の数(式)に対する称。「二と三の-は六である/相乗-・連乗-」←→商
〔明鏡〕
二つ以上の数や式を掛け合わせて得た数値。←→商
--ここまで
集英国・新明解・明鏡は、私が愛用する小型辞書“3兄弟”なのですが、読み比べてみると、「新明解の語釈が圧倒的にわかりやすい」という印象を持ちました。
これは、新明解の編纂者が数学に強かったということだけではなく、辞書の編集方針の違いだと思われます。
やはり、新明解の語釈は「よい」のです。有名になった三版・四版時代の語釈だけが新明解の特色ではなく、現在の七版も、新明解の語釈へのこだわりは息づいています。しかも、奇をてらった語釈ではなく、「読者がわかる」語釈こそが新明解の真骨頂だという思いを強くしました。
さて、高校生に新明解の数学用語を読ませたらどうだろう!と次回の授業日を楽しみにしています。
「数学用語の辞書読み」に意を強くして、グループ指導をしている中学2年の生徒たちに、数式を使わず、言葉だけで連立方程式の理論が理解できるかどうか、試してみました。
こちらについては、次のブログに書く予定です。