反戦メッセージも込められたオペラ、マクベス | 人生の果実を味わう彫金職人の暮らし フィレンツェ物作り物語

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フィレンツェ在住26年の、ジュエリークリエーターKaorukoが、物作りについて、イタリア子育て生活をまじえながらお伝えします。

日本の皆様


おはようございます。


なんだか、すごいものを見てしまった!



そんな思いで興奮がまだ体の隅々まで残っている。


今日の夕方主人と共に、ヴェルディのオペラ マクベスをフィレンツェ歌劇場に見に出かける。








実はここのところ風邪っぴきが行きつ戻りつ状態で、少々悪化しそうなところをギリギリまでベッドで過ごして向かったのだが、

薬のせいで眠気がきたらどうしよう!

などということは杞憂に終わるほど、素晴らしいものを見た。


もしかすると、今まであの劇場で見たオペラの中で、一番感動したかもしれない。


3時間が瞬く間に過ぎ去る。


映画監督としても有名なマリオ マルトーネが演出を手がけていたので、映像が盛りだくさんだった。

これに関しては、純粋なオペラファンからすると少々難癖がつけられるのかもしれないが、


偽物ふうにデコレーションされた本物の馬も舞台に登場し、馬自体の演技?もあまりにもスマートだったので、一瞬人が入っているのかな?それにしては本物に近すぎるなどと、騙されそうになる。


舞台は現代風にアレンジされていて、マクベスの妻はメッセージを携帯で受け取る。


マクベスの衣装も迷彩色のズボンで、現代の、そうまさに今、パレスチナやウクライナで繰り広げられている戦争を彷彿として、

少し重い気分になった。


そんな最初の印象を覆したのはレディーマクベスの歌声。

歌だけでなく策略家で意地悪な性格を表す演技力も素晴らしく、観衆は一瞬で魅了される。


マクベスのテノールのレベルも高く、序盤から

「ブラボー」


の声が飛んでいるのも珍しかった。




舞台装置もシンプルながら効果的に用いられていた。


過去や隠喩的なシーンの一片を映し出す鏡、王の椅子、魔女たちが持つ樹々が形作る不気味な馬のような馬車のような得体の知れないもの。


想像力を刺激する小道具でいっぱいだった。


全く期待していなかっただけに前半が終わった時点で、私たちは誤算に大喜びだった。


そしてもちろん、観衆も同様の感想のようで、至る所で賞賛の声が聞こえてきた。


幕間に、スプマンテを飲むことにして主人と劇場のバールの列に並び、私は途中でテーブルで待つ。

スプマンテの用意ができたようなので、取りに行こうと席を立つと、


私たちの大切な友人にそっくりな人がいた。


「まさかね?」

と思ってよくよく見ると、奥さんらしい女性もまたそっくりだった。


間違いなく、主人のアメリカ人の親友夫婦だった。

トスカーナ州のコルトーナとシカゴを行き来する彼らとは、年に数回食事ができれば良いというところだが、


ここでも偶然に出くわして、観劇の喜びが一層増した。


このオペラに関する彼らの評価もやはり

「期待以上に素晴らしい!」

というものだった。




さて、後半でガクッと落胆させられるか否か?

そんな期待と不安がないまぜの気持ちで、席に戻ると、


子供と観劇に来ていたスペイン人男性が、真ん中の席から、われわれの座る端っこの席と変わってほしいということだった。


主人が取ってくれた席は、プラテアの前方席。しかし通路側の角度のつく端の席だったのが、

前方ど真ん中の特等席へとラッキーにも移動できた。


後半部分で印象的だったのは、

パレスチナの廃墟と化した街並みが、大きなスクリーンに映し出され、舞台には色とりどりの服を着た女性たちのコーラス隊が群衆となって歌いながら歩を進める様子。


この時、会場はしーんと静かな悲しみに包まれた。


数日前にハマスが人質を解放することに同意し停戦へ向けて動き出した

という状況になり、


現実世界の戦争は、ほんの少し良い方向に向かいつつあるが、

オペラで用いられていた映像も現実のものだったので、改めて尋常でない被害を皆が大スクリーンで目の当たりにした。


迷彩服の衣装を初幕で見た時に、感じた心のざわつきは、やはり間違っていなかった。


この戦争のことを思い出すと、気持ちが落ち込む。

嫌なこと、気が塞ぐことからは目を背けたいという人も多いかもしれない。


作品に反戦のメッセージを込め、


平和な世界を求めて、人々に伝える


ということを自分の仕事の中で目指している芸術家の役割というものに

私は大きく共感した。



またこの観劇で感じたことは、


まるでスポーツチームのように、それぞれがそれぞれのポジションで

最大の力を発揮して、勝利を獲得するような雰囲気がそこに存在していたということ。


ソプラノ、テノール、舞台芸術、オケ、コーラス、振付家、そして監督、指揮者と

それぞれが最高のものを出したことによって、


会場は熱狂が渦のように躍動していた。










このような芸術の中に政治的な言動をこめることを嫌う人もあるため、


大きな

ブラボー!

の声に反対するような、

ブーイングも確かにあったように思う。


しかし賞賛の声が大き過ぎて、ブーイングは蚊のなく声ほどにしか聞こえなかった。


ブーイングをした人々は

政治的立場で気に入らなかった人、

或いは、純粋にオペラとして納得しなかった人、

のどちらかだろうと思う。


いずれにせよ、このオペラに関わった人々は、

世界平和のために働いた!と胸を張って言えるだろう。


あるいは、そんな大それたことではなく、平和への小さな貢献ができたと思っているかもしれない。


この人間臭さが素晴らしい!


体温の低いアジア人?いやいや日本人からすると

羨ましくなるほど情熱的な働き方をする彼らに今日も羨望の眼差しを送ってしまった私であった。




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今日も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。



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