他の科に比べて患者さんの亡くなる確率が高いのは仕方のない事で…
blogの更新に書く話より本当は、お別れの話は多い。
どんな人生でも、自分で思うより最期の時は美しいはずなんだと、最後を看取る私達はわかってあげていないとって思う。
そう思いたくもない人も多いけれどね(笑)
こっちも同じ人間だから毎回、素晴らしい事を思える訳ではないもん。
この病院に何度も入院しているおじちゃんがいます。
自宅で一人暮らししていて具合が悪くなると緊急入院して、数日後には退院する。
救急外来から入っても、いつも腎臓内科の病棟に入院します。
腎臓が悪くてもう何十年も人工透析をしながら定年まで仕事して来たそうです。
病院の休みの日は、病棟のドクターも休みが多く、救急外来の私達が、病棟に呼ばれることも多い。
このおじいちゃんの事は何年か前から知っていますが、入院中に具合が悪く処置が必要な場合に何度か病室まで行った事があります。
腎臓疾患の患者さんの場合、入院中でも水分の取りすぎや、食事も低タンパク高カロリーと、ダイエットの真逆の食事になるし、透析している患者さんの場合は、透析の日に
身体に溜まった悪い物や、尿が出にくい為、全身にムクミが出るのですが、透析にならないように厳しい食事制限や、水分制限している患者さんが1番キツイと思いますが、透析が始まってしまうとある程度、塩分や水分を摂り過ぎても透析で帳尻合わせができるので
ご本人も少し気が楽になると思います。
けれど透析には血圧が急に下がったり、そのせいで吐き気や倦怠感にずっと悩まされる。
そんな思いをしてまで週に2〜3回の透析を続けるのは、そうまでしても生きている意味があるからだと思う。
透析の煩わしさを先に考えてしまうと、好きな物を食べたいだけ食べ、飲んで命が尽きるならそれで良いとつい思ってしまう。
生の野菜、生の果物が御法度なのは腎臓が悪い方には常識。
野菜は嫌いだけれど、イチゴやパイナップルとかぶどうとか大好きな私がフルーツ禁止になったらどうしよう。1日の塩分が6ミリって、わかりやすく言うと
ラーメンのスープまで飲んでしまったらもうオーバーです。
そんな食生活を、支えて来た奥様を先に亡くされた事しか知らなかった。
この連休前に再び腎機能が悪化して入院して来たそうです。私が3連休している間に腎臓内科の病棟に入院して、透析に使う新しい血管…シャントと言いますが、その血管を新しく作り使えるようになるまで院内で首の血管を使い透析して、その後経過が良ければ
退院です。
毎日スリルというその血管の流れの音を確認するのが私達の仕事。連休明けから私が日に2度ほど病室に行く事になりました。
話好きのおじいちゃんは、何て言うか話そのものも嫌味がないというか、面白いんです。
個室に入っていて、他の患者さんに迷惑がかからないという気楽さもあり、ついつい長居して話を聞いたりしていましたが、奥様を亡くした話しをしてくれました。
支えてくれた奥さんを亡くした後、透析をサボってしまったそうです。そのまま死にたかったそうですが、透析に行かないという自殺行為は、もう二度とサボりませんて何かに誓ったほど苦しい思いをして、あれほど辛い経験するなら意地でも透析に行くって思って反省しまくりだったそうです、おかげで奥様を亡くした数日後に悲しんでる余裕もないほどシンドイ思いをしたせいで10日後には立ち直れたそうです。
その話し方が実に味わい深くて。
最近の若い奴はと、嫌味をネチネチ言われる事は私達も多い。
あまりイラっとすると、この痛み止め落とすのもっと遅くしてやろうかと思うほど(笑)
そのおじいちゃんも最近の若い奴は…と言うんです
が………嫌味ではなく、可哀想だって言うんです。
何が可哀想なのか、わからないだろう?そう言われ本当にわからない。
昔は今よりずっと楽しかったそうです。物はないけれど楽しかったって言うんです。
あまり湿っぽい話はしない人だと思ってましたが、息子も娘も孫も俺には興味ないから気楽なもんだ。家に帰って庭の草を取らないと。そんな話をしていましたが結局、帰る事が出来ませんでした。
シャント音がイマイチ良くないので月曜日に腎臓外科のドクターにもう一度再建のオペを検討してもらいたいとカルテに記入起きましたが、昨日の午前中の透析中にCPA。
直ぐに呼ばれましたが完全にアウト。
仕方のなかった事です。その生の野菜や果物には心臓を止めてしまうカリウムという成分が多く含まれています。数日前からカリウム値が高い状態で、透析後にも数値が良くならず、内服で吸着してくれる薬も処方しましたが40年以上も透析をして来たおじいちゃん
もうダメでした。
多分、ご本人が1番びっくりしていると思うけれど、腎不全だけではなく多臓器不全。
相当、苦しかったと思います。人に優しく好かれた方は雰囲気でわかります。
知らせを聞いて駆けつけた息子さんや娘さん、その家族を見ればどれほど良い人だったか
わかるんです。
この人の人生はこんなに豊かなものだったんだと。
私が生まれる前から悪かった腎臓。その後家族のために透析しながらも退職まで務めあげた立派な人生は、華々しい事など一つも無くても心からお疲れ様と言葉が出てくるものです。
なんの約束もせずに当たり前のように日々の生活を繰り返し、おごらず、偉ぶらず、そうだ、桜の花みたいな人でしたね。
美しいと言われたくて咲くのではなく、古くてボロボロの幹は花が咲くまで誰にもここに桜があると知られずに立っている。花が咲いて綺麗だと人が思うと思わなかろうと惜しまれても潔く散っていく姿に似てる。桜の花を女性に例える人は多いけれど私は男性的な感じがしていました。うん。おじいちゃん多分、大きな大きな桜の老木。
あまりにも冗談が好きなおじいちゃんだったので、数日前に冗談で
俺は入院して白いカバーの枕で寝ると、朝起きた時に抜け毛が気になるんだよなって言うので、あまりハゲ散らかさないで下さいねって言ってしまった。
一瞬ポカンとした顔をしていましたが、生まれて初めてハゲと言われたとウケていました。意外に傷つくなぁと言うので、大丈夫です。
本当にハゲだと思っていたら言えませんからって変な慰め方しか出来なくてごめんなさい
長く生きてるが、まだまだ面白い事はあるよなぁと言ってくれてありがとう。
まだ良い足りなかった。前から見るより上からの方がハゲしく薄いと思う。それを言いたかった。大変失礼いたしました。でも駆け付けた息子さんも奥さんと、娘さんもおじいちゃんこんなにハゲてたかしら?って言った。娘も嫁もひどいですよね。でも…
こんなに笑いに包まれた最後もあるんです。