当たり前に、幸せになれると思っていた。

一度だって、
まともな恋愛をしたことがないくせに。

あの頃の私は、
「家族」になれば何かが変わると、
どこか本気で信じていた。

誰かと出会って、
恋をして、
結婚して、
子どもができて、
家族でごはんを食べて、
眠る前には「おやすみ」を言って。

そんな日々が、
自然に訪れて、
静かに続いていくものだと
疑いもせずにいた。

でも現実は、想像とぜんぜん違った。

いや、
本当は薄々気づいていたのだ。
ただ、見ないふりをしていただけ。

「幸せ」は、
思っていたよりもずっと脆くて、
形のない、つかみどころのないものだった。

そっと手のひらで
確かめていくしかないようなものだった。

「当たり前にある」と思っていたものは

本当はもっと味わって、噛み締めて
一番守るべきものだったのかもしれない。

気がつくのが、遅すぎた。

それを理解したときには、
すべてが静かに歪み、崩れはじめていた。

今の私なら、
もう少し上手に向き合えたのかもしれない。

けれどその頃にはもう、
取り返しのつかないほどに、
すべてがスピードを増していた。

そして気づけば、
世界が、悲鳴をあげていた。