あの頃の私は、
もっと素直で、
もっと無防備で、
風が吹くだけで立ち止まるような人だった。

ふとした瞬間に、
もう戻れない場所へ帰りたくなる。

もう一度、あの頃の空気に触れてみたくなる。
でも、それがどんなに美しくても、
今はもう、手のひらにはないと知っている。

それでも私は、
少しずつ、自分なりに生きてきたんだと思う。
何かを失いながら、
誰かと別れながら、
それでも、今日という日まで歩いてきた。

思い通りにならなかったことばかりだった。
わかってもらえないまま終わったこともあった。
投げ出した日もあったし、
ただ目の前をこなすだけで、精一杯だったときもある。

それでも、今日まで来てしまった。
それだけのことなのに、
それがずっと難しかった。

記憶の奥に、今でも残っているものがある。
はっきりしないまま積もった出来事たちが、
知らないうちに背中をそっと押していたり、
ふいに胸の奥で、うずくこともある。

忘れたふりをしていたけれど、
それはきっと、私の中で生き続けていた。
私が、この世界に生きた不器用なカケラたちだ。

この先のことは、うまく言葉にできない。
でももう、遠くを見すぎなくてもいい気がしている。

歩いてきた道のりに、何かを残せていたら、
それだけで充分なのかもしれない。

まっすぐじゃなくても、
止まってしまっても、
それでも、生きていてよかったと思いたい。

きっと誰もが、そんな風に少しずつ進んでいる。
それでいいのだと思う。

あなたにとっても
この先にある日々が、
少しでもやわらかいものでありますように。

読んでくれたあなたの明日が、
すこしだけ、軽くなりますように。

大丈夫。
たくさん、頑張って来たことは
必ず、世界に届いてる。