「…てかめちゃくちゃ書いたし!」
「もうなんも祈ることねーわ!!」
ペンのキャップを閉じながら…
俺は叫んだ。
俺達の周りには無数の短冊。
織姫さんや彦星さんも閉口するほどの、願い事の数。
思いつくままに書いた願いは…
まるで宙に瞬く星の数のようだった。
「じゃ、早速これ飾ろ?」
「早くしないと七夕終わっちゃうし」
「超腹減ったから…」
「早くカレー、食いたい」
俺は、手元にあった短冊にこよりを通し始めた。
「…かず」
「…んー?」
「まだ、あんだろ?」
「…え?」
「願い事、まだあるんだろ?」
「…」
智の問いに…
婚姻届が頭に浮かぶ。
また俺の中の子どもじみた俺が…
暴れ出しそうで。
「…ない」
「もう、ない」
そう短く告げた。
「…“不条理”は?」
「…」
「さっき言ってたじゃん」
「“世の中の不条理目の当たりにしてる”って」
普段はボーっとしてるくせに。
こんな些細な俺の愚痴。
そういうのは絶対、聞き逃さない。
智のこういうところ…
ホント、憎たらしいくらい、好きなんだよな…
「おまえが感じてる“不条理”」
「それ、書かねーの?」
「…」
願うと…
叶わなかった時に何倍も辛い。
だから願わない。
どうせ俺は、俺達は…
認められることなんか、ねーんだから…
「じゃ、俺が書くわ」
「おまえの願い」
智が急に…
そんなことを言ったもんだから。
僕はびっくりして、彼をじっと見つめた。
「…わかってんの?」
「俺の願い」
「まぁな」
やけに自信満々な智に。
わかる訳ないじゃん…なんて、思いつつ…
俺は言った。
「じゃ、書いてみろよ」
「当たったらなんかくれる?」
「いいよ、智が欲しいもん、なんでもやるよ」
「忘れんなよ、その言葉」
智はそう言って…
あと2枚になった短冊の一枚に。
サラサラ…と、ペンを走らせた。
青色の短冊。
そこにはこう、書かれていた。
「入籍できますように」
