大宮BL小説です。
閲覧ご注意ください。
大野さんの言葉は本当だった。
僕から絵本を受け取ると、本当に一瞬だけ姿を消して、すぐに戻ってきた。
「大事なもんなのにわりーな」
「ありがと」
職員室のデスクにいた僕にそう言って…
絵本をそっと置いた。
振り向くともう彼は背中を向けていて…
そのまま職員室を後にした。
絵本にそっと触れる。
彼の温もりを探す。
あのキーホルダーみたいに…
大野さんの手に、指先に、優しくなぞられたんだろうか。
母さん…
いいな…
不意に羨ましく思っている自分に気がついて…
僕はフルッと首を振った。
大野さんは生徒で、僕は教師。
彼の方がずっとしっかりしていて…
ずっと大人だけど。
それでも彼は、僕の生徒。
こんなことを思っていいはずがない。
僕は…
彼に惹かれている教師としてあるまじき自分を戒めるかのように。
ふ…と、大きく息をはいた。
「「「にのちゃーん、お誕生日、おめでとー!!!」」」
ギャル達の馬鹿でかい声とともに…
ハッピーバースデーの歌が教室に響く。
ギャル達に乗せられてかなんかわかんないけど…
他の生徒たちも楽しそうに手を叩いて歌ってくれた。
「…はいはい、ありがと」
照れ臭さを隠すように…
集めた宿題プリントをトントン…と教卓に落として、綺麗に高さを合わせる。
一番上にあった、大野さんの美しい文字と目が合う。
それだけでドキッとした。
チラッと大野さんを盗み見る。
彼はスッと席を立ち…
廊下に消えた。
