大宮BL小説です。
病気は少しずつだけど着実に進行していくもので…
最後には呼吸すらできなくなる。
残酷な告知に、僕は震えた。
そして決意する。
これからは僕が母さんの面倒を見る、と…
「そうして僕は、母さんが亡くなる最後の最後まで、看病し続けました」
「まだ僕は子どもだったから…」
「介護はやっぱ、それなりに大変だったし」
「母さんは…」
「僕の何倍も辛かっただろうけど」
「でもね?」
「僕は…」
「忙しくて一緒にいれなかった時間を取り戻すみたいに…」
「ずっと一緒にいれたから…」
「なんだかんだ…」
「幸せだったんです」
「母さんが僕に何度も読んでくれたように」
「声の出せなくなった母さんに…」
「僕も何度も何度もあの絵本を読みました」
「“ずーっとずっと、だいすきだよ”って…」
「絵本を介してだけど」
「僕の本当の思いを…」
「伝えることかできて」
「僕は、幸せでした…」
タバコの煙が、雲になるべく空に上がっていく。
僕はその道筋を見ながら…
独り言みたいに呟いた。
「あの絵本は…」
「僕にとって、母さんで」
「…」
「彼女が見たかったであろう、僕の成長や僕の生きる世界を」
「ちゃんと見せてあげたくて」
「…ずーっと、一緒にいるんです」
「…」
「だから…」
「あの本を、“いらないもの”にしなかった…」
「“大切なもの”ってわかってくれた」
「そんな大野さんの優しさが、嬉しかった」
「…ありがとうございました」
僕の声が夜の闇にとける。
静寂が僕らを包んだ。
「…あのさ」
不意に大野さんが呟いた。
「絵本…」
「ちょっと、みせてくんねぇ?」
「…え?」
「すぐ」
「すぐ返すから」
「一瞬だけ、貸してくれ」
大野さんの唐突なお願い。
意図がよくわからないまま…
僕はその勢いに飲まれるように、頷いた。
