大宮BL小説です。
僕は生まれた時からずっと…
母と二人きりで生きてきた。
朝から晩まで働いて、僕を必死に育ててくれた母。
いつも笑顔の母さんを、もっと笑顔にしたくって…
僕も毎日自分にできる精一杯のお手伝いをした。
そんな時母が、苦しい家計をやりくりして、僕にお誕生日プレゼントを買ってくれた。
「それがあの本との出会いで…」
まだ幼くて字が読めなかった僕は、毎日のように“読んで”とせがんだ。
“ずーっとずっと、大好きだよ”
母さんが読む、そのフレーズが。
まるでおまじないみたいに…
最強の呪文みたいに、聞こえて…
それだけで僕は、笑顔になれた。
だから僕は、字が読めるようになっても、母に「読んで」とせがんだんだよね…
“また〜?”なんていいながら、嬉しそうに笑う母さんの顔も…
好きだったんだよな…
「そうして時が経ち…」
「僕も少しずつ思春期に入って…」
「あの本を“読んで”と素直にせがむことが難しくなった頃…」
「転んで顎を怪我した母が」
「珍しく仕事に行かず」
「家で僕の帰りを待ってたんです」
「僕の顔を見るなり母は…」
「“あの絵本、久しぶりに読んであげる”って、言ったんです」
その頃の僕は、絵本を読んでもらうことも、母の膝に乗ることも、すっかり恥ずかしくなってしまっていた。
普通なら“いい”と突っぱねた、だろうけど…
「笑顔のくせに涙目の母さんに」
「どこかいつもと違う何かを感じて…」
「僕は久しぶりに、母の膝に乗ったんです」
「…驚きました」
「そこはもう、僕の知ってる場所ではなかった」
「母の足は痩せ細っていて…」
「昔の温かさや柔らかさは、もうどこにもなかった」
「そこで初めて僕は…」
「彼女の病気を、知ったんです」
