不意に大きな声が響く。
菊池が元気に手をあげていた。
「二宮先生帰っていいっスよ」
「俺残りまーす!」
「何言ってんの」
「菊池先生ももちろん残ってもらうわよ」
間髪入れずそんなことを言われ…
当たり前じゃないー、なんてまた背中を叩かれている菊池。
「菊池先生一人じゃ大変でしょー?」
「え〜」
「勝手に人員に入れないでくださいよ〜」
「でも残ってくれるでしょ?」
「残りますけどね…」
「二宮先生もお願いできるかしら?」
「子ども達がいる時は危ないから、今日出してしまいたいのよ」
いつもなら…
「仕方ないか」とカバンを置いて、手伝う場面。
多分残ると言ってもそんな大した時間じゃない。
そんなことはわかってる。
でも…
今日は。
今日だけは…
一分一秒すら惜しい。
一刻も早く、智さんのところに…!!
「園長先生」
「二宮先生今から用事あるんスよー」
「俺一人で大丈夫スから…」
「今日は勘弁してあげてください〜」
いつもの軽いノリで…
菊池の絶妙なアシストがくる。
ありがとう…
恩に切る…!!
僕はゴールを決めるべく…
勢いよく頭を下げた。
「すみません!」
「今日は…」
「今日だけは!!」
「ちょっとどうしても外せない用があって…」
「すんごくすんごく大事な用で…」
「ホントにすみません!」
「…はい、園長、そういうことなんで!」
「早く倉庫行きましょー!!」
菊池はそう言うと…
何やらごちゃごちゃ言っていた園長の背中を押しながら…
僕に華麗なウインクをよこした。
口パクで「ありがと」と返す。
僕はそのまま保育園を後にした。
