大宮BL小説です。

閲覧ご注意ください。
























そう言った自分の言葉に、ハッとする。


…智さんが、魔女の僕を見たら?


智さんが浮気してるとか。
僕の魔女姿がかわいいとか。


菊池の話を間に受けるなんて…
自分でも大概バカだと思うけど。



でも…

智さんの気持ちが他所に向こうとしてるなら。


いつもと違う僕を見たら…
もう一度、こちらを向いてくれるかもしれない。



嫌だったはずの仮装が、現状を打開する唯一無二の手にすら思えてくる。


僕は言った。


「で、僕の衣装は…?」


「あ、二宮先生の衣装はまだなのよ」


「…は?」


「理事長が明日持ってきてくださるんですって」


「え…」


「理事長自ら衣装調達っスか!!」
「さすがハロウィンのアイドルは違う〜!!」


「……」


智さんのお祖父さんでもある理事長は、入社面接の時から僕のことを気にかけてくれていて、いつもよくしてくださるんだけど…


当然ながら智さんとのことは…
まだ何も話せてはいなかった。


だからこそ、こんな風に特別扱いされると…
どうしようもなく、後ろめたい気持ちになる。


「とにかくそういうことだから」
「明日ってことで」

「じゃ、二人ともよろしくね!」


「はーい」

「…はーい…」


菊池に比べてワンテンポ遅れて…
しかもテンション低く返事した僕は…

はぁ、と、一つため息をついた。







遠巻きにも智さんの工場から明かりがもれているのが見える。


まだ…
お仕事中なんだ…


いつもなら一刻も早く会いたくて駆け抜ける道。


でも…
今日は…


どうしても足が前に進まない。




眉間の皺。

何かを打ち消すように、強く僕を囲う腕。

苦しそうな寝顔…



菊池のバカな話なんか、魔に受けちゃいけないってわかっているけれど…


智さんは何かを隠している。
それだけは確かだった。



くる…と回れ右して…
トボトボと歩き出す。


会いたい。

でも会えない。
会いたくない…


いろんな感情が乱れて…
僕の心も夜の闇に溶けていくようだった。