大宮BL小説です。

閲覧ご注意ください。
























不意に智さんが動いた。


ぎゅっと…
大好きな温もりが僕を覆う。


智さんのTシャツが僕の涙を受け止めてくれる。


智さんは、言った。



「…ごめん」
「びっくりさせたよな」


「忙しいって、わかってたんだけど…」
「ちょっとでもいいから顔見たくて…」


「…待ってた…」



そう、僕の耳に囁いた、愛しい人の声は。

僕が何度も再生した記憶の中の声よりずっと…

切ない色を、していた。








「…落ち着いたか?」



そう問われ…
ほんの少し我に返る。


…何してるんだろう、僕は。


脱げた靴もそのままに…
声もあげずただ涙する。


側からみたら、だいぶとシュールな絵面だ…


シュワシュワと、脳の沸騰する音がする。

恥ずかしくて僕は、高速で何度も頷いた。



「…どっか行こうとしてたんだろ?」



す…と智さんが離れる。



「忙しいのに引き留めて悪かった」

「ごめんな」



いや、僕は…
あなたに会いに行こうとしてたんです。


だからあんなに急いでたんです。


そうでなければ僕は、あんな風に…
必死になることなんか、ないんです。



そう言いたいのに、言葉が出ない。



「…がんばれよ」



そう言って…
智さんは僕の頭を撫でた。



大好きな…
大きな手。

何度も何度も…
僕の髪を滑る。



「…はは」



智さんが自虐気味に笑った。



「…いつまで撫でてんだ、俺」



そう言った後。


ポンポン、と…
僕の頭の上で、手が弾んだ。



「…わりぃ、しつけーな」
「…帰るわ」



ゆっくりと…
手の温もりが離れる。



いやだ…
いかないで…


そんな言葉は一つもでなかったけど。




僕は、思い切り…
智さんの首に、抱きついた。