大宮BL小説です。
閲覧ご注意ください。
先にこちらをお読みください♡(和也サイド)
新駅から地上にあがる、真新しいエスカレーターを…
2段抜かしで駆けあがる。
上がっても上がっても…
地上までは遠くて。
和までの距離を実感する。
俺は歯を食いしばって、いくつものエスカレーターを踏み締め飛び上がった。
地上に出る。
走りながらタクシーを探していると…
松本「智様!」
黒塗りのベンツが、滑るように俺の真横に止まった。
素早く身体を車内に滑り込ませる。
扉を閉める前に、フライングで車は発進した。
松本「…約1時間ほど前です」
「和様が屋敷に入られたのは」
智「…」
松本「…少し、ご様子がおかしかったんです」
「にも関わらず、仰せのままにお送りしてしまいました」
「…申し訳ございません」
智「…」
松本は悪くない。
悪いのは全て俺や。
そう思っているのに…
伝えることすらできず…
ぎゅっと唇を噛んだ。
屋敷に着くなり車から飛び降りる。
俺達の部屋まで一気に駆け抜けた。
ベッドの上には…
和の礼服が畳まれていて…
そこには置き手紙と、例の小切手が…
そっと置かれていた。
震える手で手紙を掴む。
和の文字を、言葉を、目で追う。
自分の中に刻まれれは刻まれるほど。
その文字や言葉は、形を変えていく。
最後には怒りの炎となって、俺をゴウゴウと燃やした。
「大野家の皆さま」てなんやねん…
「お世話になりました」てなんやねん。
「ご恩は一生忘れません」て…
「僕は身を引きます」て、なんやねん…!!
怒りに任せて、手紙をぐしゃぐしゃに丸める。
叩きつけようと…
手を思い切り振り上げた。
でも。
どうしても。
どうしても…
和を叩きつけることは、できなかった。
涙が溢れる。
膝から崩れ落ちる。
和の残り香が…
背広や布団から香って…
それが余計に…
和がもういないという事実を俺に突きつける。
床にひれ伏す。
額をこすりつけたまま…
歯を食いしばる。
こぼれ落ちた涙が絨毯の上で…
行き場を探すようにコロコロと転がった。
俺は手の中のくしゃくしゃの手紙を…
泣きながら絨毯に広げた。
何度も何度も手の平で皺を伸ばす。
俺の涙を受け止めたその手紙の…
和の文字は滲んだ。
まるで俺達みたいに…
元に戻ることのないその手紙を、ぎゅっと胸に抱く。
俺は声をあげて泣いた。
そんな時…
不意に自分の言葉が、降ってきた。
“もし和が、俺から離れたとしたら。
どんなに嫌がられても、拒否されても。
必ず毎日会いに行く。
雨の日も風の日も。
場所が変わればどこまでも…
ずっと、一生、追いかける。
それはもう、受け入れてもらうとかそういう話やなくて。
俺自身が…
そうせな、生きていかれへんのや…”
父ちゃんに対して偉そうにも思った言葉。
それは…
ブーメランのように、俺に返ってきた。
そうや。
そうやった。
泣いてる場合ではない。
和を探して…
ひたすら探して。
どんなに嫌がられても、拒否されても…
俺は一生和を追いかける。
かっこなんかつけてられへん。
泣いてる暇なんか、ないんや…!!
ぐちゃぐちゃの顔を、和のワイシャツで拭う。
握りしめる。
このワイシャツのように…
必ずこの手に、和を取り戻す。
そして、離さない。
手紙を手に、また部屋から飛び出す。
軽トラに飛び乗り、エンジンをかける。
和が行くところ。
そこは多分あそこしかない。
俺達が出会って…
恋に落ち、肩寄せ合って暮らした十三の街。
俺達の全てが…
そして、和の全てが。
あそこにはあるはずや。
昨日俺に抱かれながら流した涙が雄弁に語る。
和は俺をまだ、愛している。
なら行き先は十三しかない…!!
俺は迷わず十三を目指した。
夕暮れ時の新御堂は混んでいた。
どこまでも続く渋滞の列に…
俺は、イライラしながら何度も舌打ちをした。
ふと携帯に目をやる。
次々と…
休む間もなく入るLINE。
父ちゃん、母ちゃん、壇さんに櫻井・松本。
屋敷の使用人たちも…
みんな和を探してくれている。
箕面駅や屋敷周辺はもちろんのこと…
父ちゃんと母ちゃんは、今から櫻井達と十三に向かう…とLINEをくれた。
相葉ちゃんからも連絡がくる。
こっちにきたら必ず捕まえておくから!という、心強いLINE。
みんな、みんな…
和を心配してくれている。
俺は…
みんなの気持ちがありがたくて。
そして…
このことを和に早く知らせたくて。
俺達が暮らしたアパートへ行くべく…
ハンドルをもう一度、握り直した。
夕暮れが迫る頃…
俺の軽トラはやっと、十三のアパートを捉えた。
俺達の部屋、2階の一番奥…
…!!
灯りが付いている…!!
俺は、軽トラをアパートの横に頭から突っ込んだ。
止めると同時に走りでる。
ボロい階段を駆け上がり…
俺は、アパートの扉を…
力一杯、開けた。
智「和っ!!!」
中に敷かれた、一組の布団。
その布団の上に…
掛け布団を被ったまま…
和が座っている。
その瞳は…いや、顔全体はもう…
涙に濡れて、ぐちゃぐちゃで…
俺は、ただもう、吸い寄せられるように。
靴を脱ぐことも忘れて…
真っ直ぐそのまま布団ごと…
倒れるように、和を抱きしめた。
智「ホンマ…」
「ホンマに…」
「おまえはアホか!!」
締め付ける心のままに、和を締め付ける。
溢れる涙を布団に押し付ける。
智「どれだけみんなが…」
「どれだけ俺が!!」
「心配したと思ってる…!!」
俺は叫ぶように、言った。
智「おまえは一体、何をしてんねや!」
「ええかげんにせえ!!」
*次回はこの後11時26分、和子ん家です!
