

『介護士K』 久坂部 羊
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久坂部羊さんは医師で作家。『廃用身』『が破裂』『無痛』など、現代社会が抱える医療問題の闇に焦点を当てた作品が多いです。
『無痛』『破裂』などは、ドラマ化されて主役が『悪の教典』『海猿』の(名前忘れました佐世保出身の)彼と、中村蒼君が素晴らしい演技力でヒットしました。そうそう、「私たちはどうかしている」の美波ちゃんも恐ろしい程の演技力でした。(苗字忘れたことをスルー。漢字も全て間違えてたらすみません)
『無痛』は、再放送もつい1年ほど前にあり、母と並んで観ました。
この作家さん私は好きです。目を逸らしてはいけない問題を攻めてきます。社会派とも言えると思います。
タイトルから想像できると思いますので、ネタバレという程ではありません。
筆者文庫あとがきより『介護士k』は、川崎老人ホーム連続殺人事件に想を得て、その犯人を『罪と罰』のラスコーリニコフのような青年に仕立てて描いてみた。ということですが、実際の事件はもっと犯人の心理は単純だったと思います。
ただ、この想定にして、介護が抱える介護側、家族側の問題、また、介護保険制度が始まり、介護が、福祉からサービス業に転換されることにより、ハードルが一気に下がり誰でも福祉施設を開設できるようになったことによる、介護保険制度そのもののもつ盲点。それがが産む介護職員の激務と低収入の積み重なり。そしてそれが虐待へと繋がっていく、その辺を物語に組み込んでいるところは、なるほどと思い理解しやすくさすがです。
川崎老人ホームの事件ではモンスター家族の存在が事態を大きく悪化させこの事件を起こさせたとも言われています。今では介護施設に対するモンスター家族の行動は大問題となって更に悪化の一途を辿っていると言われています。
(これについては、私は、常に感謝の気持ちを忘れず声に出し、態度に出し、それでも施設のスタッフさんには頭が下がる以外何もありませんでした。)
介護士Kの精神的disorderも描かれていますが、ここで作者が警鐘を鳴らしたかったことは、
もはや、「より良い介護」や、「みんなが笑顔で送れる老後」などといった綺麗事では済まない深刻な状況になっているということ。
命に対する考え方についても、欧米では、食欲を失くした高齢者に無理に食事をとらせることは『虐待』と見なされる。日本では食事介助は大いに勧められている。生命絶対尊重で、苦しむ高齢者の思いは無視される。
※私の母も体調不良になってから、食欲をなくしていて、デイサービスで食事の時間に、何パーセント食べたと毎回評価されるのが苦痛でストレスと言っていたのを思い出しました。かかりつけ医の先生は、ご高齢者さんは、身体も小さいし、あまり動かないから、成人のように食べることを要求することは無意味だと話してくださいました。※
また作中の、僧侶が作ったグループホーム、老人ホームでの事故、そのほとんど(多分全部)、実際に起こったことが描かれています。
文庫版あとがきも大変興味深く、その後のノンフィクション作家中村淳彦さんとの対談も、人の命や、介護で追い詰められる家族についてなど、思い出すことも多く心の整理にもなりました。
物語として、ルポライターの美和が徐々に容疑者の介護士Kに傾倒していく様子も、思わず感情移入しました。
そして、この物語が一味違うことは、
それだけで終わらなかったことでもあります。
それは読んでのお楽しみ。