誰が風を見たでしょう
私もあなたも見やしない
けれど木の葉を震わせて
風は通りぬけていく
誰が風を見たでしょう
あなたも私も見やしない
けれど木立が頭を下げて
風は通り過ぎていく
見えないけれどあるんだよ
見えぬものでもあるんだよ
傲慢な貴婦人のそばを
自己中だらけの集団のそばを
クスッと笑いながら
そっと通り過ぎていく
風を見た人はいなかった
風の優しさも
風の怒りも
舞い散る桜だけが知っていた
流れる涙を寄せ集め
ひと粒の真珠にかえて
風は
そっと
足跡だけを残して…
さすらいながら
漂いながら
朝に
夜に
ささやきながら
過ぎ去っていく
風が
秘密を埋めた砂浜に
風が秘密のすべてを打ち明ける
遠くから来て
だけど
しばらくは
遠くへ行きたくないと。
明日を忘れたい風がいる。
見えないけれど
風がいる
2025.4.5夜




